第19話 園と花楓……そして覚醒 ACT 2
「二人の関係ってあの事なの?」
こくんと園は頷いた。
「私さっき、花楓との関係はそんなんじゃないって言いましたけど、でも……花楓は私の親友以上の存在なんです。景様をお慕いする気持ちには変わりはありません。でも、出来ることなら、私と花楓のこの関係を主である景様に許してもらいたいんです。私だけが、幸せになるのが自分で許せないんです。花楓を一人だけ置き去りにする事は私にはできません」
「……園。何言ってるのよ。あなたはもうれっきとした景ちゃんの伴侶なのよ。それなのに、こんな私の事なんて気にする事なんかない。あなたが幸せであれば私も幸せなんだから」
「あのさぁ、二人とも、僕はそんな事ちっとも気にしないよ。僕だって、園のほかにまだ伴侶となる人を作り出さないといけないんだ。僕はね……僕の伴侶になる人は、僕を愛してくれてさえいれば、それでいいんだよ。だから、園が花楓さんとどう付き合おうがそれは園の自由だよ」
「……景様。ありがとうございます」
今までになく園の姿が小さくそして、しおらしく感じた。
本当に園は花楓さんの事が好きなんだ。
「ほ、本当にいいの? 景ちゃん。ヤキモチ妬かない?」
「ヤキモチ?」
「だってさぁ、園とこんなことや……あんなこと……それに……《!ピー自主規制》なこともしちゃうんだよ」
「それを言ったらさぁ、僕だって今はまだ止められているけど、園といずれはこう言う事や、《!ピー、再度自主規制表現》なこともするんだよ。それこそ花楓さんがヤキモチ妬かない方がおかしい位の事なんだけどなぁ」
「うっ! そ、それは……。ちょっと景ちゃんリアルすぎ! 恥ずかしいよぉ」
花楓さんが照れまくっているのが良く分かる。なんか物凄く可愛い。
「あのぉ景様、私の体にそんなことまでされるんですか? いいんですけど……。何をされても、私の体は景様の物ですから……キャ!」
ああ、園まで反応しちゃったよ。
生徒会長に風紀委員長のこの二人。外見は物凄い堅物で高貴な高飛車な感じなんだけど、でも実際はゴク普通の女子高生なんだ。
ちょっとエッチな女子高生の二人。
こんな二人の本当の姿を見られるのは僕だけかもしれない。
それにちょっと気になりだしてきた。花楓さんの僕を見つめる視線が。
彼女のそのまなざしは、何か愛おしさを感じさせるようになってきたからだ。
彼女は今どんな気持ちで僕を見ているんだろうか? そんなことを考えてしまう僕は、次第に花楓さんを受け入れようとしているのかもしれない。
僕が、
鶉依さんはそれからも何も変わることはない。
僕を刺したことに対しても、一切動じるようなことはないようだ。
そしてその容姿は僕と似ている。
裏組織『アーテー』の幹部の一人。通称『黒』と呼ばれている彼女。その正体も、明らかになっているのに、間宮先生も、彩音さんも彼女に対しては今は何も接触を図ろうとはしていない。
むしろ間宮先生は自分が受け持つクラスの生徒だ。
されどその扱いは何も特別なことはない。いたって普通であり、他の生徒共隔たりがないのが不思議なくらいだ。
だが、いつまた彼女が僕を襲ってくるのかは分からない。
それでも僕は
そして一つの駒が動き出しはじめた。
最近この生徒会室は僕と園のほかに彩音さんと、花楓さんが頻繁に出入りするようになった。
他の生徒会役員の姿は相変わらず見えないが、僕らはここで集まるようになり、たまり場となりつつあるのが怖い。
「景様そちらの方の進み具合はどうですか?」
「後もう少し出終わるよ」
「そうですか、よかったです」
「ふぅ――ん。景ちゃんも生徒会の仕事それなりにこなせるようになってきたんだぁ」
「ホントに助かりますわ景様」
「いいなぁ、風紀委員の仕事も手伝ってくれると物凄く助かるんだけどなぁ。ねぇ、景ちゃん」
「ええええ、む、無理だよう。今でさえようやく何とか園の手を借りながらやってる状態なんだもん。まだまだだよ」
「うふふふ、でも景様、仕事の覚えが早くて助かりますわ」
「園の教え方がいいからだよ」
「ありがとうございます。お茶お入れいたしますね」
にっこりとほほ笑む園の顔は、幸せ一杯という表情が僕にまで伝わって来る。
「ああ、なんだかほんとあんた達ってとってもいい夫婦だよね」
花楓さんがちょっとヤキモチを妬いたように言う。
「あら、花楓妬いてるの?」
「ふん! そんなんじゃないわよ」
相変わらず花楓さんは分かりやすい。顔がすぐに赤くなる。
「あ、そうだ景様、明日のお休みは何かご予定はありますか?」
「ええ、っと、特別ないんだけど」
「そうねぇ、景ちゃんはお休みの日は、ほとんどマンガばかり読んで一日終わちゃっているからねぇ」
彩音さん、よけいなことは言わないでよ!!
「ん!」花楓さんが一瞬変な顔をした。
「もしよかったら明日遊園地に行ってみませんか?」
ちょっと、いやかなり遠慮気味に園は、遊園地のチケットを差し出した。
「遊園地かぁ、最近行っていないよなぁ。うんいいよ。いこう園」
「やったぁ!」
あれ? もしかしてこれってデートの誘いなのかなぁ。
「ああ、明日は景ちゃん園ちゃんとデートかぁ。私一人きりなんだぁ」
なんだか意味ありげに言う彩音さん。それは寂しいって言う事なのか?
「ん?」またまた花楓さんが変な顔をした。
「あのう花楓さんどうかしましたか?」
「あのぅ、彩音先輩って景ちゃんのおねぇさんなんですか?」
「ええええッと、実はねそ……」
「ううん違うよ私は景ちゃんの母親よ。景ちゃんは私が生んだれっきとした私の子なんだよ」
「はぇ……、母親って、そのぉ。彩音さんって。ああああああ! どうなってるの」
なははは、花楓さんにはちょっとショックが大きかったみたいだね。
「まぁね、彩音さんは僕の母親なんだよ」
「でもさ、でもさ、何で3年生なの。それにどうして私たちとこんなに年の差感じないの?」
「私半妖なんだよ。もう花楓ちゃんに全部話したんでしょ」
「まぁね」
「だったら話が早い。私は吸血鬼の半妖。つまりは半分だけ吸血鬼なんだよ。だからちょっとした能力があるんだぁ。その能力ちょいちょいと使って若返っているって言う訳。でね、なんだかガッコ面白そうだから、景ちゃんの監視もしながら3年生に編入しちゃったんだぁ」
なんだか花楓さんの意識が、どこかに飛んで行っているような気がするのは気のせいだろうか?
「ま、今までの事訊いてるから、納得するしかないんだよね」
「そうそう、そう言う事だからよろしくね花楓ちゃん」
「はぁ……」
深くため息をつく花楓さん。
「園あなた大変ね」
「ううん、だって私もその一族の中の一人なんですもの」
「あああ、吸血鬼ってやっぱ別の意味で怖いわ」
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