第15話 鶉依優華との接点 ACT3

僕に血を限界すれすれまで血を吸われ、気を失った園と来平井さんを間宮先生はそっとベッドに寝かせた。


「もう傷は治ったみたいだね」

「うん、痛みは何も感じなくなったよ」


間宮先生が僕に尋ねた。

「で、お前を襲ったのは鶉依か?」


「……うん」


「そうか、いよいよ奴らも動き出したという事か」


「あのぉ、何で間宮先生が、なんだかいろいろ事情を知っているんようなんだけど」


「ああ、なつみちゃんの事。景ちゃんには言っていなかったわよね。なつみちゃん私の後輩なのよ。うちの事も、もちろん景ちゃんの事もぜ―――んぶ知ってるし、彼女は私たちの見方よ。


どうりで、だからあの時僕に「せいぜいばれない様に」って言っていたんだ。

良かったよ、間宮先生にカプッと行かなくて。


ちょっと身震いする僕だった。


「なぁ飛鳥景よ、これでお前はこの学校では非常にまずい位置関係に陥ったことを自覚しないといけなくなったな」


間宮先生は真面目な顔で言った。

「鶉依さんの事ですか?」

「それも含めてだ」


「でも鶉依さんは言った」


『私はあなたの敵であって、味方ではない。されど、敵にしもあらず』と。


「この意味ってどういう事なんだろう」


「さぁな、彼奴は幹部の中で『黒』と呼ばれる奴だ、アーテーはその色で統覚が決まっているらしい。『黒』と言う全ての色を吸収した色だ、つまりは幹部の中でも最高位にあると言ってもいいんだろな」


「それでも僕と鶉依さんは同じクラスメイトだよ。僕は鶉依さんがたとえアーテーの幹部であっても、きっと分かり合えると思うんだ……彼女が最後に言った『 されど、敵にしもあらず』その言葉を僕は信じたい」


「まったくお前は本当にお人よしだよ。ま、そこが飛鳥景としてのいいところなんだろうな」


ガラガラッと保健室の引き戸が開いた。

「先生、お掃除ようやく終わりましたよ!」


そこにやって来たのは、クラスメイトの東千裕あずまちひろ前原弓弦まえはらゆずるの二人だった。


「おおご苦労さん」


「あれぇ、千裕に前原さんじゃない」

「おお、景ちゃん大丈夫なの? すごい血の跡だったんだけど」


「え、もしかして僕が流した血を掃除してくれたんだぁ」


「ああ、此奴ら二人は私のしもべだ。最もまだ見習いだけどな」

「見習いって? 間宮先生はいったい何者なんです」


「私かぁ、私は単なる忍びさ。そして君のお父様の伴侶の子の一人なんだ。それに私は半妖として生まれて来た子だ」


「えええええええ! 先生って僕の姉になるんですか?」


「ま、そ、そう言う事になるのかぁ。姉と言っても腹違いだからなぁ。それにもう一つの真実がある。鶉依はかつて私の弟子だった子だ」


間宮先生は、僕のお腹に刺されていたクナイを手に取り。


「このクナイは私が使っていたものだ。あの子が私の元を去る時持たせたものだ。それをお前の腹に突き刺すとはな。ま、それが彼奴にとっての宣戦布告と言う意味なんだろう」


ん――――っと。なんだかこの関係性が物凄く複雑になって来たような気がするんだけど。


で、千裕と前原さんが先生のしもべという事は、僕の正体を知っているという事なんだろうか?


「景ちゃんごめんね。本当はさぁ全部知っていたんだよ、景ちゃんが転校する前からね」


千裕が頭を掻きながらへへへとしながら言った。


「じ、実は私もそうなんです。ごめんなさい」

前原さんも申し訳なさそうにして言う。


「そっかぁ、こっちこそごめんね。いろんな事隠していて。あのさぁ、それでも僕たち友達なんだよね」


二人は声をそろえて「当たり前じゃない」と、言ってくれた。


嬉しかった。今僕にはこんなにも沢山の人たちが僕を見守ってくれていることに。


「さぁてと、それじゃ、僕も頑張らないと」

「ふぅ―ン、景ちゃん何を頑張るのかしらねぇ」

彩音さんが意味ありげに言う。


「そんなの決まっているじゃないか。僕のハーレムを作り上げることだよ」


「さて、景ちゃんはどんな子たちを集めてハーレムを作り上げるんだろうね」

「なははは、そうだね。とってもかわいい子だけを集めた、最高のハーレムを作り上げるんだよ」


「出来るの?」


「やってやるさ。僕に課せられた運命がそう言っているような気がするからね」


「あのぉう景様。あまりご無理はなさらないでくださいね」


「園、気が付いたんだ。ごめんね、気失うまで血吸っちゃって」


「構いませんわ。もし、それでこの私の命が尽きたとしても、それは本望ですから」


「あっ!」


「ふぅ―ン、本望ねぇ。園私の知らないところでそんなにも景ちゃんとラブラブしていたんだ」


「あうっ。……そ、そんなとこ舐めちゃ。か、花楓」


「だってなんだか物凄く体が熱くて、切ないんだよ。園、私を癒してくれる?」


「だ、ダメですよ」


「もう見られたっていいよ。私たちの関係もこの際隠すのやめちゃおう」


「えっ……! 園と来平井さんって、そういう関係だったの?」


「あら、わたし言ったわよね。園とは親友だって」

「た、確かに……でもそう言う親友だったなんて」


「ほほぉ、お前らも女子高の蜜を塗りたぐっていたのか」


「あら嫌だ、先生こそ、人の事言えないんじゃなくて」


「な、なんだよ来平井」


「私、知っていますのよ。何人の子とお付き合いされているんですの。せ・ん・せ・い?」


「えっ。な、なんの事かなぁ。あああ、私まだ仕事たんまりと残っていたんだった。早く片付けないとまた教頭から大目玉食らっちゃう」


なははは、それじゃ私は消えるとするか。じゃぁねぇ。


間宮先生は物凄い慌てたようすで、しかも顔を赤くしながら立ち去った。


「それじゃ私たちも帰るとしますか。それじゃぁねぇ景ちゃん。また明日」


ふと二人の姿を見ると、すでにその姿消えていた。


間宮先生のしもべという事は、彼女たちも忍びなんだろうな。


でなければこうも綺麗に姿を消すことなんか出来ないよね。


よいしょッと。もう傷は完全に治っているようだ。


やっぱり僕は、第一世代の真祖の遺伝を付け継いだ吸血鬼なんだろう。今日のこのことではっきりと分かった。


あの時、まだ幼稚園の時に受けた銃弾で、僕は普通ならその時死んでいた。でも僕は死ななかった。まだ幼いころの記憶だ。それに本当の僕の正体は、その頃はまだ自分でも分かっていなかった。



僕は、この世界で最もオリジナルの、第一真祖に近い吸血鬼であることを。




「でさぁ、二人とも、続きしないの? 物凄く興味あるんだけど。園と来平井さんがそんな風に愛し合っていること」


2人が起き上がっているベッドをジーッと見つめながら。その綺麗なおっぱいを堪能していると。


「景様ちょっとこちらに来ていただけます」

園に近くに来るように言われ、僕は園のすぐ近くに行った。


「うふふふ。景様のバカぁ」バチン! と園の平手打ちが僕の頬にヒット。そして、「まったく君は、本当に変態なんだから」と言われたとたん、反対側の頬に来平井さんの平手打ちがクリティカルヒットした。


それを見ていた彩音さんは言う。


「ああ、こりゃワンワンも餌食わなくなるわ」


あはははは、と高笑いしていた。


あのぉ……。物凄く僕顔が痛いんですけどぉ!

園と来平井さんは声をそろえて


「それは自業自得です!」と僕に行ったけど。


二人の顔はとても幸せそうだった。


でもさぁ、園は……わかるけど。




……どうして来平井さんまで、そんなに幸せそうな顔になっているのかな?


どうしてだろうね。

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