第14話 鶉依優華との接点 ACT2

「景ちゃんしっかりして!」


 僕を抱きかかえながら、彩音さんは大きな声を上げた。


 その声を聞きつけたんだろう。まだ校舎の外にいた来平井さんが駆け込んできた。


「ど、どうしたの! け、景ちゃん」


 辺りは僕の血が流れ出し、コンクリートの床が赤く染まっていた。


「いったい何があったの。どうして誰かに刺された……」


「ん、もう少し落ち着いて。あなた風紀委員の来平井さんよね。園ちゃんとはクラスメイトだよね」

 来平井さんは彩音さんのリボンの色を見て、彼女が3年生であることを認識した。


「だ、誰かを、先生を呼んでこないと」取り乱す来平井さんに。

「大丈夫、来平井さんこの子を保健室まで、一緒に連れて行ってくれるかなぁ」


「え、保健室って。それよりも救急車を呼ぶべきじゃないんですか?」

「いいのいいの。言う通りにして」


 にっこりとして彩音さんは来平井さんに言う。こういう時、切羽詰まった状態で言うよりも、逆に笑顔で語りかけた方が、相手は思いのほか冷静に動いてくれることを彩音さんは知っていた。


「……は、はいわかりました」


「お腹に刺さっているのクナイ(忍びが使う武器の一つ)には触らないでね。今抜いたら、血が飛び出しちゃうから」


「はい」

「うんいい返事。それじゃ行くよ。よいしょ」


 そこに園が、真っ青になりながら駆け付けた。


「景様、景様……お気を確かに。ああああああ」

 取り乱すように僕に園は声を上げて呼び掛けた。


「大丈夫よ園ちゃん、あなたも手伝って」


「はいわかりました」まだ園の方は僕に対する事情を知っている分、来平井さんよりは落ち着きを取り戻していた。


 3人がかりで僕は保健室のベッドに運ばれた。


「さてと、んー結構傷深いわねぇ。出血量も大分多いし、ちょっとやばいかなぁ」


「あのぉやばいって、やっぱり救急車を呼んだ方が良かったんじゃありませんか」


「ん――――っ、ま、普通ならね」


「でも彩音さんこのままじゃ景様は。私の血を、私の血を景様に」


 彩音さんはクナイが刺さっている腹部を触診するように調べた。


「うん、もう機能してきているけど、多分このままじゃ追い付かないなぁ。景ちゃん意識ないから直接は血は吸えないし、やっぱ輸血かなぁ。ここに輸血キットなんて流石にないよねぇ」


 その時保健室の扉が開いた。

「何かお困りのようですね。彩音さん」


 そこに現れたのは、僕の担任の間宮なつみ先生だった。


「タイミングいいなぁ。なつみちゃん」


 間宮先生は血に染まった3人の制服に動じることなく、ベッドに横たわる僕を見て。


「う―ん。これはまた派手にやられましたねぇ。現場の後処理は速やかに処理させてますよ彩音さん」

「さすが仕事が早いね、なつみちゃん。でもねぇ、どうしよっかぁ」


 来平井花楓はこの二人のあまりにも平然過ぎる会話を訊いて、憤慨したように


「どうしてあなた達はそんなにも平然としていられるんですか? 景ちゃんが今死にそうにしているんですよ! もう死んじゃうかもしれないんですよ!!!」


 園は来平井花楓の肩にそっと手を添えて


「大丈夫よ景様は……だって景様は不死身なんですもの」

「不死身? ……景様? 園、あなたどうしたの。景様って……」


「ごめんねぇ来平井さん。心配かけて、僕は大丈夫だからそんなに心配しないでよ」


「景様気が付かれたんですね」


「ああ、園か。ごめん、やらかしちゃったね」


「何言っているんですか、ご無事で何よりです」


 園は涙を流しながら、僕にキスをした。それを見ていた来平井さんは

「園、あなた景ちゃんと……」


「うん、花楓かえでごめんね黙っていて、景様は私のあるじなの」


「主って? えっ、それってどういう事なの。もしかしてあなた達結婚でもしているとでも言うの」


「なははは、ばれちゃったね園。そうなんだよ。園は僕の伴侶、つまりは妻なんだ」


「嘘! そんな」


「校則違反かなぁ」

「校則違反って……なにがなんだかわからいよ!」


 彩音さんが僕の横で


「景ちゃん、傷もうじき塞がっちゃうから、刺さっているもの抜いちゃうよ。物凄く痛いけど我慢してね」


「う、うん。でも怖いなぁ」


「それじゃ、我慢できるようにご褒美付けてあげるよ。園ちゃん、あと来平井さんもその汚れた制服脱いでくれる」


「わかりました」


 園は一言返事を言うと、制服を脱ぎ始めブラとパンティーだけの姿になった。そして、後ろに腕をまわし、ブラのホックを外した。


「えっえっ、私も脱ぐの?」

「うん、花楓も脱いで。景様の為に」


 そう言いながら園は、彼女のリボンを外しブラウスのボタンを外していく。


 スカートのホックを外し、ブラウスをはぎ取られ、下着姿になった来平井さんの姿を見た時、僕はとても綺麗だと思った。


 そして園は、来平井さんに抱き着くようにして、手を彼女の背中へとまわした。


 ブラのホックが外れ肩紐がするッと落ちると、ブラがパさっと床に落ちた。

 そこには、制服の上からは想像も出来ないほどの、大きなおっぱいがあらわになっていた。


「来平井さんっておっぱい大きかったんだ」


「そ、そんなに見ないで、恥ずかしい。女同士でも恥ずかしいよぉ」


「うふふっふ。ねぇ花楓、さっき私景さまは私のなんだって言ったか覚えている?」


「え、あ、主……、夫婦って言う事は、も、もしかして景ちゃんって」


「なははは、かさねがさねごめんねぇ。実は僕男なんだぁ」


「ひえぇ! きゃぁ、み、見ないで……、本当に恥ずかしいから」


「もう手遅れかなぁ、来平井さんの裸見たら反応しちゃったんだけど」

「は、反応って、まさか……」


 恐る恐る、来平井さんの手が僕の下半身に触れた。


「ひえぇ! な、何かあるんだけどぉ」

「あうぅ! そこは……」


 恥ずかしがる来平井さんを見ながら彩音さんが

「私も脱いだほうがいいかなぁ、ねぇ、景ちゃん」


「ええええッと……ちょっと考えさせていただきますか。彩音さん」


 彩音さんはムスッとして

「あ、そっ。分かったわよ」と言いながら、僕のお腹に刺さっているクナイを引っこ抜いた。



「ぎゃぅ、ううううううううう!!!! いたぁぁ――――い!」



 あまりの痛さに耐えかねて、傍にいた来平井さんの体を抱きかかえていた。来平井さんの柔らかくて大きなおっぱいが僕の体に触れた。


 そして、彼女の首筋に僕は牙をさし込んだ。


「あっ、うっ」


 吐息の様に漏らす声を聴きながら、溢れ出る彼女の純血を夢中で吸った。

 血が欲しかった。


 僕が求める女性のその純血が欲しかった。


 不思議だ、園の血を吸っているみたいにとても落ち着く。心が和む……またあの途方もない解放感に包まれそうになる。


 その時ガクンと来平井さんの力が抜けた。夢中で吸い過ぎたようだ。

 そっと牙を抜き、僕の体にしがみつく来平井さんの頭を優しくなでた。


 だけど、まだ僕の体は血を欲していた。


「園、お前の血を俺に」

「はい、景様。喜んで」


 園は僕の体を抱き、自分の首筋を差し出した。


「んっ、あぁ」


 ビクンと体をくねらせ、僕の体を強く抱き込んだ。

 もう傷の痛みは感じなくなっていた。



 園の安らぎなる純血を僕は吸えるだけ吸った。



 園の意識が途切れるまで……。

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