第12話 第三の転校生 ACT4
「あははは、さすが景ちゃん肝が据わっているね。そんなところはあなたの父親にそっくりだよ」
「なははは、そりゃそうでしょ。だって私とパパの最高傑作なんですもの。景ちゃんは」
「ふぅ――――ん、それでラブラブしすぎて、彩音は半妖になっちまいやがったという事か」
「べ、別にいいじゃない。私は後悔なんかしていないんだもん。だってパパのこと物凄く愛しているから……。私はパパに全てを捧げているんですもの」
「ああああああ! 彩音さん。私と同じですわね。でも私はまだ景様に何もしてあげることが出来ていない。世継ぎをこのお腹の中に宿すこともまだ出来ていない。早く私の中に景様の子種を注ぎ込んでほしい」
「あ、ごほん! なぁ園、一応私、あなたの母親なんだけど、面と向かって子種なんて言われると、こっちが恥ずかしいわ」
「ええ、っと……」園の顔が真っ赤になっている。そう言う僕も顔が熱いよぉ!
「ま、いいんじゃない。こんなに短時間で二人とも想い合う事が出来るなんて、よっぽどあなた達相性がいいてことなんだよ」
「……でもさぁ、うちと園の家これだけ格差があるんだけど、本当に良かったの園」
「格差って何ですの? 景様」
「ええッとね、ほらうちはさぁゴク一般的な普通の家なんだよ。でも園の所は物凄いお金持ちじゃない……なんか気が引けちゃってさぁ」
「あはははは、なんだ景ちゃんはそんな事思っていたんだぁ。それを言うなら逆だよ。こっちこそ景ちゃんの家には釣り合わないほど下級なクラスだよ。なにせあなたの父親は第2世代の真祖の第一後継者でもある。それに私たちがこういう生活が出来ているのも、景ちゃんの家からの支援があるからこそ出来ているんだよ」
「ほへ? それってどういうことなの? 確かに父さんは第一後継者だっていうのは知っているけど、園のうちに支援しているなんて、うちそんだけお金持ちだったの?」
「ああ、そうね。景ちゃんは知らないかもしれないけど、うちの資産てユキちゃんたちの10倍以上はあるはずなんだけどなぁ」
「ぶっ! 10倍って、う、嘘だろう。だって園ん所自社ビルも持っているしここだって僕んちとは違って広いお屋敷じゃないか。ええええええ!! うちって本当はお金持ちだったの?」
雪江さんは平然としながら
「そうだよ、彩音の家はこの日本じゃ5本の指に入る財閥なんだよ。うちなんてたんぽぽの綿毛の様なもんだよ」
「マジ?」彩音さんの顔を見つめて言った。彩音さんは「マジ!」とヴイサインを出して返した。
おいおい、そうなんだ、まぁ、今まで何不自由なく僕は暮らしてきていたのは、彩音さんと父さんが頑張って僕を育ててくれたからだと思っていたんだけど……ううん、実際そうなんだけど、本当はそんな財閥だったなんて初めて知ったよ。
「ねぇ彩音さんどうして黙っていたの?」
「ん? 別に隠していた訳じゃないんだけど、私もパパも普通の生活が好きなだけよ。あの小さな狭い家で、私たち3人肩を寄せ合っているのが、パパにとって一番の癒しになるから……。本当の家族ていうのを実感できるのが、私たちの家なんだよパパにとってね」
彩音さんは寂しそうに言う。そうだろうな、だって父さんとは本当に年に数回しか会う事が出来ていないんだもん。
「彩音さん、もし僕が独立したら彩音さんは父さんの所に行きたいの?」
少し上を仰ぎ見ながら彩音さんはこう言った。
「どうだろうね。多分私はあの人を、あの家でずっと待っているかもしれない。『ただいま』って、あの人があの玄関の戸を開けて見せる顔を、私はずっと待っている。それがあの人との伴侶としての私の務めでもあるから……」
父さんと彩音さんの間には、本当の信頼関係が育まれているんだ。
ちらっと僕は園の顔を見て、僕も園と自分の親達の様な信頼関係を築いてい行きたいと思った。
きっと僕と園ならできるだろう。僕ら二人だけの絆を……
彼女は率先してクラスに溶け込もうという感じの子ではなかった。
どちらかと言えば、一人でいる方が好きなタイプの子だ。
そして僕からも彼女に話しかけることもなかった。
それに彼女が本当に僕らの一族を狙うアーテーと言う裏組織の一員であるのなら、何かしら僕に対して、アクションがあるものだと思っていたが、その気配もない。一体、彼女はどんな目的で僕に近づいて来たのか、それは未だに謎のままだ。
この1週間、僕は生徒会室で園に生徒会の業務を、少しづつ教えてもらいながら手伝うようになった。まだまだ分からないことだらけだけど、園は丁寧に教えてくれている。ほんの少しでも園の役に立ててればいいんだけどね。
「ふぅ、ようやく出来たよ園」
「お疲れさまでした景様。本当に助かりますわ。こうして景様が業務を手伝っていただけると」
「でもさぁ、本当に少しだけしか出来ていないんでよねぇ。本当はもっと園の役に立ちたいんだけどなぁ」
「うふふ、大丈夫ですわよ景様。そんなに焦らなくても……それにこうして景様とご一緒できる時間が出来たことに私は喜びを感じていますもの」
「そうなの?」
「そうですよ」にっこりと園はほほ笑んだ。
園の笑顔を見ていると胸がキュンと締め付けられる。
そっと園の唇にキスをした。
始めてキスをした頃からすればお互い、大分恥ずかしさもなくなってきて、なんだろう……二人の気持ちをちょっと通わせたような感じになれる瞬間、とでもいうんだろうか。そんな僕らのキスは重ねるごとに、二人の絆が深くなっていくような気がする。
僕らがこの生徒会室でお互いの想いを少しづつ深めている時、校舎の外にある中庭で新たな事態が流れ始めようとしていた。
◇◇鶉依優華との接点 ACT0
この学校は3年生はともかく2年生までは文武両道と言う、校訓を掲げている通りに、部活動は必ずどこかに所属しないといけない。
しかしこの1週間、鶉依さんは、部活動に入ろうとする行動は一切見えなかった。
放課後は中庭のベンチで本を読んでいる姿をよく見かけていた。
生徒会室の窓から、そんな彼女の姿を見ていると、ひとりの生徒が鶉依さんの方に近づいてきた。
あ、あの人は……。確か風紀委員長の
何やらちょっと険悪なムードが漂ってきている。
「どうなさったんですか景様」
そんな僕を心配そうに園は問う。
「ん、あのね、ほら見てごらん、鶉依さんと風紀委員長の
園はその様子を見ながら
「う――ん、これはちょっとまずいかもしれませんね」
「そうなんだよ、僕ちょっと行ってくるよ」
「あ、景様……」
園が呼び止めるのも訊かずに、僕は生徒会室を飛び出した。
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