第11話 第三の転校生 ACT3
その目は鋭かった。
実の娘の園も自分の母親がこれほどまで、鋭い視線を送りつけるとは思ってもいなかった。
「お母様、景様はいったい……」
「園、アーテーについては、あなたには話してあるはずよね」
「はい、お母様。おじいさまの、いいえ第一世代の真祖様の財宝を狙う裏祖組織だという事は訊いています。そして、その財宝を受け継いだおじい様を今アーテーは狙っていることも」
「うむ、その通り。あの祝賀会の時、一発の弾丸が景ちゃんの体を貫いた。その時あなたの隣にいたのは」
「おじい様でした」
「その通りだよ園。あの弾丸はあなたを狙ったのではなく、第2真祖であるバレンナシア・ルクセント・ル・バンパイア伯爵を狙ったものだった。それも正確に伯爵の頭部を狙っていた。ちょうどあなたを伯爵が抱きかかえようと、あなたと同じ身長の所まで頭を下げていた時に弾丸は放たれた。その放たれた弾丸を本能的に察知し、自らの体で食い止めたのが景なんだよ。まだあの幼い体で伯爵と園あなたの命を守ったんだ」
「その通りです。私は景様からこの命を守られたんです。そして私の血を吸い景様は一命を取り留めた……あ、」
「気が付いたかい園。そう、吸血鬼として生まれた子が牙を出せるのは第二次成長期を迎えてからなんだよ。だが、景はまだその時期を迎える前に、すでに牙を出しあなたの血を吸った。つまり景は、特殊な吸血鬼なんだ。今の第2世代の吸血鬼にはない能力を持った……いいえ、限りなく第一世代の真祖様に近い吸血鬼であるんだよ。今はここまでしかあなたには話せない。ただ時期に本当の景の姿をあなたは、支えていかなければいけないという事を覚えておいて」
「……景様の本当の姿」園は想いを馳せるように呟いた。
「その話、本当の事なんだ」
「け、景様。気が付かれていたんですか?」
「いててて、まったく彩音さんの一撃効いたなぁ」
「あははは、ごめんねぇ景ちゃん。緊急事態だったんだもん許してよ」
「ま、いいかぁ。でもさぁ、僕はやっぱり特別な存在であることは、本当の事なんだ。何となく感じてはいたんだけどね」
園のお義母さん。
「今はまだ普通の高校生でいてほしいんだけど……。これは私の願いだけどね、そして園の為にも……。まだ、あなたにはその先に進んで欲しくはないのよ」
「お義母さん。でもさぁ、僕を狙う奴がもう近くまで来ているのが本当なら、僕は園を守るためにどうなったていいんだよ。僕は園の事を愛しているから……」
「け、景様……嬉しいです」
「ほぅ、良く言った景ちゃん。それでこそ園の主だよ。お前は……」
「はぁ、なんか妬けるなぁ。景ちゃんが私から巣立って行っちゃうような気がして、寂しいよう」
彩音さんが僕の腕を指でコネコネしながら言った。
「なぁ彩音。そんなこと今から言っていたらお前どうするんだよ。これから景ちゃんは、園のほかにも伴侶を
「あらいけないのぉ! 親子で愛していていちゃ」
「ったく! お前本気なのか?」
「ほ、本気よう! だって私だって園ちゃんに負けないくらい、景ちゃんの事愛しているんだもん!! ぷんぷん」
「はぁ、景、彩音の事はほっといてもいいから。此奴にはれっきとした主がいるんだからな。しかもめちゃイケメンのさぁ。ああ、なんだか腹が立ってきたよ」
「なははは、そうだよねぇ。ちゃんと彩音さんには父さんがいるんだもんねぇ。裏切っちゃだめだよう」
「うっうううううう! そ、そうなんだけどさぁ。パパはさぁ、私にとって大切な人なんだけどさぁ……ああっもぉう!」
「ま、この続きは食事をしながら話そっかぁ。景ちゃんにも教えてあげるよ。彩音とあの人のラブラブぶりを」
「えっ本当! 僕すっごく訊きたいなぁ。だってさぁ、父さんと彩音さんが一緒にいるのってめったにないんだもん。でもさぁ、ラブラブなのは知ってるよ」
「えええっと。なんだか恥ずかしいなぁ」
今度は彩音さんの顔が真っ赤になってしまった。
自分の母親なんだけど、その顔が可愛いと思うのは、アウト? それともセーフ? でもさぁ、外見は女子高生なんだよねぇ。本当の年齢は……、こ、怖くて言えないよぉ。
だから内緒にしておくよ。またパンチ食らうのは遠慮したいからね。
並べられた料理は、僕の家では到底出てくることのない料理ばかり。
「凄い料理だねぇ。ねぇ彩音さん」
「ふん! どうせ私は料理下手ですよ」
すねる彩音さんに
「でもさぁ僕、彩音さんのカレーライスは大好きなんだよねぇ」
「そうそう、景ちゃん小さいころから、カレーだと大喜びしていたもんねぇ」
「そうなんですか彩音さん。私も彩音さんの作ったカレーライス食べてみたいです」
「そぉなの? それじゃさぁ今度、園ちゃんにもご馳走しちゃうよ」
「嬉しいですわ、彩音さん」
「あああ、なんだか一気に娘が3人になったような気がするけど、気のせいかなぁ」
「ユキちゃん妬かない、妬かない。えへへへ」
ニカニカと上機嫌になった彩音さんは、お肉をアムっと口に頬張り
「う――――ん。おいちぃ!」とにんまりしていた。
「ところでさぁ園、今日言っていたよね。転校してきた
「気になるの?」
彩音さんはお肉を頬張りながら。
「第一世代の真祖様の時代から一族の財宝を狙う、この世界の表には決してその存在を露わにしない裏組織『アーテー』。そして今日転校してきた鶉依優華はその幹部の一人。通称『黒』と呼ばれている人物。彼女が景ちゃんのクラスに来たという事は、アーテーが本格的に動きだしたという事になるんだよ」
「ふぅ―ん。そうなんだぁ。でも彼女可愛い子だったよ。それにさぁ、僕によく似ていたんだよねぇ。もしかして彩音さん隠し子なんていないよね」
ゴホンゴホン!!
「ンもぉ、いきなりなに言うのよ景ちゃん。いる訳ないでしょ。あ、でもさぁ、パパの伴侶繋がりだったりして……う――――ん」
「でもさぁ、僕を狙っているんだったら、どうしてわざわざ同じ学校に来て、と、言うか同じクラスに編入してきたんだろうね」
ふぅ―、と、お義母さんである豊島雪江はため息をつき。
「そうなのよねぇ。そこが何かしっくりこないんだよねぇ。奇襲をかける訳でもなく、裏工作を仕掛けている様子もないんだよねぇ」
「でも用心した方がいいことは確かですわよ景様」
「そうかなぁ、僕は鶉依さんとは、なんか気が合いそうな感じがするんだけどなぁ。出来れば友達になってもらいたなぁ、なんて思っているんだけど」
僕がこんなことを言ったせいだろうか。3人ともあっけにとられたように声をそろえて。
「えっ!」と言った。
「ほへ? 僕何かまずいことでも言ったのかなぁ」
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