第7話 生徒会長 豊島園 ACT3
僕は豊島園と伴侶契約をした。
初めての僕の伴侶。
これと言って実感は湧いていないんだけどね。
ただの吸血行為だけならそれで終わりなんだけど、伴侶契約は全然違う。
一生僕らは寄り添い、お互いの信頼関係を築かなければいけない。
「おはよう飛鳥さん」
「あ、豊島さん。おはようございます」
「昨日はよく眠れまして?」
「ええ、おかげさまで」
「そうそれならいいですわ。今日から生徒会よろしくお願いしますね。それじゃ」
と、朝にたわいもない挨拶をして、彼女は僕から離れた。
学校では、僕らの関係は絶対に秘密。
豊島園が僕の伴侶であることは、ばれてはいけない。
だから、僕が生徒会に所属したという事で、彼女はある程度親密な関係で接することが出来るものの、それ以上は他の生徒の前では突っ込むことは出来ない。
だから僕らは約束したのだ。
表向きはお友達でいようと。
だけど、彼女は、本当は相当我慢しているようだ。
さっき別れ際に、僕の手にメモをつかませた。
「今日のお昼休み屋上に来てね」
「ん?」
屋上? 何があるのかな?
まぁいいけど。
そのメモをスカートのポケットに押し込んだ。
何もこんなメモでよこさなくても、スマホでメッセージ送ってくれればいいだけなのに、ちょっと古風なのかな園ちゃんって。
そこへ僕の肩を後ろからポンと叩いて、
「おはよう景ちゃん」
その声に振り向くと、同じクラスの
「ねぇねぇ、景ちゃん。部活何かいいところあったぁ?」
「あ、おはよう千裕」
「ん? どうしたぁ、景ちゃんしたなんか俯いちゃって」
「ええッとねぇ、実はさぁ昨日ひょんなことから、私、生徒会に所属することになっちゃったんだぁ」
「えええええええ!! 景ちゃん生徒会に入るのぉ!」
「ど、どうしたのその驚きようは?」
「だってぁ、景ちゃんあんなお役所みたいな仕事なんて、向かないなんて言っていたからさぁ。なんだか意外だなぁって」
「うんそうなんだよねぇ、私も意外なんだよねぇ」
「ふぅ―ン、そうなんだ。ま、でも頑張ってね」
「うんありがとう千裕」
ああ、転校2日目にして、こうして僕を励ましてくれる友達もいるなんて、僕は幸せ者だ。
「でもさぁ、生徒会ってなんか大変そうだよねぇ。私なんか美術部だから、いつものべらぁーとしてやっているから気が楽なんだけどねぇ」
「ええ、そうなんだぁ。いいなぁ、本当は私もあんまり頑張らなくてもいいような部活に入りたかったんだけどなぁ」
「なんなら今からでもくらがえしちゃう?」
「ええ、無理だよう」
「なははは、嘘だよ。生徒会長の豊島園さんってちょっと見た目クールな感じで冷たそうだけど、意外と面倒見のいい人だから、大丈夫だよ。景ちゃんならやっていけるって」
「そうかなぁ……」
「あのう、おはようございます」
そしてもう一人僕に声をかけてくれた人。
隣の席の
ちょっとおっとりとした感じの子だ。あくまでも外見だと思うけど、
でも昨日一緒に教科書見せてもらうためにくっ付いて授業受けたんだけど、彼女から感じる、何かが僕を刺激していたのは確かだ。
それってあの彼女の持ち物……見た目からしてもでかいおっぱいなのか?
いいやそれだけじゃない様な気もするけどなぁ。
「飛鳥さん、今日も数学の授業ありますね。良かったらまた一緒に教科書使ってもいいですよ」
ちょっと遠慮気味に言う彼女に
「ありがとう前原さん」
「……うん。私の事も
顔を赤くして恥ずかしそうに彼女は言った。
「うん分かったそれじゃ弓弦」
「あ、ありがとう。私も景ちゃんって呼んでもいいかなぁ」
「うん、いいよ弓弦」
にっこりとしながらも、弓弦の顔は桜色に火照っているようだった。
3人で学校の正門の近くまで来ると何やら生徒たちが群がっているのが見えて来た。
「ねぇ、何かあったのかなぁ。なんだかみんなあそこに集まっているんだけど」
「ああ、あれね。風紀委員の登校前チェックで引っかかっているんだよ」
「風紀委員?」
「そう、うちの学校風紀委員チョ―厳しんだよ。やんなっちゃうけどね」
「へぇ風紀委員ていうのがあるんだぁ、前の学校じゃなかったんだけどなぁ」
千裕が僕の耳に顔を近づけてけて小声で
「うちの風紀委員てさぁ、表と裏があるんだよ。今はさぁ詳しくは言えないんだけど、気を付けた方がいいよ。それとさぁ、生徒会とは物凄く対立関係にあるから景ちゃん要注意だね」
「そ、そうなんだ。気を付けるよ」
校門前にずらっと風紀委員の腕章を付けた子とたちが並んで、登校する生徒たちをチェックしている様子が見え始めていた。
その中に3人くらいの生徒が校門の脇にあつめられ、一人の風紀委員に尋問されていた。
なんだか物凄く大変そう……何もおきないことを祈りつつ、その場を通り過ぎようとした時、一人の風紀委員から呼び止められてしまった。
「そこのあなた。ちょっとこっちに来なさい」
「ほへっ」
そこのあなたとはやっぱり僕の事なんだろうか?
その呼び止めた子の方を見ると
「そうあなたよ。早くこっちへ」
ああ、何か引っかかちゃったんだぁ「はふぅ」やだなあ。
言われるままに彼女の方に行くと。
「あなたその髪の色は校則違反です。脱色や毛染めは駄目です」
「……あのう、これって地毛なんですけど」
「地毛? あなたの生徒手帳を提示してください。申請許可を確認します」
生徒手帳……。まだないんだよねぇ。
「あのぉ、私、昨日転校してきたばかりで、生徒手帳まだ来ていないんですけど」
「昨日転校してきた子? ちょっと待ってください」
その風紀委員の子は一番端でこちらをじっと見つめている、髪の長い黒髪の人に話をしに行った。
話を訊いたその人は、すっと顔を上げ、つかつかと僕の前にやってきて
「あなたが昨日転校してきた飛鳥景さんですね」
「はい、そうですけど」
「ふぅ――ん、その髪地毛なんだすか?」
「ええ、そうです父親が金髪なもので、その影響なんですけど」
「なるほど……」そう言いながら僕の事を舐めまわすように、あの鋭い視線が僕をさした。
そこに!
「あら、どうかなさいましたの? うちの役員が不祥事でも行いましたか?」
園ちゃんだ。
「これは生徒会長。うちの役員という事は飛鳥景さんは、生徒会に入られたという事なんですか?」
「はいそうなんですのよ。ですから彼女の身柄はこちらが補償いたしますわよ」
「ふぅ――ん。そう言う事ですか。ではいいでしょう。生徒手帳が出来ましたら、その髪の申請をお忘れなく。でなければ毎朝呼び止められることになりますのでご注意くださいね……飛鳥景さん」
にっこりとほほ笑むその風紀委員の彼女の視線は、あくまでも冷ややかだった。
「助かりました豊島園さん」
豊島園はにっこりとしながら
「だってこれが伴侶としての私のお役目なんですもの。景様……あなたをお守りすることが私の役目でもあるんですから」
またまた、豊島園の顔は赤く染まっていた。
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