第5話 生徒会長 豊島園 ACT1

「ああああああ! 景ちゃん。本当に久しぶりもう何年になるのかしら」


「ほへ、ほへ、ほへ???? あのう……」


 ちょ、ちょっとまったぁ――――!! な、何で僕の正体知ってんのぉ!!

 ええええええ、誰だぁ、この子はぁ?


「あのぉ――って何よ!」


「ええええッと。ですねぇ」


「ああ! もしかして私の事忘れたなんて言うんじゃないでしょうね」

「ええええっと……、実は、そうなんですけど。てか、全く分かんないんですけど」


「はぁー。そんなぁ。景ちゃんどっかに記憶落としちゃった? ああ、私とのちぎりも忘れちゃったの? あんなに激しく契りあったのに!!」


 ええッと、契りって何? あんなに激しくって……、もしかして僕はこの子を抱いたとか? まったく記憶にないんですけど。


 豊島園としまそのは目を潤ませて、じっと僕の瞳を見つめ。


「そ、そうだよね。も、もしかしてと期待してたんだけど……、やっぱり無理でしたか」


「無理って?」


「あのぅ……、ですね。景ちゃんとは一度会っているんです私。一度きりなんですけど……。幼稚園の時」


 ん? 今確か幼稚園って言ったよね。幼稚園? 


「でもね、でもね。私、陰ながらずっと景ちゃんの事お慕いしていたんですよ。それに今まで景ちゃんの事私見ていたんです」


「あのぉう、ちょっと整理してもいいですかぁ? お慕いしてくれてたのはいいとして、ずっと僕を見ていた? って、ストーカーでもしていたの?」


「そんな低次元の事なんかしていませんわよ。ちゃんと、ある所に依頼してあなたを見続けていたんですもの……。ほら」

 と、彼女はスマホを取り出して、画面を見せた。


「あ、ここは監視対象外ですから、今は映像は出ませんけどね」

「これってどういう事?」


「ええッとですねぇ。私も詳しいことは分からないんですけど、人工衛星から景ちゃんを映し出して私の所に送っているて言う事は訊いていますけど。あ、でもね、一応プライベートな部分は、マル禁映像でしか送られてきていないんですのよ」


「マル禁映像って……それって、完全なスパイ行動じゃんかぁ。ストーカーよりたちわりぃんだけど。それに監視衛星まで個人使用しているなんていったい何もんなんだよ」


「ええッとですねぇ。私のおじい様「バレンナシア・ルクセント・ル・バンパイア」と言うお名前なんです」


 バレンナシア? ええッとどっかで聞いたことある様な……えっ! も、もしかしてじいちゃん?

 

「て、ことは、従妹なの?」


「遠からずも、そ、そう言う事になりますわね。景ちゃんとは直系ではないですけど。でも景ちゃんと初めて会った時、私おじい様から、景ちゃんの第一伴侶になれと申しつかっておりましたの。ですからずっと私景ちゃんの事を見つめていたんです。それなのに、景ちゃんは私の事何も覚えていないなんて……正直悲しいですわ」


「あのさぁ、そりゃ覚えていなくて当たり前だよ。じいちゃんの伴侶ってたくさんいるから、ええッと豊島さんの様に僕と仮従妹みたいな人ってたくさんいると思うんだ。それにさぁ、幼稚園の頃一度しか会ってなくて、なにか物凄いインパクトのある事でもあればさぁ、少しは記憶に残っていたかもしれないんだけど」


「インパクトのあることでしたら、ございますわよ」


 目を輝かせ豊島園は、制服のリボンを取り、ブラウスのボタンを襟元から、一つづつ外していき、ブラウスの首筋部分を広げて見せた。


 あ、思わず、見える彼女のブラに目が行ってしまったけど、すぐに首筋にある傷を見つけた。


「この傷は?」


「多分お忘れ何でしょうね。あなたが私に付けた傷ですのよ」


「僕が? つけた傷あと?」


「ええ、あなたがあの時私の首筋から差し込んだ牙の後なんです」


「う、嘘だよ。僕は幼稚園のころなんかまだ牙は出ていなかったんだから」


「おじいさまが言うにはあの時、ちょっとした事件がったみたいなんです。それがどんなことなのかは私もわかりませんけど、ただ、あなたは私を守ろうとして私のこの首筋に本能的に牙をさして血を吸ったんです」


「うっそだぁ! そんなこと……あ、……も、もしかして」


 かすかな記憶の糸が繋がって来た。

 そうだ! 僕がまだ幼稚園の頃、ある事件が起こった。


 あの時僕とじいちゃんはあるパーティーに出ていたんだ。もちろん父さんと母さん(いつもは母さんの事『|彩音、あやね》さん』て呼んでいるんだけど)も一緒だった。


 その時じいちゃんを狙う組織が、奇襲を仕掛けて来たんだ。


 じいちゃんは第二世代目の真祖だ。しかも向こうでは伯爵の称号を持っている。

 いわば要人という事になるんだけど、だから、じいちゃんの力を狙う地下組織は多い。まぁそれを言えば、父さんは今や第三世代目の真祖の称号を得られる直結の一番近い親族になっているから、その僕らが一堂に集まったパーティーは格好のターゲットだったわけで、まんまと奇襲を受けちゃったらしいんだよね。


 そこで、放たれた一発の銃弾。


 その銃弾の軌道は、ちょうど僕と一緒にいた彼女へと真っすぐ伸びていた。とっさに彼女を押しのけ、その銃弾を僕はこの体に受けた。


 幼かった僕は強烈な痛みと恐怖から、意識がなくなっていた。

 だからあの時、自分が何をしたのかは覚えていない。


 だけどじいちゃんから、後で訊いた。


「景よ。お前は真祖直結の力を得ているようだ」


 あの一言が何を意味するのかは、その時は僕は分からなかったけどね。

 その時の傷。銃創は今は綺麗に無くなっている。

 僕には自己回復出来る能力があるみたいなんだ。



 これは仮設かもしれないけど、もしかしたら、僕はあの時本能的に彼女の血を吸う事で、能力を発揮して一命をとりとめたんだ。


 でも……僕の牙をさしても傷跡は残らないんだけど……それでも彼女の首筋にはまだ小さい歯型と牙をさした後が残っていた。


 その傷あとを僕は見つめながら、そっと彼女のその傷にキスをした。


「あっ! ああああ!」


 ビクッと、彼女の体が震えた。


 そのなまめかしい声と彼女の香りが僕を欲情させる。


「景ちゃん、いいよ。もう一度、私の血を吸って……お願い」


 いいのか、ここは自制欲をフルにして、思いとどまるべきではないだろうか……。



「ねぇ、……お願いします。景様……私の真祖様。私をまたあの快楽の中にいざなってください。あの時の様に」



 この体はあなたの為に……あるから……。

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