第4話 捕食準備 ACT3
今日一日、なんとか終わった。
実際教室の中にいると、自己欲望を抑えるのに大変だ。
まぁ初日という事もあるのかもしれないけど、ただ一つ言えてるのは。
男がいないという事なのだ!
今までは、僕の視線には必ず男と言う存在が目に入っていた。
それがない!
優美! ああああ、周りは女の子しかいないというのが物凄く新鮮でいて、クラスの中だけでも目移りしてしまう。
これがだよ、この学校全体だという事を思えば……ぼ、暴発してしまいそうだ。
何が暴発するのかは言えないよ。想像してね。あははは。
んで、今日は獲物を捕獲するのは諦めた。
むやみやたらにカプッ! はまずいでしょう。
まぁ今日はクラスの中で、目星をつけた子が出来ただけでも良しとしよう。
さて、これからどうするか?
校内の探索と、そう言えば
「出来れば幽霊部員として、ほとんど在籍だけしていればいい都合のいい部活なんてないよなぁ」
「ある訳ねぇだろ、そんな都合のいい部活なんて」
「ほへぇ?」
「ほへ、じゃないだろう飛鳥景。どうだ、転校初日は?」
「あ、宮間先生」
いつの間に僕の背後に先生は来ていたんだ、まったく気配を感じさせなかった。
「どうだと言われましても、でもクラスのみんないい人たちばかりで助かりました」
「ふぅーん、いい人ねぇ、ま、時期に分かるかぁ。ところでさぁ」
宮間先生は僕の耳にそっと顔を近づけて
「飛鳥、ばれない様にうまくやって行くことだな」
そう言って、僕のお尻をポンと叩いて「あははは」と笑いながら、離れて行った。
ばれない様に? って。
それは僕が吸血鬼であることを意味するのか。それとも男であることを意味するのか?
どっちなんだろう。
で、どっちにしても宮間先生は、僕の秘密を何か知っている……。
ま、まずい……担任に弱みを握られているのは厄介だ。
それに、あの「時期にわかるかぁ」って言うのも何か引っかかる。
まぁ、何もない方がおかしいかぁ。
辺りを見渡した。
運動部だろう、グラウンドから声が聞こえてくる。
生徒玄関から広がる中央エントランス。
今の時間、ここを通る生徒の数は少ない。
たまに数人と行違う程度だ。皆、部活で各々の活動をしている最中なんだろう。
僕位なもんだ、今の時間こんなにも暇そうにぶらぶらしているのは。
その時だった。
何か嫌な、そして鋭い視線を感じた。
はっと、またあたりを見渡した。
だけど、そんな人の姿は見当たらない。
「いったい何だったんだろう」
ゾクッと寒気がした。
今日はもう帰った方がいいな。
とりあえず捕食ターゲットは3人。あ、でも先生は今の所、外しておこう。なんかあの先生にはありそうな気がする。
まぁ、下見としてはまずまずだよな。
下駄箱の外履きに手をかけた時、後ろから声をかけられた。
「あなたが今日来た転校生なの?」
振り向くとそこには、髪を長くした見ため、美人系の子がいた。
「私、2年A組の
うわぁ、綺麗な人だなぁ。
いいなぁ、いいなぁ。一目惚れしちゃいそうだよ。
「うふふふ、どうしたんですか? 何か私の顔に付いていますか?」
「えええ、っと、な、なんでもないです」
「それでは、私の後に付いてきてください。……大丈夫ですわよ、あなたにとって不利になる様な事ではないので」
にっこりとほほ笑んで豊島園は、くるりと髪をたなびかせながら、歩き始めた。
彼女の歩く速度に合わせ、一歩後ろをついていく。
後ろ髪がさらさらと揺れ動く様子を目にしながら、さっきから感じているあの鋭い視線。僕たちが移動している後をつけるようにその視線も移動していた。
「ところで私たちって、もしかしてつけられています?」
「あら、あなたもう気が付いていたの? さすがね」
彼女は顔色一つ変えずに返した。
「今は無視しましょう。多分あちらからは、すぐに何かを仕掛けてくることはないと思いますので」
仕掛けてくる? ん?
「ええっと、仕掛けてくるって言う事はやっぱり、狙われているという事なんでしょうか」
「うふふふ、狙われている? ん――――、そうね狙われていると言えばそうかもね」
「あのぉ、それってやっぱり私の事を狙っているんでしょうか?」
「そうよ」
豊島園はそうきっぱりと答えた。
ええ、僕が狙われている?
この学校ってなにかやばいのかなぁ。僕は多分正体は、ばれていないと思うんだけど、だとしたらどうして狙われなきゃいけないんだよ。
もしかして、転校生への『洗礼』って言うやつ? あああ、なんかやだなぁ。僕はさぁ平和主義なんだよねぇ。争いごととかさぁ、いじめとかなんか物凄く嫌なんですけど……。
階段を上がり、2階にあるとある部屋の前で彼女はピタリと足を止めた。
「さぁ着きましたわよ」そう言いながらその部屋の戸を開けた。何となく普通の学校の教室と言う雰囲気とは違う気がする。
なにせ、そのドアから違うんだもん。
もしかしてここって校長室?
と、上のプレートを見ると『生徒会室』と書かれていた。
ええ、生徒会? な、何で僕が生徒会なんかに来なきゃいけないんだよ。
「何してるの? 飛鳥景さん。さぁお入りなさい」
「あ、はい」
その部屋に入ると正面にある、で――――んっと立派な机が目に入った。
彼女はその立派な、校長室にある机より立派な、いや立派過ぎる机にひょいと腰かけて。
「あ、ドアは締めてね」とにこやかに言う。
言われるままに、ドアを閉めるとカチャと言う音が聞こえて来た。
「うふふっふ、ドアロックしちゃった」
机に腰かける彼女の制服のスカートの裾がめくりあがり、8分丈のストッキングの端から先、生の肌があらわに見えている。もう少し、ほんの少しでその先、下着、パンティーが見えるギリギリのところだ。
「さぁ、もっとこっちにいらっしゃい」
なまめかしい瞳が僕を呼び寄せる。
「うふふふ、つ・か・ま・え・た」
僕の体を抱きしめ耳元に熱い息を吹きかけた。
体がびくっと反応する。
ああああああああ! ま、まずいよう!
牙がメキメキと出てくる。
豊島園の甘いなんとも言えない、優雅な香りが僕の鼻をくすぐる。
そして彼女は僕の耳元でこう言ったのだ。
「久しぶりね景ちゃん。本当は男の子、そして……吸血鬼の飛鳥景」
「ほへっ??」
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