第99話 『夜道の出会いに乾杯』 惣山沙樹さん

〇作品 『夜道の出会いに乾杯』

https://kakuyomu.jp/works/16817330654173729489

 

〇作者 惣山沙樹さん


【作品の状態】

 短編(KAC2023参加作品・777文字)・完結済です。


【セルフレイティング】

 なし。


【作品を見つけた経緯】

 KAC作品を読んでいたときに見つけた作品です。


【ざっくりと内容説明】

 777文字しかないので、省略です。


【感想】

 本当に短い作品ですが、寄り添ってくれるような温かさと優しさがあると思います。


 この作品は、恋人同士と思われる女性二人が、深夜二時のコンビニの近くで立っている中学生くらいの女の子に声を掛け、ジュースをおごってあげる、というシンプルなお話になっています。

 たったそれだけの話なのですが、色々考えさせられるものがあります。

 特に大人の女性が、中学生くらいの少女に対して行った行動。これはできるようでいて、なかなかできないことです。


 私は知り合いに教師や保育士をしている人がいるのですが、彼らに「子どもが目の前で転んで怪我をしても、手当を勝手にしてはいけない」と言われたことがあります。(そこまで強い言い方ではないですが、学校でも簡単にしていい行為ではないという風に教えてもらったことがあります)

 水で傷口を流したり、布で傷を抑えるくらいはいいのかも分かりませんが、消毒液を掛けたり、絆創膏を貼ることはしてはいけないそうです。それは消毒液が合わなかったり、貼った絆創膏が合わずかぶれたりするのを回避するためとのこと。


 確かに言っていることは尤もなことですが、私はこのことを知ったとき、目の前に困っている子がいたら、どう対処するのが正しいのか、分からなくなりました。

 下手したら対処したことに対して文句を言われる可能性がありますし、変な疑いを掛けられることもあると思うと、なかなか行動に移すのが難しく、人を助けるのが難しくなったと感じます。


 物語に登場する、深夜二時にコンビニの近くで立っている少女のことも、本当は警察を呼んで補導してもらうというのが正しい対処なのかもしれませんし、物騒な世の中なので、少女も自分の身を守るために、知らない人と関わり合わないのがいいと言う意見もあるでしょう。


 でも、そんな大げさなことをしなくても、誰かが少し寄り添ってくれたらそれで済むようなこともあると思うのです。


 今の世の中は、ちょっとした声がけができなくなったことで、誰もが誰かと関わるのを避けるようになっていき、周囲で気づけるはずの小さな問題が見落とされて、大きな問題に発展していっているようにも思います。


 そのため、この女性二人が行った小さな優しさが、少女に前を向かせてくれる力にもなるのかもと思うと、このお話は素敵だなと思いました。


 ただ、こういう行為は現実には難しいことかもしれません。……いえ、難しいことだと思います。

 でも、これを読んだ人(特に若い人)が、赤の他人でも気にかけてくれる人もいるんだよ、心配する人だっているんだよ、ということを知ってくれたらいいなと思います。


 今日は『夜道の出会いに乾杯』をご紹介しました。

 それでは次回、またお会いしましょう。 

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