◇閑話◇ 『白い絵の具』の解釈――紹介者の場合
<注意>
*前回作品紹介のおまけです。
*この◇閑話◇は、『白い絵の具』をお読みになってから読むことを推奨いたします。
<書いた経緯>
*『白い絵の具』は、散りばめられたキーワードに気が付くと、より一層面白い作品です。それについて紹介者なりに、「こうかな?」と思ったことを下記に記してみました。ですが、作品を読んだときの印象・解釈・感じ方等々は人それぞれですので、「違うな」と思った方はご自身のお気持ちや考え方を大切になさってくださいね!
【私なりの解釈】
①「白」と「余った真珠」は何を指すのか?
物語の冒頭に出て来る「余った白い絵の具」というのは、単純に「絵を描いていて残った色」のことを指します。
「色が余った」というと、出番がないということですから、必要とされていないのかなと思うのですが、『白い絵の具』のなかでは、だんだんと物語の中心になっていくのです。
まず「余った白い絵の具」は後に、「余った真珠」という表現に変えられます。(私の解釈が間違っていなければ、「余った白い絵の具」=「余った真珠」です)
しかしそうすると、何故「余った白い絵の具」としないのか疑問が出てきます。あえて「真珠」というからには何か特別なものなのでしょう。
ここでポイントになるのは、二つです。
一つは、主人公の夫が(おそらく)宇宙飛行士で、「月」に行っているということ。
もう一つは「真珠」には、別名に「月のしずく」があり、また「『お守り』として使われる」ことがあるということ。
つまり「月のしずく」というのは夫が向かっている「月」のことを指し、そして「『お守り』として使われる」のは、宇宙航海の安全祈願をしていると私は解釈しました。(作者さんが意図して書いたかは分かりませんが)
そして「余った真珠」は特別な光のことを指します。
暗い色ばかり使う主人公のなかで、「白」は「光」を指します。それは夜空を描く彼女にとって、光るものといえば星(太陽と月も含む)のことを示すからです。
ですから、キャンバスのなかの夜空に光る大きな光(=白を沢山使う)は夫のこと。そして、彼女は夜空を描くたびに彼に思いを馳せているというわけです。(こんな風に深堀しなくても分かるようになっているのですが、意味付けするとなおすごいなと思います。私の自己満足なだけかもしれませんが 笑)
②最後の二つの段落の考え方。
「白いあなた」というのは、単純に主人公の夫のことであることは深読みしなくても分かるようになっています。しかし何故「あなた」ではなく、「白い」が付くのでしょうか。
それは主人公にとって特別な色だからです。
「余った白を消費しながら、白いあなたを待ち続ける」という言葉が出てきますが、それは「星以外の光で白を使うときは、あなたのことしか描かない(あなたのことを思っている)」ということを暗に示していると感じました。ここからも特別な感じが伺えます。
そして極めつけに、「宇宙」を「スペース」と振り仮名を振って読ませているところ。「スペース」には「宇宙」という意味もありますが、「紙面の余白」などの意味があります。途中、主人公の子どもが「ここ塗り忘れているよ」と指摘するのですが、「塗られていない」→「余白」→「白いあなた」と連想できるのではないかなと私は解釈しました。宇宙に行っている夫と、地上で夜空を描く妻だからこそできることだなと思います。
私なりの解釈の説明はこれで終わりです。読んでくださりありがとうございました。
<まとめ>
実際のお話を読んでみると、あっさりとした関係に感じられるかもしれませんが、こんな風に絵に込められた思いを読み取ってみると、宇宙飛行士の夫はとても愛されているのが伝わってきます。
短いですが、本当に奥深い話でした。
散りばめられたものも、鈍感な私でも拾って解釈できたので面白かったです。それが作者さんの意図したものではないかもしれませんが、私は楽しんで想像できました。
こんな風に物語に秘められたものを拾うのが好きな方であれば、楽しめると思います。おすすめです!
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