第42話 『みーくんは今日も夕陽を眺める (改訂版)』 ゆうすけさん

〇作品 『みーくんは今日も夕陽を眺める (改訂版)』

 https://kakuyomu.jp/works/1177354055063937559

 

〇作者 ゆうすけさん


【作品の状態】

 短編。完結済。


【作品を見つけた経緯】

 ゆうすけさんのコレクションから拝見しました。


【ざっくりと内容説明】

 ショーと、彼と同僚の自由気儘なみーくんの、夕焼けのような優しい物語。


【感想をお読みになるときの注意点】

 多分、最後の展開がハッピーかハッピーでないかくらいは分かっちゃうかもしれません。その点だけお気をつけて読んでいただけると幸いです。


【感想】

 物語はショーの視点から、仕事のことについて書かれています。

 しかし読者には、彼がどんな仕事についているのか最初は分かりません。相棒は「みーくんと呼ばれている女の子」。でも、それ以外の詳しいことは書いてないのです。ヒントはちょこちょこ置いてあるのですが、それは1度読んだだけではもしかすると分からないかもしれません。


 私はこの作品を2回読んだのですが、物語の行きつく先が見えないときと、それが分かっているときの感想は違うものでした(別物といってもいいかもしれません)。


 1度目に読んだときは、湖の上にぽつんと置かれたヨットのように、物語の彼らと距離を取ったまま読み進めたのですが、最後の展開を読んだとき急に彼らとの距離が近くなり、そして悲しくなりました。

 こんなにも温かな気持ちで読んでいたのに、どうしてくれるのだとちょっと怒りたくなるくらい、最初から最後までショーとみーくんの関係が素敵な話だったのです。


 2度目に読んだときは、最後が分かっています。彼らがどうなるのか分かりながら、文章のなかに散りばめられている「仕事」の内容に気付きます。それが分かってしまうと、最後の展開はそうならざるを得ないと思いますし、みーくんの優しさが余計伝わってきてしまって、1度目に読んだときの勝手な怒りは浮かんできませんでした。


 この作品は確かに「温かなお話」に部類されるとは思いますが、読む人によってそのなかに生まれてくる別の感情は違ってくるかなと思います。そして読む回数を重ねてもまた別の発見と感情の生まれ方が変わってくるのも魅力的でしょう。


 また個人的にショーの相棒である、みーくんの性格が可愛らしいなと思います。

 彼女は気まぐれなんです。仕事もちょっと「さぼり気味で遅れ気味」になって、ショーに迷惑をかけていることがあるのですが、それが彼女の優しさだと分かったとき、なんとも言えない哀愁を感じます。そしてそれをなんだかんだ言って受け止めてしまう、ショーも素敵な人です。


 また「みーくん」という愛称なのに女の子というのも、心を掴まれてしまいました。何ででしょう。不思議なのですが、この物語で彼女を呼ぶには「みーちゃん」ではしっくりこないのです。

 どうしてそう思うのかは分からないのですが、「みーくん」はこの世界観にぴったりなのは間違いありません。


 1万字程度の作品ですし、「です・ます」調の柔らかい地の文がまるで優しく手を引いてくれるかのように読者を誘ってくれるので、気負うことなくさらりと読むことができます。

 温かで少し寂しくなるような物語をお求めの方におすすめです。よかったら読んでみてはいかがでしょうか。


 今日は『みーくんは今日も夕陽を眺める (改訂版)』をご紹介しました。

 それでは次回、またお会いしましょう。 

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