7月 July

第44話 『ためらいもなく、総司は』 fujimiya(藤宮彩貴)さん

〇作品 『ためらいもなく、総司は』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054903114211

 

〇作者 fujimiya(藤宮彩貴)さん


【作品の状態】

 完結済。(2万5千字程度)


【作品を見つけた経緯】

 初音さんのレビューを拝見し、気になったので読んでみました。


【ざっくりと内容説明】

 新選組一番隊組長、沖田総司の意外な一面が見える作品です。


【感想】

 ——「今夜は豚鍋」と聞いて、総司は逃げ出そうと決意した。(『ためらいもなく、総司は』より)


 上記は『ためらいもなく、総司は』の冒頭を引用させていただいたのですが、すでこの部分から心を掴まれました。


 新選組一番隊組長、歴史的な沖田総司のイメージは「冷酷」「残忍」というのが一般的だと思います。しかし最近カクヨムさんで投稿されている新選組の作品に触れるたびに、「冷酷」というイメージは、単に彼のことをよく知らない人たちの噂による外の一面なのかな、と想像します。


 そのため沖田総司とは「冷酷」と噂されつつも血の通った人間であり、ちょっと少年のような一面もあって、心の深いところで愛おしく思う者を大切にしている人物なのではないかと思えてきてきます。そうなると、色んな方が書いた新選組の話を読んでみたくなってくるもので、雰囲気が良くて手ごろな長さのお話はないかと探していたところ、『ためらいもなく、総司は』と出合いました。


 さて、この作品も総司の意外な一面が垣間見ることができる作品であることは言わずもがななのですが、なんといいますか、ギャップが面白いのです。刀を握らせれば右に出る者がいないほどの強者が、まさかの「豚鍋」が苦手。同じく苦手な上司の土方歳三と「俺の分もお前が食え」「土方さんこそ食べたらどうですか」などと、しょうもないやり取りをに行っているのを見ると、おかしくて笑いつつも次第に愛おしくなってしまいます。


 その総司ですがお話の中で恋をします。どこか少年のように未熟で、可愛らしさを感じるそれを読者は純粋に応援したいと思うのですが、作中ではその恋に首を突っ込みお節介を焼く土方(総司の思い人が新選組に仇なすような人物でないかの調査を勝手にしている)に振り回されるのです。しかし土方にむっとする彼の姿につい頬を緩ませてしまうのは、作者のfujimiya(藤宮彩貴)さんが描き出す沖田総司という人物がとても魅力的だからなのでしょう。


 また注目すべき点は、総司の恋と同時進行で進む新選組としての仕事。

 私はカクヨムさんで新選組関連の作品を他に読んだことがあるのですが、彼らが敵に対して冷酷なのは当然なのですが、仲間の裏切りに対しても厳しいというところも特徴で、話を読んでいていつもそれに冷や冷やさせられます。

「裏切っているか」「裏切っていないか」。

 新選組の設立当初から参加している総司でさえ、その疑いをかけられることもありますし、総司自身が他の者を疑うこともあるのです。

 斬るか、斬られるかの時代。

 総司の恋の行方がどうなるのか、ぜひお読みください。


 今日は『ためらいもなく、総司は』をご紹介しました。

 それでは次回、またお会いしましょう。 

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