第30話 ライブラ支配者アルデバラン攻略3

「なんのつもりだ……。俺の視界を塞いで、多方向から攻撃でもするつもりか?」


 ブーメランのように戻ってきた戦斧を構え、

「見えずとも、攻撃を仕掛けてきた時が貴様らの最後よ。近づいたが最後、グチャグチャに切り刻んでやるわ!!」


 周りに向かって咆哮する。

 襲ってくる気配はない。


 煙幕のせいで、周りが見えない。

 とりあえず、地面に挟まった四本の足を引き抜く。

 その間に煙幕は晴れ、辺りの様子がだんだん見えてきた。


 ペテル達一行は……。


 居ない。


 ペテル達は逃げていた。


 煙幕が晴れ上がった庭を見渡す。

 三人とも、影も形も見当たらなかった。


「フン、逃げたか! そうか! 逃げたか!!」

 アルデバランは、戦斧を背中に担ぎ。

 腰に手を当てて、空に向かって叫んだ。


「愚か者どもめ! 敵わぬと見えて、我に恐れをなしたのだな!」

 そう言って、ツカツカと庭の大きな石に近づく。


「腰抜けどもが。何しに来たのやら……」

 戦斧を横に薙ぎ払い、その岩を粉砕した。


 岩が衝撃で粉々になり、石ころがバラバラと庭に広がる。

 フンッ! と鼻息を荒く吐いて、アルデバランが屋敷へ戻るべく身をひるがえす。


「ムッ?」

 肩のところに、何かがくっついている。

 鉄の棒だった。

 見ると、頭や胴体、足にも何本かの鉄の棒がくっついている。

 草むらを通り過ぎたとき、服にくっつくオナモミように、それはくっついていた。


「なんだこれは? チッ! しゃらくさい!」

 アルデバランは鬱陶うっとうしそうに、至る所にくっついている棒を体から取る。

 それをまとめて、ぐしゃぐしゃと両腕で丸めて。

 ボールのようにした後、遠くへと投げ捨てた。




「うん、それでね。今後のことなんだ」

 ペテルは、全員が座ったところで切り出した。


 ここは、内通者のドワーフの家。

 場所はキッチン。テーブルの周りに全員が座っている。


「あのう、アルデバランには、やっぱり魔法も攻撃も効きませんでした」

 スピカが、杖を握り締めながら意見を出す。


「うむ。あの鎧はなかなか難攻不落であるぞ」

 と、ベガも。

 腕を組みながら、そう答える。


「うん。それでね。ひとつ今回の戦いで、確信したことがあるんだ」

「なんでしょうか、それは?」

 ドワーフの内通者が、ヒゲをいじりながら聞いてくる。


 それは後で説明するとして。

「アイツを倒すのに必要なものがあるんだ。こういうの作ったりできるかい?」


 ペテルがドワーフに近づき、耳打ちする。

 耳打ちする時間はちょっと長かった。

 それでもドワーフは、その内容に聞き入っているようだった。


「いやでも、それは。まあ、町中の仲間たちに声をかければ、できないことはないかと……」

 ドワーフは腕組みをして、唸る。


「ぜひ、お願いするよ! うまくいけば、アルデバランからの支配から逃れることができるかもしれないよ!?」

「ううむ……」

 ドワーフはしばらく腕を組み考えていたが。


「そういうことなら! やりましょうっ!」

 膝を叩いて、賛同した。


「本当かい!?」

「ええ。あっしらが、魔王討伐の力になれるなら、本望でさぁ!!」

 ドワーフは、もう一度膝を叩く。


「よかった! お願いするよ!!」

 ペテルは、ドワーフの手を握って、一緒に喜んだ。




 三日後。

 ペテルは、再度アルデバランの屋敷へと向かった。

 今度は、数名のドワーフたちも引き連れて。

 ドワーフたちはとある荷物を持っていた。

 スピカとベガは何故かいなかった。

 前回通った通り道を抜けて、アルデバランの屋敷の前へと到着する。


 今回は庭には、数体の魔物がうろついていた。

 そんなうろついている魔物の目を盗んで、時には全員で襲い掛かり倒しながら、屋敷の周りを一周する。


「今度は屋根かな」

 ペテルは上を見上げる。

 近くの木を登り、屋根へと飛び移る。

 ドワーフの一人も、同じように木に登り、屋根へと飛び移りペテルと合流した。


 そして、荷物からあるものを取り出し設置していく。


「適当だけど、こんなものかなぁ」

「上出来だと思いますよ」


 持ってきたものは、全部設置できた。

 登ってきた木から降りて、一旦集合した。

 全員が手に何かを持っている。

 それは導火線だった。


「これで、倒せるとも思ってはいないけど」

「でも、少しくらいならダメージを負わせられるかもしれませんぜ」

 ドワーフの一人が言う。


「それだったら、儲けもんだね」

 ペテルたちが屋敷の周りに仕掛けていたのは、発破用の火薬だった。


 この世界にはダイナマイトが無いので、仕掛けているのは黒色火薬である。

 鉱山で主に使っている火薬だった。


「雨が降らなくてよかった」


 黒色火薬は湿気に弱い。

 ペテルは、空を見上げて言った。


 そして十分離れたところで、ドワーフたちと一緒に導火線に火をつけた。

 火は導火線を辿っていって、火薬に着火。


 屋敷が爆音に包まれる。

 そして、激しく派手に音を立てて崩れ去った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る