第27話 アクエリアス支配者ボルックス攻略後
ボルックスが死ぬと同時に、周りを囲んでいた魔物たちは消滅した。
モンスターである何体かは、洗脳が解けたのか、正気を取り戻したように大広間から出て行った。
「やりましたな。四将校の内の一人を倒しましたぞ!」
ベガがはるか上の、天井に逆さに吊るされた男のようになったボルックスの亡骸を見ながら、称賛した。
「うん。とりあえず、一人目だね」
しばらくして、槍が重さに耐えきれず、ボルックスと共に床に向かって落ちてきた。
スピカは見ないで。
ペテルは落ちる瞬間を見ないように、スピカをかばうように彼女の身体を覆った。
ボルックスの身体が無残なものにならないように。
ペテルはそのまま反重力装置を操作して、ボルックスの亡骸をゆっくりと床に降ろした。
槍に貫かれたままだが。
落下の衝撃で、重力のまま床に落ちてきた姿よりは、はるかにマシな姿だった。
ペテルがボルックスの亡骸に近づく。
そして、腰に巻かれていたベルトと。同じく腰にぶら下がっていた黒い円柱の物体を回収した。
「ああ、よかった。無事だった」
黒い物体を、大事そうに懐にしまう。
「それは、なんですか?」
抱きつくまま、スピカがペテルに問いかけたが。
ペテルは笑っただけで答えなかった。
その後、アクエリアスの町は解放された。
その吉事は、瞬く間に王都サジタリウスまで届いた。
都市を開放して、ペテル一行が王都へ戻ったとき出迎えてくれたのは、ペテル達をたたえる民衆と王家の者たちであった。
「勇者ペテルよ! 大儀であった!」
王城に戻ったペテル一行を、王は歓迎してくれた。
「それで勇者どの。まことに心苦しいのじゃが、近いうちに別の都にも向かってはもらえぬか?」
大臣らしき男も付け加える。
「そこでも人々は苦しんでいるうえに、支配されたままでは物資や経済が滞ってかないませぬ」
どうか、ご検討を。
大臣らしき男は深々と頭を下げた。
王と家臣の者たちも、ペテルとスピカに頭を下げた。
「王よ、ご安心ください。僕も、一刻も早く将校たちを倒さねばならないと思っていたのです」
王の顔に喜びが浮かび上がり。
周りを取り巻いている家臣たちが「おおお」と騒めいた。
だがしかし。
ペテルとしては、一刻も早く、奪われたアイテムたちを取り戻したいのだ。
本当は立て続けに戦いを挑んでは取り返していきたいくらいだ。
しかし、相手は将校を名乗るだけあって強い。
どんなヤツで、どんな攻撃をしてくるのか分からない。
情報を集めるのが先決であった。
「残る都は二つだが、どちらに行くべきかはカノープスに占ってもらおう。
「承りました」
王のそばにいたカノープスは、静かに礼をして姿を消した。
「さあ、疲れたであろう。次の出発は占いの結果が出てからとなろう。それまで、ゆっくりと休むがよい」
王はその間ペテルたちを客人として、王宮に招き入れた。
案内された部屋はすごく広く、装飾もすごく、ベッドもフカフカ。
思わず、飛び乗ってしまいたいくらい。
部屋を一瞥してペテルは。
まるで、高級スイートホテルを貸し切りにしたような部屋だな。
と、思った。
もちろんスピカとは別々の部屋だった。
もちろんペテルはその部屋でグッスリと寝た。
そして次の日の朝。
ペテルはものすごく、気持ちいい朝を迎えた。
ベッドのなかで上半身を起こして、腕を伸ばしあくびをする。
とても気持ちのよい朝だ。
窓から差し込む日差しも気持ちいい。
ドアをトントンと叩く音が聞こえる。
「朝ごはんでも、持ってきてくれたのかな?」
ペテルがどうぞ。と言うと、ドアが開いてスピカが入ってきた。
「勇者様。カノープス様がお話したいことがあるそうですわ」
あらら。そうなんだ。
カノープスのシワ枯れた顔がペテルの脳裏に浮かぶ。
朝のルームサービスとしては最悪だな。と、ペテルは思った。
装備を整えたペテル、スピカ、ベガがカノープスが呼びつけた部屋に集まる。
カノープスが水晶玉に両手をかざして、しばらく唸ったあと目を見開く。
カノープスの占いの結果が出た。
次に目指すは西の都「ライブラ」
鉱山があり、鉄鋼業や鍛冶が盛んな街だ。
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