第11話 ハマル団のことについて、なにか知らないかな? 2

 ペテルとスピカは、先日通された長老のいる広間へと足を運んだ。

 ミギワとヒダーリは、部屋の入口に立って、警備をしていた。


「これはこれは勇者殿。何用かな?」

 長老がフガフガとしゃべる。

 今日はちなみに、占星術師は居ない様だ。


「長老さん、ミギワさんとヒダーリさんに話を聞けないかな」

「なんと?」

 意外な人物に話を聞きたいのだなと、長老は方眉を上げた。


「実は、ハマル団のことについて、話が聞きたいのです」

 スピカからも長老に訴える。


「ハマル団だとッ!?」

「奴らに何かされたのか?」

 左右の兵士が歩み寄る。


「ええと、実は大事な荷物が盗まれちゃって……」

「そうなのか!?」

「それは、大変な事だ」

 左右の兵士は交互にうなずく。


「ええと、それで僕の右側がミギワさん。左側がヒダーリさんなのかな?」

 ペテルは首を左右に振りながら尋ねる。

 二人は少し驚いた顔をして。


「逆だ」

 右側の兵士が言った。


「へ?」

「ワタシがミギワだ」

 左側の兵士が言った。

「ワタシがヒダーリだ」

 右側の兵士が言った。


「あ、ああ。そうなの?」

「ここでは何じゃろうから、別室を用意しようかの?」

 長老が気遣いを見せるが、

「いえ、勇者殿さえよろしければ、ここで話を伺ってもらいたいのですが」

 ミギワが左側から言う。


「同じく。護衛が抜けていた間、何かあってはいけませぬからな」

 ヒダーリが右側から言った。




 召使いに人数分の椅子を持ってきてもらい、4名はそれぞれ腰掛けた状態で話しをしはじめた。


 ペテルは自分が乗ってきた流れ星の話をしたあと。

 その中に入れておいた、大事な荷物がなくなっていることを説明した。

 ハッチが開けっ放しになっていた事や、危機感を覚えず村でのんびりしていた事は不必要だと思い、あえて言わなかった。


「それで、勇者様が泣きじゃくって、アタシにすがり付いてきたんです」

「ああ、いやいや」

 ペテルが手のひらを振って、それは違うんだと否定する。

 それでもすこし意地悪く、

「勇者様が泣き止むまで、骨が折れましたわ」

 と、彼女は続けた。


 まいったなぁ。

 ペテルは苦笑いする。

「それで、近くの木の幹に、ハマル団のマークがあったというわけなんです」

 スピカが説明する。


「なるほど、それは災難でしたな」

「ハマル団は、我らにとっても目の敵でして」

 ミギワとヒダーリが話す。


「ご両親を、亡くされたとか?」

「ああ。だが我らの私情だけで、村の兵士達を動かすわけにはいかんからな」

「いつか、敵は討ちたいと思ってはいるのだがな」

 二人とも腕を組みなおす。


「とにかく、ハマル団の情報が知りたいんだ」

 そう言って、門番から聞いた情報を二人に話した。


「聞いた話だと、これくらいかな」

「他に知っている事はありませんか?」

「ありますとも」

「いくらでも、お教えしましょう」




 ミギワとヒダーリはハマル盗賊団について、改めて説明してくれた。

 ハマル団は約20名ほどからなる、盗賊集団だ。

 普段は森を越えた先の、岩山をアジトにしている。

 人を襲うときは、だいたい3~4人くらいの人数で襲うという。

 首領が居て、ハマル団のマークの刺青を右肩に大きく入れている。

 大きな曲がった剣、シャムシールを武器に使うらしい。


「最近では、魔王の手下とも手を組んでいると聞くな」

「まあ、そうなのですか」

「ああ、魔物と一緒になって人を襲う事もあるらしい」

「まだ甚大な被害があったとは聞いていないが、我らも対策を考えておかねばなるまいな」


「とにかく、奪われた荷物を取り戻したいんだ」

「我らも協力してやりたいが、大勢で乗り込むというわけにも行かぬ」

「うむ。いくら勇者様の頼みでも、さっきも言ったように私情で村の兵士全員を、向かわせるわけにはいかんからな」

「それに、村の兵士は集めた所で、せいぜい10名程度だ。やつらのアジトに乗り込んで合戦を挑むのはかなり不利だ」


「いやいや。貸してくれるのは、ほんの数名でいいよ」


 ペテルが腕を組みながらそう答える。

「ひとまず、中の様子とかが分かればいいんだけど」

「なにか考えが、おありなのか」

 ヒダーリが問う。


「中の様子が分からないと、対策の立てようがないからさ。アジトの中に入った事はないの?」

「残念ながら、それはないな」


 ペテルは、一考し。

「うーん、じゃあ仕方ないか。僕、ちょっと行って忍び込んでくるよ」

「そんな、危険ですわ!」


「いや、その前に準備がいるんだ。それをスピカや村の人たちに手伝って欲しい」

 椅子から立ち上がって、ペテルは3人に顔を向けた。

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