第5話 星の勇者3
スピカは自分のことも話してくれた。
自分はエルフという種族なのだと、説明してくれた。
基本的に森に住み、森で生活を営んでいる。
耳が長く尖り、長寿である。
800年から、長くて1000年は生きるとも言った。
自分はまだ、120年位しか生きていないそうだ。
ペテルは感心して聞いていた。
弓や魔法が、得意なのだそうだ。
そして、ここはエルフの森の集落である。
森に住んでいたエルフたちが集まって、村を作ったというところらしい。
日々を、狩猟や農耕などをして暮らしている。
ここは気候は温暖で、農耕や牧畜にも適していると語ってくれた。
森を抜けてしばらく歩く必要があるが、一番近いところに町があるらしい。
そこへ作物や木材、木工品などを提供して、交易している。
石炭や油、海の幸など。
ここら辺で取れないものは、そこから調達してくる。
月に何回かだが、定期的に行商人が訪れてもいるそうだ。
「森の恩恵もありまして、今のところ食べることには困ってません」
しかし少し、表情を曇らせるスピカ。
ただ、最近は魔物が増えてきてまして。
「先ほど話した、町への道中にも魔物が現れることがありまして。まだ時々ですが、襲われる回数も多くなってきました」
「ふうん、そうなんだ」
あまりピンとこないペテル。
ペテルはふと、まだ魔物とかモンスターに出会っていないことに気がついた。
「モンスターとか魔物は、ここには入ってこないの?」
「この村には結界が張ってありますし、絶えず衛兵が村の入口を見張っております」
弱い魔物などは入ってはこれないらしい。
「強い魔物が、攻めてくることとかは無い?」
「ないと思いますが……。一番近い町も今のところは無事ですけど、その町からさらに歩くんですけど、この国で一番大きな城下町があります」
「城下町ってことは、お城があるってこと?」
「ええ、王都ですね。そこが魔王軍に狙われている。という話は、聞いたことがあります」
やっぱり、魔王とかいるんだ。
魔王の居場所とかも気になってくる。
「魔王ってどこにいるのかとか、分かってるの?」
「王都よりはるか北に、魔王城がそびえ立っていると聞きます」
「へぇ、場所は分かっているんだ」
ちょっと意外だった。
「でも、魔王の配下には、四名の強力な『将校』がいると聞きます」
魔王だけでも手に余りそうなのに、他にも強そうなのが四体もいるのか。
顔には出さないが心の中で、嫌そうに舌を出すペテル。
「でもワタシは、ペテル様がなんとかしてくれると信じています」
スピカが期待を込めた瞳でペテルを見つめてくる。
直視できず、目をそらしながら、
「い、いやあそれはどうかなぁ……」
視線だけでなく、この場から逃げたくなる。
でも周りから、勇者ともてはやされるのは、正直悪くは無い。
勇者というだけで、かなり優遇されているところもあるだろう。
ベッドに腰掛けながら、ペテルは考えた。
今は、壁に伝い歩きならトイレまで行けるけど。
やっぱり、重力に慣れて立って自由に歩きたいな。
そのとき、部屋の扉がノックされた。
どうぞ。と、返事を返す。
一人の、口ひげを生やした男性が入ってきた。
「スピカ、頼んでいたものができたぞッ」
「ありがとうございますッ!」
スピカが受け取ったのは、2本の松葉杖だった。
「勇者様、これで動けますよ」
これはとても、ありがたかった。
松葉杖を受け取る。
2本の松葉杖を使うと、どうにかこうにかだが。
短い距離ならば、立って移動することが出来た。
「スピカ! ありがとう!」
感謝の言葉を述べて、早速歩いてみる。
自分の足で移動できる。
実のところ、部屋から外に出てみたかった。
村の様子が見たい。
この部屋以外の、ところが見たい。
はやる気持ちで、部屋の中をたどたどしく歩いた。
ドアから外に出ようとも思ったが、体がやはりダルイ。
窓から見えている、祭られている石像がこの間から気になっていた。
しかしちょっと歩いただけで、疲労感がヒドイ。
近くで見たかったが、ひと寝入りしてからにしよう。
ベッドに横たわる。
「まだ、無理はいけないと思います」
スピカが毛布をかけてくれる。
そうだな。
まずは、体力回復が最優先事項だ。
ペテルはそう考えて、目を閉じる。
その数分後には、眠りについていた。
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