22話 今後の行動


 遅かれ早かれこうなるってことはなんとなくわかっていた。今回の件で俺たち全員が有名になってしまった。そうなった以上居場所がバレるのも時間の問題だろうと思っていた。だから早めにワック様に何かしらの手段をとってもらおうと思っていた。




(だけどこんなに早く来るとは...)




 早く相手がこちらに接触して来られたら今後のことは目に見えている。エルミナの暗殺もしくは捕獲。そして俺たちの危険性が増す。そうなった以上エルミナはどう思う? いつもは平然を装って俺たちや他人とも話しているが、本当は仲間のことを一番に考えて行動している。そしたらエルミナのことだから俺たちから離れるのはわかっていたこと。




(俺のバカが...)




 まずは探そう...。俺はエミルーク内でいろいろな人を尋ねる。宿の近くのお店の店員や武器屋の店員にギルドの受付嬢。だけどそうそう見つかるはずもなくみんなと集合する時間になった。




(一旦は戻ってみんなと進捗状況を話そう...)




 宿に戻るとみんなが集まってた。




「クリスどうだった?」




「全然...。そっちは?」




「私たちの方もダメだったわ」




「そうだよな...」




 本当にどこに行ったんだよ! あのバカ...。




「一つ聞いていいか?」




「ん?」




「エルミナが消えた理由はエルフが俺たちを襲ってきたのと関係しているのか?」




「...」




 そう言えばそうだった。まだ俺以外のみんなはエルミナの身分などを知らない。ここでエルミナが王女様でしたっていうべきか? エルミナは黙っていてほしいって言っていた。それを破っていいのか?




「知っているなら教えろよ! 俺たち仲間だろ?」




「それは...」




 ここで真実を伝えたらみんなが今以上の危険にさらしてしまう可能性が高くなる。それはエルミナが望んでいたことではないし、俺も望んでいない。でも俺だけで解決できるわけじゃないし...。




 俺が黙っているとノアが胸倉をつかんできた。




「お前は今の状況で話せないことでもあるのかよ! エルミナが危険だってことはここにいる全員が分かっている。そしたらわかっている情報を共有していち早くエルミナを探すのが最優先だろ!」




「そんなことはわかっているよ! でも...。」




「でもじゃねーんだよ。もしかして俺たちのことを気遣って言っていないわけじゃねーよな? もしそうならいいおせっかいだ。もう危険な状況に巻き込まれているんだ。それに仲間のために命を張るのは当たり前なんじゃねーのか?」




「あぁ」




「クリスはつえーよ。でもそれを一人で抱えることはないんじゃ―の? 少しは俺たちのことも頼れよ。そんなに頼りないか?」




「そんなわけじゃないよ」




「だったら」




 そうだよな。俺も仲間のためなら命を張れる。そんなこと当たり前だ。俺がそう言う考えになっているのにノアたちが俺と一緒の考えにならないわけがない。




 ノアに言われて、みんなに言う覚悟を決めた。




「エルミナは第三王女なんだ。今エルフの国では内戦が起きていて、それに巻き込まれている。だからエルミナは俺たちを巻き込まないように目の前から消えたんだと思う...」




 おれがみんなに言っている時、全員が真剣に聞いてくれていた。




「それでどうするよ?」




「どうするって...」




「エルミナを助けに行くんだろ? ここからどうする?」




「そうだよ! 早く行動したほうが言いに決まっているよ!」




「そうですよ。早く探しに行きましょう」




「あぁ」




 みんな一緒の意見になった。でも王宮にも行かなくちゃいけない。これはワック様に言えば延期してもらえるだろう。




「じゃあまずワック様に行って王宮に行くのを延期してもらうように言ってくる。みんなはアーサーさんを探して王宮行きが延期になったことを伝えてもらってもいいか?」




「「「了解!」」」




 お互い別々の行動をし始めた。俺はワック様に今の状況を伝えて王様と会う約束を延期してもらうように頼んだ。




(仲間を助けに行くためなら不敬罪になってもいい)




 するとすんなりと了承が出た。今はこんなことを考えてる場合じゃないため、お礼を言ってすぐ宿に戻る。すると宿のおばさんから話しかけられる。




「クリスさん。これ預かりものだから」




「は?」




「渡したからね」




 そう言って渡されたのは1通の手紙。




(もっと早く渡せよ!)




(クリス、それにみんな突然消えてしまいすみません。ですが私の私情で皆さんを危険な目に合わせるわけにはいきません。まず最初にエルフの国には来ないでください。私は国に帰るわけではなく、身を隠せるところに行きます。死にたくはないので。ですが皆さんとはここでお別れです。今までありがとうございました。そしてクリス、あなたと出会えて楽しかったわ。幸せな時間をくれてありがとう)




 手紙を読んで涙が出てきた。俺は...。俺はもしかしたら一番大切な人を失おうとしているのかもしれない。毎日エルミナがいたから楽しかった。でもエルミナがいない旅なんて考えられない。




(今になって気付くなんてな...。俺はエルミナのことが好きだ)




 近しいひとが離れてわかるって言うのがこういうこととは...。でも俺はあきらめない。エルミナから口で嫌いって言われるまではあきらめない。次会った時エルミナに告白しよう。そしてルビアにもこの気持ちを伝えよう。




 宿で待っているとみんなが戻ってきて




「アーサーさんにも伝えといたよ」




「ありがとう。みんなまずはこれを見てほしい」




 俺は先ほど渡された手紙をみんなに見せる。




「エルフの国にはいないってことだよな。それでエルミナが安全な場所。まずはそこから探そう」




「あぁ」




「そうだね」




「はい!」




 世間体なんて関係ない。エルミナや他の仲間がいればそれだけでいい。まずはエルミナを見つけることが最優先だ。




 そしてエルミナと次あったら告白しよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る