10話 エルミナ視点


 私を庇ってクリスが呪いにかけらてしまった。私の愚かさを悔やんだ。もっと早く行動していれば...。もっとわたしが強ければ...。それに少しでも早く気づければクリスがこんな状況にはならなかった。好きな人がこんなに苦しんでいるのを見ているのがこんなに辛いなんて。それも私を庇ったせいで苦しんでいる。




(何とかしなくちゃ)




 それしか考えられなかった。情報をいろいろ集めていると聖女なら助けられるとわかった。クリスの幼馴染...。隣の都市に聖女と勇者がいることが分かったため向かっているとクリスは私のことを心配してくれた。




「エルミナ大丈夫?」




「大丈夫よ。それよりもクリスの方こそ大丈夫?」




「俺は何とかなってる。毎日毎日つらそうにしているからさ」




「大丈夫。だからクリスは何も心配しないで」




「うん...」




 こんな時でさへ自分のことより私のことを心配してくれている。クリスは優しすぎる。だから私は好きになったんだ。そしてクリスを支えていきたいと思った。それなのに...。




(私のバカ...)




 アメリアさんを見つけてクリスを助けてもらった後、アメリアさんがクリスに文句を言っていた。私のせいなのに...。するとクリスが勇者に魔族と操られていないか尋ねていた。




 多分前に私が言ったこともあって聞いてくれているんだろうと思った。だけど本当に操られていて、すぐさま戦いが始まった。アーサーさんたちが助けに来てくれたから何とかなったけど、アーサーさんたちが助けに来なかったらクリスは死んでいたと思う。




 ここ最近私の無力さに嫌気が指してくる。いつもいつもクリスばかり負担をかけてしまって危ない目に合わせてしまう。




 そして今回の件で有名になってしまった私が狙われないわけがない。今まではあまり有名にならないようにしてきていたけど今回の件は人族の王族がかかわってくるため断ることができなかった。もう時間の問題だと思っていた。だからクリスにも相談した。クリスもちゃんと考えてくれていたけどここまで早く襲撃されるとは思っていなかった。




 私のせいでみんなを危険な目に合わせてしまっている。クリスは私の身分とかを知っているけどみんなは知らない。それなのにこんな目にあったらどう思う? 私ならエルミナは問題を抱えているがいるなと思う。




 今回はそこまで大きな襲撃じゃなかったからよかったけど、今後はどうなるかわからない。もしかしたら誰かが大怪我をしてしまうかもしれないし、最悪誰かが死んでしまうかもしれない。それにクリスは私の件がなくたっていつも危ない目にあっていた。それなのにここから私の私情でもっとクリスが危険な目に合うのは嫌。




(好きな人が死ぬのを見たくないよ...)




 だったら私がこのパーティから抜けたら少しは安全になると思う。そしたらクリスや他のみんなも少しは安全に生活ができる。本当はみんなともっといろいろなことがしたい。クリスにこの気持ちを伝えたい。そしてできたらクリスとの子供がほしい。




 思い浮かべるだけでかわいいだろうなと思う。私とクリスの子供なんだから強いだろうし、可愛いに決まっている。だけどこの願いはかなわない。もしかなってしまったらクリスは危険な目にあってしまうし、子供も危険な目にあってしまう。




 だからこのことは心の中に閉じ込めておこう。




 クリスやみんな宛てに宿のおばさんに1通の手紙を渡しておいた。




 これで追いかけてこなければいいけど...。もし...。もし追いかけて来てくれたら嬉しい。矛盾しているのはわかっている。だけど気持ちが整理できるわけない。




「クリス、そしてみんなバイバイ」




 私は早朝みんなが寝ている間にエミルークを出ていった。




 目的地は決まっている。情報がどの国でも入手できない国。そこに行こうと思う。そしてそこでひそかに暮らしていこう...。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る