20話 褒美
翌日になり、みんなと合流して宮殿に向かう。
「緊張するな!」
「そうですか? 何度か行っているのであまり緊張しないです」
「私は緊張するなー。クリスは?」
「ん? 俺も緊張するよ」
緊張はする。でもそれ以上に大ごとにならないことを考えていた。できればお金だけもらって終わりとかになってくれればうれしい。
「エルミナはどうですか?」
「私もあまり緊張しないかな?」
「緊張しない組はいいよなー」
「あはは...。まあ行ってみたら案外緊張しないかもよ」
なんやかんやみんなで話していたらあっという間に宮殿に着いた。エミルークの10分の1は使っているんじゃないかって思うほど庭が大きくて、宮殿自体も大きくてきれい。宮殿の前には池があり、宮殿は大きな窓ガラスに円状の屋根でできている。
(住む世界が違うって感じ...。平民の俺がここに入れるなんてな...)
中に入ると警備の騎士が何人もいて、メイドの人たちも数えきれないほどいた。
「当たり前なんですけど、私が住んでいるところより人を雇っていますね」
「そうか?」
(ルビアのところもそれなりに人がいたぞ? ルビア家も宮殿も雇っている人数が多すぎてわからん)
「そうですよ! メイドさんも一流ですし騎士の人も多分厳選されていますよ」
「それは公爵家も一緒じゃなくて?」
「そうでもありません。メイドさんはある一定のレベルがあれば入れますし、騎士の人も冒険者でBランク以上の人なら警備の人として雇えます。ですがここはそのワンランク上って感じがします」
「そっか...」
(騎士の人も俺たちと同レベルかそれ以上に強いんだろうな...。メイドの人だって貴族の人なんだろうな...)
宮殿内を10分ほど歩いたところでアーサーさんとハリソンさんにあう。
「おはよう。後少ししたらワック様に会ってもらうから粗相のないようにね」
「はい」
ワック様って名前なのか...。
数分待つとアーサーさんから入るように言われて全員で中に入る。中に入って思った。別世界だ。赤いじゅうたんにシャンデリアが数個あって、数十メートル離れたところに大きな椅子がありそこに人が座っている。
(あの人がワック様...)
中央付近まで行き腰を下ろして頭を下げる。そこでアーサーさんが俺たちのことを紹介してくれる。
「ワック様。この人たちが今回の件を解決してくれた人たちです。真ん中にいるものがリーダーのクリスです」
「そうか。クリスはどんな職業なんだ?」
「はい。預言者です」
「預言者...。底辺職業のか?」
「はい」
「そんな奴が今回解決してくれたと?」
ワック様の声のトーンが落ちた。するとアーサーさんが言う。
「そうです。クリスは底辺職業とは思えないほどの実力を持っています。王宮騎士とも引きをとらないほどには」
「そうか。まあアーサーがそう言うならそうなのだろう」
アーサーさんの弁解があったおかげでワック様が普通のトーンに戻る。
(圧がやばかった。あのままずっと続いていたら気が狂いそうだった)
「本題に入るが褒章は何がいい? 今回の件を黙っていてもらうためにもできる限りはしようと思うが」
なんでもいい...。だったら。
「ワック様が今後危ない時に後ろ盾してもらうことでいかがですか?」
「そんなことでいいのか?」
「はい」
「それはそなたの意見か? それともそなたのパーティ全員の意見か?」
「...」
俺の独断で言ってしまった。するとみんなは俺の方を向いてくれて頷いてくれる。みんなごめん。
「はい」
「わかった。では今後そなたたちが危険な状況になったら全面的に支援をしよう。だが毎回助けられるわけではない。それだけはわかってもらえるな?」
「はい。ありがとうございます」
「ではこの話は終わりということで勇者の件に入る。今の勇者は精神的ダメージが大きすぎる。外に出ることすらままならない。そのため今は休養をとってもらっている。だからもし勇者に今回の件を聞かれてしまったら黙秘をしてもらいたい」
「わかりました」
(そこまで酷かったなんて...)
話が終わり宮殿を出る。
「クリスくんたちはそんなことでよかったのかい?」
「まあクリスが決めたことだからな。今回クリスが居なかったら俺たちは死んでいた可能性もある。だからクリスが言ったらそれに従おうって話していたんです」
「そっか。まあみんなが納得しているならいいんだけどね。僕も一緒に王宮までは行くから今後も宜しくね」
「はい。それにしてもアーサーさんはなんで王族と話せるのですか? 普通王宮騎士でもここまでの人はあまりいませんよね?」
「...。僕は王宮騎士の騎士団長になると王様に言われてしまったからいろいろと権力っていうかお偉いさんと話す機会が多いんだよね」
「そうなんですね...」
そこまですごい人だったなんて。王宮騎士に入るだけでもエリートなのにその中でもエリートなんて...。
「じゃあ3日後に関所の前集合ってことで」
「「「「「はい」」」」」
そしてみんなと別れて部屋に戻ると師匠がやってくる。
「やあ。明日にでも最初の訓練をしようと思っているんだけどどうかな?」
(明日か。特に用事は無いよな)
「わかりました」
「うん。じゃあ頼んだよ」
「はい。よろしくお願いします」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます