9話 エルミナ視点2


 今回のクエストはワイバーン討伐。あの人にお礼を言いたかったからみんなと一緒にワイバーン討伐の途中にその場所へ向かう。私がみんなを誘導しているとクリスが疑問そうに聞いてくる。




「もしかしてエルミナってモンスターがいる位置とかわかってたりする?」




「え? わからないけど? でも感覚的にここら辺は危ないなって感じはわかるから」




「...」




「エルフっていうのは森で暮らすものだから風や草の動き、音、匂いなど感知できるすべてを使って警戒しながら動くのが普通なの」




「へー」




 いつも森にいた私にとってモンスターがいそうな場所はなんとなくわかる。それが普通だと思っていた。でもみんなは違うらしい。でもクリスもできているし私だけじゃない...。




 やっとその小屋に着く。中に入ると助けてくれた女性がいた。私がお互いのことを紹介するとクリスがなぜかその女性のことを知っていた。元守護人19なんて...。私を助けてくれた人がこんなすごい人だったんだ...。するとティーさんがクリスとノアに手合わせを申し込んでいた。




(少し見てみたい)




 そう思っていたら案の定2人と手合わせすることになった。今使われた魔法---テレポートだけで次元が違うことがわかった。私も魔法をかじっている身だからティーさんがとてつもなくすごい魔導士ってことがわかる。




 3人の戦いが始まると魔導士だけじゃなく剣士としてもすごいことがわかる。ノアを圧倒している剣術に加えてクリスの魔法をかわしている。




(どうやったらこの次元にいけるの?)




 ノアがグランドクロスを使ってやっとティーさんも魔法を使う。私でも使える初歩的な魔法の組み合わせでここまで威力が出るなんて...。その後はクリスが頑張ってティーさんの服に傷をつけていた。




 (私よりノアの方が強いけど、クリスは次元が違う。クリスの底が見えなかった。ティーさんと本気で戦っていたのはわかる。でもそれだけ...。私はクリスを目で追えなかったしどこで魔法を使ったかすらわからなかった)




 戦闘が終わるとクリスが倒れた。すぐに駆け付けようとしたらティーさんと何やら話していたので少し時間を置いた。話が終わってすぐ駆け付けて部屋まで運ぶ。




(無茶しないでよ...)







 ワイバーン討伐を一人でやった時とは違い、ほんの数分で終わってしまった。この時もティーさんとルビアの組み合わせ魔法を見れた...。




(これなら私にも...)




 そう思いながらティーさんの家に戻るとクリスがティーさんに弟子の誘いを受けていた。




(え? もしかしてここで冒険が終わり?)




 そんなの嫌だよ! やっと...。やっとクリスと仲良くなれてもっと知りたいって思ってきたのに...。いてもたってもいられなくて聞いてしまう。




「クリスは弟子になるの?」




「そうしたよ」




(え? じゃあもう...)




「じゃあもう一緒に冒険できないの?」




「師匠がテレポートで俺のところまで来てくれることになったよ。だから一緒に冒険はできるよ」




「は~。よかった...」




「心配かけてごめん」




「ううん」




 よかった...。でもなんでクリスが抜けるだけでこんなに不安になるの? 多分ルビアやノアが抜けてもこんな気持ちにはならないと思う。




(私もしかしてクリスのことが恋愛の意味で好き?)




「...」




 このことが頭の中から離れなかった...。




 ☆




 ティーさんと別れてギルドに向かう。受付嬢にクエスト完了を言うとDランクにみんな上がっていた。するとティーさんがやってきて突然Cランク試験を受けることになった。




(でも今の私たちなら何とかなると思う)




 案の定クリスの圧倒的な力とルビアの援護魔法、そして私の攻撃魔法ですぐ試験が終わりCランクに上がった。




 するとクリスがオージラから出ようと言ってきた。別に私はいい。でもルビアは...。やっぱりお互いの意見を言い合っていて話が収まらない。結局はクリスがパーティリーダーのためルビアもその場では納得してはいた。




 私だって故郷からすぐに出るよって言われたら困る。でもクリスの意見も納得できる。ルビアが宿に戻ってしまったため私も追いかけた。




「ルビアはどうしたいの?」




「私は...。わからない。でもみんなと冒険したいよ...」




「多分それはみんな一緒だと思うよ。でもルビアが考えていることはだれしも通った道だと思うよ。私もクリスも家から出たし、ノアなんて家から追放だよ? ちょっと気持ちを整理する時間は短いかもだけど、みんな通ることだしさ。もしまだオージラから出るのが嫌だったら時間をおいてからまたパーティに戻って来てもいいんじゃない」




「うん...」




 私の気持ちを伝えて少し気分を変えるためにルビアと散歩する。1時間ぐらいたったところでクリスと会い集合をかけられた。




(なんだろう...)




 集合場所に行くとパーティ全員がいたのでクリスに聞く。




「それでいきなり呼ばれたけどどうしたの?」




「あぁ。俺の本音をみんなに伝えようと思ってさ」




「本音?」




「ルビア。さっきはごめん。マックスさんの負担になるって言ったのは嘘じゃない。でもそれは建前なんだ。本当はみんなといろいろな世界を見て回りたい。それだけなんだ」




「...」




「だから一緒に楽しい冒険生活を送らないか? 俺はこのメンバーの誰か一人でもかけたらいけない。そう思っている」




 やっぱりね...。みんなそう考えるよね。私だってそうだもん。その答えにルビアも答える。




「うん。最初は戸惑っていたけど私も子供じゃないです。クリスの建前で納得しちゃっていた私もいました。それに私も皆さんと一緒にいろいろなことを見たいです。だから一緒にオージラを出ましょう」




「あぁ。よかった」




 そうしてみんなと一緒に冒険できるようになった。まだ私はパーティで何かしら一つに突出したものを持っていない。




(でもこの練習をしたら...)




 それともう一つ。






「いつクリスにこの気持ちを伝えよう...?」

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