11話 オージラを出るために
「なんでオージラからでるの...?」
「まずCランクに上がったことでクエスト選択の幅が広がったから次の都市に行ってもいいと思ったこと。そしてオージラにいたら絶対にマックスさんに頼ってしまうと思う。だから出る決断をしたんだ」
「でも!」
「ルビア、冒険者のランクが上がるのは早かったと思う。だけどランク的にはもう新米冒険者じゃないんだよ。だからマックスさんにおんぶにだっこで助けてもらうわけにはいかない」
「...」
オージラにこのままいてもAランクまでは上がれるだろう。でもそれじゃダメだ。俺たちがピンチの時いつもマックスさんが助けてくれたら、俺たちは心のどこかでマックスさんを頼ることになってしまう。ルビアならいいさ。マックスさんの子供だからね。でも俺たちはそうじゃない。ルビアが一緒のパーティだからってマックスさんの優しさに付け込んでいいわけではない。
「わかった...。でもパパにオージラを出る前に挨拶はしたい...」
「もちろんだよ」
「うん...」
話が終わるとルビアだけ宿に一人で帰った。
「相当困っていたけどいいの? 私はまだオージラにいてもいいと思っているけど」
「俺も」
「それじゃダメなんだ。ルビアはマックスさんに助けてもらうのは当たり前だけど、俺たちはどうなる? ルビアのパーティメンバーだからってマックスさんにずっと助けてもらうのか?」
「それは...」
普通誰の親でも子供と一緒にパーティを組んでいる人が困っていたら助けたくなる。それにもし自分で助けようとしなくても子供が助けを求めてくる可能性もある。その時子供のお願いを断れるか?
「明後日には出ようと思うけどいいかな?」
「うん」
「あぁ」
「じゃあ私からルビアにも伝えとくね」
「助かる」
みんなと話し終わったところで全員一旦解散をする。俺も宿に戻りノエルを呼ぶ。
{困っているみたいね}
{うん。このままこのオージラを出てもいいか迷っている}
{それは良いと思うわよ。このままオージラにいても楽しい未来なんて待っていないもの}
{そっか...}
ノエルがそう言うのだからそうなのだろう。でも...。
{クリスは何がしたいの?}
{俺はこのパーティメンバー全員でいろいろなところを回りたい}
{じゃあもう結論は出ているじゃない}
ノエルに言われて決心がつく。そうだ。俺はみんなといろいろなところが見たいんだ。だからオージラを出ようと思った。マックスさんに頼り切ってしまうのが悪いとは思っている。でもそれはただの建前。まずは本音をみんなに伝えよう!
{そうだよな}
{決心がついたみたいね。それと未来を伝えるのはいいけど、すべては教えないわよ}
{ありがとう。なんで?}
{クリスの邪魔をしてしまうからよ。私が未来を毎回教えていたら私の未来でもあってしまう。だから極力は自分で考えて行動してね}
そうだよな...。毎回毎回ノエルに聞くとノエルの負担にもなるし、自分の選択で決めているわけじゃない。すると俺の未来ではなく、ノエルが示した未来になるためノエルの未来になってしまう。
{わかった}
{じゃあね}
まずみんなに話に行こう。俺はそう思いみんなのところに行く。エルミナとルビアはいつも通り2人で行動していたためすぐに見つけた。ノアは部屋で昼寝をしていると思ったら案の定そうだった。
「それでいきなり呼ばれたけどどうしたの?」
「あぁ。俺の本音をみんなに伝えようと思ってさ」
「本音?」
「ルビア。さっきはごめん。マックスさんの負担になるって言ったのは嘘じゃない。でもそれは建前なんだ。本当はみんなといろいろな世界を見て回りたい。それだけなんだ」
「...」
「だから一緒に楽しい冒険生活を送らないか? 俺はこのメンバーの誰か一人でもかけたらいけない。そう思っている」
するとルビアが俺の事をやっと見て答える。
「うん。最初は戸惑っていたけど私も子供じゃないです。クリスの建前で納得しちゃっていた私もいました。それに私も皆さんと一緒にいろいろなことを見たいです。だから一緒にオージラを出ましょう」
「あぁ。よかった」
ここでルビアに断られたらどうしようかと思っていた。でもこれは決断しなくちゃいけない大切な場面。ちゃんとみんなと話して決断をしたいと思った。
「じゃあ明後日オージラを出るってことでいいのね!」
「あぁ」
「私もクリスと一緒でみんなといろいろなところを見て回りたかったからね!」
「俺もだよ。だからこの決断はよかったと思うぞ」
「あぁ。ありがとう」
みんなと話し合ってお互いが理解した上の決断だったため気持ちがスッと楽になった。
そして2日後。ロドリゲス家に行き、マックスさんに挨拶をする。
「今日でオージラを出ます。今までありがとうございました。何か困った時があれば次の都市---エミルークの冒険者ギルドに連絡をください」
「あぁ。行ってらっしゃい。ルビアも気を付けるんだよ」
「はい!」
お別れの挨拶をしたのでエミルークに向かった。でもその時はノエルもクリスの未来がどうなるかわからなかった。
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