第5話 とある戦場にまつわる話



 とある道化と、とある戦姫は、とある戦場であった。


 彼らは同じ物を見て、同じ答えを出していた。


 争いは醜い。

 人は醜い。


 二人は互いに手をとりあった。


 けれど、向いた方向はそれぞれ違う。


「だから、もっとかきまわそう」


 道化は人の愚かさを信じた。


「だから、ここでもう止めよう」


 戦姫は人の賢さを信じた。


 二人は理解ある敵を得て、再び立ち上がる。


 それは答えのない戦場で、戦うべき明確な相手をみつけた瞬間だった。


 二人はそれぞれ東と西にわかれて、己が信じた道を歩み始める。


 その結末は、残念ながら歴史書の中には書かれていない。


 けれど歴史は続いている。

 今日のこの日まで、歴史をつづる者も、歴史に目を通す者も、生きている。



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とある道化と戦姫 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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