第2話 出所
昭和五五年三月
「
「お世話になりました」
小太りの男が、
茂倉野
「ご無沙汰しております。茂倉野 八反です」
物音一つしないドアにむかい八反は挨拶をした。返答はない。
「ただいま、戻りました。もぐらの はったんです」
「・・・」
やはり中から返事はない。八反は顔を上げ電気のメーターを確認した。止まっているようだ。「誰もいないのか」と八反は廊下の壁に背をもたせかけ上着のポケットからタバコを取りだし、マッチを擦った。そのときポケットに鍵があることに気づいた。
「あっ、鍵持ってたわ」
八反は自分がかつてここを自宅兼事務所にして一人で住んでいたことを思い出した。挨拶しても無駄である。当時も今もここには八反しかいない。
八反は鍵を開け七年ぶりにそのドアを開けた。
(つづく)
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