第17話

「俺、告白することにした」

「急にどうした」


 今は休み時間、陽一の席に行くといきなりそう話し出した。

「これ以上海と葉山さんに迷惑かけるわけにはいかないからな」

「別に迷惑とは俺も葉山も思ってないけど……」


 あれから数日、陽一なりの答えを出してみたらしい。

「そりゃOKもらえたら嬉しいけど、確実にもらえるって訳ではないだろ?」

「ま、まあそうだな」

 多分もらえるだろうけどな。

「振られるんだったら早めに振られて、最悪昔の関係ぐらいには戻りたい」


 半分諦めているような目をしている陽一。

「陽一、一つ教えてやる」

「ん?何だ」  

「何もかもが元通りに戻ると思うな。やると決めたなら全力を尽くせ。中途半端な気持ちが嫌いなお前なら分かるだろ?」

「海……」

「最終的な事はお前と春風さんの事だから俺はもう何も言わない。失恋会なら開いてやる」

「さ、さすがにまだ失恋会の事はいいだろ……」

「お前と春風さんの事が好きだった奴の分も背負って頑張ってこい」


 余計なお節介だとは分かっている。綺麗事ということも分かっている。上手くいくことも分かっている。何故ならば二人が両想いということを知っているからだ。


 だがその想いは、何人もの犠牲の上に成り立っているということを頭の片隅にでも置いておいてほしい。


 俺の頭には一人の生徒の顔が過ったが、それを打ち消すように頭をふり、自分の席に戻った。




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「な、何て書けば良いんだ?」

「さあ?書いたことないから」

 今は昼休み、昼飯も食べてしまって今は春風さん宛に手紙を書いている。


「ストレートに校舎裏に来てくださいとかで良いのか?」

「だって葉山」

「え?!私ですか?!……そうですね~、多分大丈夫なんじゃないですか?」

「そ、そうだよな」


 葉山からもらった時もそんな感じだった気がする。案外ストレートに書いた方が分かりやすいかもな。


「じ、じゃあ今の内に入れてくる」

「おう、周りに見られないようにな」

 そう言って教室を出ていく陽一。あの元気が続くと良いけど。

「今日また一組のカップルが出来ますね」

「そうだな。結末を知っている俺達は楽だけどな」

「ふふ、そうですね。どうしますか?見に行きますか?」

「陽一に聞いてみないと分からないな」


 その後帰ってきた陽一に許可をもらい、放課後まで待つことにした。




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「あっ、来ましたね」

「そうだな」


 放課後、校舎裏に集まった俺達は、春風さんが来るのを待っていた。

 陽一の顔は緊張に染まり、春風さんの顔は嬉しさからか若干にやけている。春風さん!もう少し抑えて!


「よ、呼び足したのって陽一?」

「あ、ああ。時間取って悪いな」

「いいよ、気にしないで」

 少しの間があったが覚悟を決めた様子の陽一。


「す、好きです!付き合ってください!」

 頭を下げ、手を差し出す陽一。

「はい!お願いします!」

 それに元気に応える春風さん。

 知っていたはずなのに少し緊張してしまい、安堵している自分がいる。


 陽一は未だに信じていないのか一人呆然としている。

 葉山の方を見て確認して、一斉に俺達は二人のところに駆け寄る。

「「おめでとう!」」

「うわっ!」

「えっ!」

 いきなり現れた俺達に二人はビックリしている。おい陽一、お前は知ってただろ。


 俺達は今までの経緯を二人に話すことにした。




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「ぜ、全部知ってたってこと?!」

「何だよ俺達は二人の手のひらの上だったっていうことかよ!」


 話したことは二人が両想いだったということを知っていたことなどを話した。

「じゃあさっきの告白も上手くいくって知ってたってことか?」

「ああ、知ってたけど、何故か緊張してた」

「海君もですか?私も結末を知ってたはずなのに緊張してしまいました」

 どうやら葉山も同じで緊張していたらしい。


「何はともあれ二人ともおめでとう」

「澤井さん、アキちゃんをよろしくお願いしますね?」

「あ、ああ。俺が幸せにする!」

「落ち着け陽一。今にも春風さんがパンクしそうだから」

「初々しいですね、海君」

「そうだな」

「この二人なら大丈夫ですよね?」

「ああ、大丈夫だろ。長い間築いてきた壁は二人で徐々に解していけば良い」


 この後俺達は二人を祝うために、近くのファミレスで食事をするのだった。

 

 


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