第14話

「俺はもう駄目かもしれない」

「どうしたいきなり」

「ど、どうしましたか澤井さん?」

 放課後教室で三人で集まると陽一がいきなりそう話し出した。


「亜希に話しかけると、直ぐに逃げていくんだよ。俺、嫌われてんのかな~」

 不安そうにそう言う陽一。

「海君」

「ん?どうした葉山」

「こう、本当の事を知っているともどかしいですね」

「確かにそうだな」


 だが春風さんの想いは言わないと俺たちは決めた。どう伝えたものか。

「諦めずに話しかけてみろよ。多分嫌われてはいないと思うし」

「な、なにか根拠でもあるのか?」

「……頑張れ」

「な、何もねぇのかよ!」


 絶望していても変わらないんだよ。

「お、幼馴染みということなんですし、一緒に出掛けるというのはどうでしょうか」

「お、それは良いな。やってみたら陽一」

「今まで話してきてない奴にいきなり誘われても嫌だと思うけど……」

「そう言われれば確かに……」

「ど、どうしましょう海君」

「うーん」

 一分ほど考え出た結論は。

「陽一、一回帰れ」




____________________________________________




 宣言した通り陽一を帰し、今は俺と葉山が教室に残っている。もちろんやることは一つ。

「さて作戦会議といこう」

「そうですね!」


 葉山もやる気に満ちあふれている。空回りしなければ良いが……。

「まず状況を把握しよう。二人は両想いってことで良いよな?」

「はい、そこは間違いないと思います」

「昔から関わりが多く、所謂幼馴染みという関係だったが、最近は疎遠になっている」

「ですが最近ようやく相手に好意を持っていることに気づき奮闘している、といったところですかね」

「まあこんな感じで良いんじゃないか。そして二人の想いは相手に伝えないということも追加しておこう」


 今の状況はこんなところだろう。やはり関係というのは長い時間になればなるほど曖昧になってしまうというのを、再確認した。

 誰かが決めつけるものでもないため、当事者同士で解決しない限り、こっちがもやもやしてくる。


「今日アキちゃんも澤井さんへの対応について私に話してきました」

「何て言ってた?春風さん」

「『好きだと認識してからまともに顔を見れない~!』って言ってました」

「春風さんもだったか……」

「けどアキちゃんの気持ちが分かります」

「どうしてだ?」

「私もずっと好きだったので」


 今も好きですけどと、笑顔で告げる葉山。いきなりはやめてほしい。陽一と春風さんの話だったからそう言うことを言われるとは思わなかった。まあ準備していたとしても、顔が赤くなるのは不可避なのだが。


「は、話しを戻そう」

「そうですね。これ以上喋ればオーバーヒートしそうなので」

「……お気遣いどうも」

「いえいえ!」


 皮肉だったのだがスルーされてしまった。

 それから話し合いは、下校のチャイムがなるまで続けられた。

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