閑話
俺は昔からどうにも人付き合いが苦手で、孤立していた。
愛想笑いの一つや二つすれば友達くらい直ぐに出来るだろうが、その行動をする意味を俺は何も感じなかった。
休み時間は寝たふりをし、授業でペアを組むときは必ず俺だけは先生とやるようになっていた。今となっては随分おかしな小学校生活だったが、あの当時ではその光景が当たり前になっていた。
だが、そんな俺にも一人の友達が出来た。
誰にでも優しく、平等で、完璧すぎる人物だった。当然俺と違い友達も多く、ずっと一緒にいたわけではないが、その時の俺にとっては、物凄く嬉しい出来事だった。
でも、どんなに完璧だと思っても、所詮小学生。残酷なことを平気でする。
誰にでも優しいのは表の顔。裏では気に入らない奴らを数人でいじめていた。
俺は怖くなった。次は俺かもしれない、歯向かってしまえば、前よりもひどい生活を送ることになるかもしれない。
そんな考えが過ってしまい、俺はいじめられていた生徒を助けられなかった。
その時から俺はもう完全に人とは上手く関われないと察していたのかもしれない。
そいつの笑顔が全て偽物にしか見えなくなり、最終的には全員の事が信じられなくなった。関係ないはずの先生でさえも。
そしてある日、先生から一つの事が告げられた。クラスの一人が転校することになった、というものだ。
その人物が俺に関係がなければ良かったのかもしれない。だが、あの日してしまった罰はそう簡単に消えないのかもしれない。
転校したのは、あの日いじめられていた生徒だった。
誰も悲しむことはなく、数人に至っては、嬉しそうな、気味の悪い笑顔を浮かべていた。
そして次にいじめられたのは俺だった。
靴をゴミ箱に捨てられ、学校で使うものは壊され、誰も俺に近づかなくなった。
放課後、教室に呼ばれ行ってみると、そこにはたった一人の友達であった男がいた。
そいつは俺に向かって当たり前のように告げた。『お前と友達になったつもりはない』『お前みたいな気持ち悪い奴は早く転校しろ』『顔もみたくない』と、色々な暴言を吐いてきた。
その時、俺の中で何かが崩れる音がした。気づいた時には男子生徒たちは全員倒れていて、激しい音に気づいたのか数人の先生が集まっていた。
俺も転校をする覚悟でいたが、俺のいじめに気づいていた先生たちは、俺ではなくいじめていた数人を罰した。
数人は転校し、残った人達は不登校になった。
それからは何事もなく学校生活を送った。
自分で思っている以上に傷ついていて、二度と人と関わる気は起きなかった。
俺が傷ついた理由は、無駄な感情を抱いてしまったからだ。
最初から友達なんて感情を抱かなかったら、こうはならなかったのかもしれない。
最初から期待なんてしなければ。
もしかしたら俺は気づいているのかもしれない。諦めきれていないのは、北条ではなく、俺の方何じゃないかと。
今は陽一という本当の親友と、出来るとは思っていなかった彼女の、葉山もいる。
この二人を大事にしていきたい。
もう二度とあんなことが起きないように。
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