第8話
「……」
「海、どうした?ボーッとして」
「ん?何でもない」
次の日学校に来て早々、昨日の山田先輩の事を考えていた。
昨日忠告はしておいたが、あの言動からみるに、諦めたわけではないだろう。
山田先輩なりに考えがあるのかもしれない。
……陽一にも喋っておくか。
「陽一、昨日の話なんだけど……」
「山田先輩に捕まった話しか?」
「そうそう。……何で知ってんの?!」
「昨日帰ろうとしたとき、葉山さんにお前が用事があることを聞いてもしかしたらと思って校舎裏に行ってみると、というわけだ」
「そういうことかよ……」
葉山は俺の言った通り、陽一に話してから帰ったらしい。
「まあ少し聞いていたけど、ちょっと面倒くさいことになりそうだな」
「まあな。そうじゃなきゃある意味有名にはならないだろうな」
まあそのうち解決するだろうと思い、俺は葉山のクラスに向かった。
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「海君、私は怒っています!」
「えぇ……。何で?」
葉山のところまで歩いていくと、話しかけてそうそう、ほっぺたを膨らまして起こっていた。可愛いだけで怒っているようには見えないのは内緒だ。
俺は葉山のほっぺたを指で優しく押し、空気を抜く。葉山の口からプシューと可愛らしい音と共に、どんどん顔が赤くなっていく。
「か、海君が自分から私に触ってきました!」
「えっ、ご、ごめん……」
「お、怒っていないです!むしろ嬉しいくらいです!」
「そ、そうなの?」
葉山の嬉しいの基準がわからない。女心というものは男子には到底理解しづらいのかもしれない。
「これからもどんどんスキンシップ、してきてくださいね!」
「それ毎回言ってるけど嬉しいの?」
「好きな人に触られて嬉しくない人なんてこの世にいませんよ!」
「そういうところずるいよなぁ……」
「?」
本人が自覚していないのが何とももどかしい。
「と、話が逸れてしまいました。私は怒っています!」
「何で?」
「当ててみてください」
「うーん。……ごめんギブ」
葉山はやれやれと肩を竦めた。美少女はどの仕草も似合うから困ったものだ。
「き、の、う!私に何も言わないであの変態のところに行ってましたよね!」
「さらっと先輩を変態呼びしたな」
葉山は俺の物言いを無視し、話を続ける。
「私の事でもあるんです。私だけのけ者にはしないでください」
「葉山が傷ついたらいけないから」
「その気遣いは嬉しいですが、それは私も同じです」
「けど……」
歯切れ悪く喋ると葉山は俺のほっぺたを横に引っ張る。葉山との距離が近いせいで、俺の心臓が暴れている。
「良いですか、今度からは私にも言うこと!良いですね!」
「で、でも……」
「い、い、で、す、ね!」
「ふぁ、ふぁい」
満足したのか、ほっぺたから手を離し自分の席に戻る。
「けど、ありがとうございます。私の事を気遣ってくれたんですよね」
「ま、まあ」
「けど、今度からは言ってくださいね!
約束ですよ!」
その笑顔に思わず目を反らしてしまう。
どうやら彼女には到底敵わないらしい。
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