第7話

「助かりました。ありがとうございます」

 葉山を迎えに行った後、中庭にやって来た俺たちは、昼飯を食べ、今はくつろいでいるところだ。


 ちなみに今、葉山は俺の手をにぎにぎしている。何故かというと、昼飯を食べているとき、

『後で手を握っても良いですか?』

と、上目遣いで聞かれた。これで断れる奴は人間じゃないと思う。


「……目の前でイチャイチャしているのはおいといて。葉山さんは何かされた?」

「いえ、特には。昼休みになり合流しようと席を立ってドアの方を見るといました」

「確信犯じゃねぇか……」


 怒りを通り越して呆れてくる。一度振られたなら諦めて違う恋を探せば良いのに。

 執着心の塊みたいな奴だな。

「今のところは直接的な被害はなし、か。まだ良い方かもな」

「葉山はあの先輩に何かされたら直ぐに、俺か陽一に言ってくれ。こっちでも色々対策はとっておくから」

「ありがとうございます。クラスの人も気に掛けてくれているので私自身も気を付けます」

 一通り確認した後は、各々クラスに戻ることにした。




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「ん?何だこれ?」

 今は放課後、俺は葉山と帰るため下駄箱を開けると、手紙が入っていた。


「?どうかしましたか?」

「あー葉山、先に帰っていてくれ。もし陽一がいるなら一緒に帰っても良いし」

「何かご予定が?」

「ちょっと野暮用が出来て」


 俺は葉山に許可を取り、一度教室に向かう。

 自分のクラスに着いて、手紙の中身を確認する。まさかモテ期が来たかと思ったがどうやら

違うらしい。


 中身は校舎裏に来いと、汚い字で書かれていた。そういえば前もこんなことがあったな。

 今は葉山との出会いを思い出している暇はない。

 俺は直ぐに校舎裏に向かうことにした。




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「来たか……」

「……あんただろうと思ったよ、山田先輩」

 そこにいたのは俺が予想した通りの相手、

そして問題の相手でもある山田先輩であった。


「で、用件は何ですか?俺にも予定があるんで早めに言ってください」

「そうだな、単刀直入に言おう。葉山さんと別れてほしい。あの様子だと付き合っているのは本当なんだろう?」

「付き合っているのは本当だし、別れる気なんてないですよ」

「彼女みたいな美少女には僕みたいな完璧な

人間がお似合いなんだ。君みたいな凡人が付き合って良い人物ではない。身の程を弁えろ」

「さっきから何を言ってるんですか」

「何?」

「別れる気もなければあんたに決められる事でもないんだよ。どんだけナルシストなんだよ……」

「な、ナルシストだと?!僕は自分の容姿を見て」

「自分の価値は自分じゃわかんないんだよ。十八年も生きてきてそんなこともわからねぇのかよ」

「そ、それは」

 弱っているな。今がチャンスだな。

「あんたがどんだけ俺に迷惑を掛けてもいい。けどな、陽一と葉山に迷惑を掛けてみろ。無事ですむと思うなよ」


 そう告げて思い切り睨む。これには山田先輩も怖じ気づいている。

「ふ、ふん!僕に歯向かって普通に暮らせると思うなよ!」


 山田先輩は、走って帰っていった。

 平穏に過ごしたいのは当たり前。何事もなく解決するに越したことはない。

 だけどそれでもあの先輩は止めないだろう。

 今後も警戒していこうと決めて、俺も帰ることにした。

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