第4話
「は、葉山?」
男子全員が声の方向を向くと、当事者の一人、葉山菫がいた。
助かったと思うのも束の間、普段普通に男子と話しているのは俺ぐらいな訳で。
めちゃくちゃ機嫌が悪い。だが、馬鹿な男子はそんなのはお構いなしに質問していく。
「は、葉山さん!佐伯とはどんな関係?!」
「あなたに言う必要はありません」
「ほ、本当に付き合っているの?」
「あなたに関係ありますか?」
おおー、バッサリ質問を斬っていくな。
葉山は止まることなく俺のところに向かっている。
「海君行きましょう」
「お、おう」
返事をして立ち、すぐに腕を引っ張られる。
後ろから色々聞こえてくるが、葉山が止まるはずはなく、昼飯を食べに中庭に向かうのだった。
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「ここら辺で食べましょう」
中庭にはいくつかベンチがあるので、日陰になっているところに座る。人はまばらにいる程度で、昼飯を食べるにはちょうど良いだろう。
「さっきのあれはなんだったんですか?」
と、不満げに言う葉山。どう言えば良いのだろうか。
「いや葉山って学校でも有名美少女だろ?だからあのクラスには葉山に好意を寄せている人も少なくないんだよ」
「ですが私は海君にしか興味はないので」
照れた様子もなくさも当たり前のように言った葉山だが、俺には大ダメージ。顔が熱くなる感覚が分かる。
俺は気付かれないように顔をそらしながら、
気になっていたことを聞く。
「何で葉山はそんなに男子が嫌いなんだ?」
人間少なからず嫌いな人の一人や二人はいるだろう。だが、人付き合いのためには嫌悪感を顔には出さず、付き合っていく必要もある。
ましてや葉山みたいな完璧超人ならそんなことは簡単だろう。現に俺でさえも出来ることだからだ。
だが葉山は、男子を見るとあからさまに嫌悪感を出し、一切関わろうとしない。
過去になにかあったのだろうか。
「……昔から私に近付いてくる人は、私の体目当てだったりして、そういう視線も何回も浴びせられてきました。今はそこまで気になりはしないんですけど、昔の私はメンタルが弱かったので辛かったです」
昔の事ですけどね、と葉山は静かに笑う。
俺にしかわからない事もあれば、葉山にしかわからない事もある。今は大丈夫みたいだが、
当時の葉山にはトラウマだったのだろう。
「葉山ごめんな」
「ん?何がですか?」
「俺はまだ何も葉山の事を知らない。俺が疑問に思っていたことは、葉山にとっては辛いことだったんだな」
「そう、ですね。辛いか辛くないかと言えば辛かったですね」
俺は葉山の頭を撫でながら言う。
「だからこれから色々な葉山を見て、色々な葉山を知ろうと思う」
「海君……」
俺は撫でるのをやめて飯を取り出す。
「もう少しで昼休みが終わっちゃう!さっさと食べよう」
「は、はい!」
顔を真っ赤にして、返事をする葉山。
一つ一つで良いから葉山の事を知ろうと思った日であった。
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「海君、さっきみたいにどんどん頭、撫でて
くださいね?」
「い、いやあれはなんというか」
「ふふっ、知りません!」
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