第3話
今は登校中。人生初めての女子との登校という事もあり、色々な意味でドキドキしている。
「なあ葉山、俺と付き合ってる事にしていいのか?」
「どうしてですか?」
「いや何か言われない?何であんな奴と付き合ってるんだーって」
「……あんな奴だなんて言わないでください、そんなことを言う人とは関わりません」
でもなー相手が相手だしなぁ、俺が何らかの形で(良い方で)有名なら良いのかもしれないが特にこれといって突出することもないし。
「海君は気にしすぎです。私は評判など気にしていません」
「そ、それなら良いけど」
まあ本人がこう言っているんだし、今は気にしないようにしよう。
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校舎に近付くにつれ、学生は多くなってくる。すなわち俺たちの事を見てくる人も増えてくる。
「えっあの葉山さんが男の人と……」
「誰あの人?見たことないんだけど」
ちょくちょく俺のことディスるのやめて?
ダメージ蓄積されてるから。
葉山はこういう視線に慣れているのか、特に気にした様子もない。
いや、何か少しずつ不機嫌になっているような……。
「……あの人達に一言言ってきます」
「ちょっ、葉山?!落ち着いて」
「海君の悪口を聞いて黙っていられるほど、私も優等生じゃありません」
相当怒っている。ここで気にしないでと言っても、葉山は止まらないだろう。どうしたものか……。
「俺は葉山の怒っている顔より笑ってる顔の方が好きだな」
「っ?!ほ、本当ですか?」
「うん、本当。だから怒るのはやめて笑っていてよ」
俺はそう言い、葉山のほっぺたを触る。
物凄く柔らかく、永遠に触っていられるような触り心地だが、葉山は顔を赤くして走って行ってしまった。
き、気持ち悪かった?!嫌われたかも!
よくよく考えれば、ナチュラルにほっぺたを触っているし嫌われる要素は満載だ。
俺はその事ばかりを考えてしまい、午前中の授業は、全く頭に入らなかった。
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「おい佐伯!朝のあれどういうことだよ!」
「何でお前が男嫌いの葉山さんと一緒に登校してんだよ!」
「そしてナチュラルにイチャイチャしてんじゃねぇ!羨ましいだろ!」
休み時間の度にトイレに籠っていたので、昼休みになった直前に怒涛の質問ラッシュを受けている。
「待て待てお前ら、一旦落ち着け」
すかさず陽一が助け船を出してくれる。
「俺も気になる。一人ずつ質問していこう」
ですよねー、お前もそっちサイドですよねー知ってた知ってた。
俺は陽一を睨むとニヤリと陽一は笑った。
こいつの何でも知っているような笑みが俺は昔から苦手だった。
陽一が相手に回ってしまったら俺の勝ち目はない。……早めに対策をとらないと。
「じゃあ最初は、葉山さんとどういう関係
なんだ?」
「昨日から付き合ってるよ」
俺の返答に男子は大層ショックを受けている。ショックすぎて血の涙を流している。
「……これで良い?俺飯食いたいんだけど」
「嫌、まだまだ聞きたいことはある。今日は逃がさないぜ」
こういうときだけ団結力が増すのはやめて欲しい。逃がす気がないのか俺の回りを囲っている。今日の飯は諦めるか……。
だがその考えは、一人の声によって救い出される。
「……避けてもらえますか」
低く冷たい声にその場にいる男子が、震え出す。ゆっくり声の方向を向くとそこには、
「は、葉山?」
今俺が一番会いたい人物。俺ともう一人の当事者の葉山がいた。
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