第2話

「……まじで?」

「は、はい」


 今は放課後、他の生徒は部活やら帰宅やらで

校舎裏は静かだ。

 初めての告白イベントが学年一の美少女ということに驚きを隠せていないが、何とか続けないと。

「俺と葉山って接点あったっけ?」 

「……ないです」

「そうだよなぁ」

 人を好きになるのに理屈や理由は必要ないと言うが今回に関してはそれでは納得いかない。

 相手が相手だし。こんなことならあのイケメンに聞いておけばよかった!


「そ、それで答えはどうなんでしょうか」

 答えを迫られてしまった。どうしよう別に嫌いではないし、むしろ好きな方だし断る理由はない。

「お、俺でよければ」

 もう少しかっこよく返せないものかと自分に幻滅したが、葉山はそれだけで良かったらしく、満面の笑みだった。いつもそんな風に笑っていればと思ったが心の奥にしまいこんだ。




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 その後連絡先やらを交換し、今は家にいる。

 スマホには通知がきており、開くと葉山から連絡が来ていた。

菫『よろしくお願いします』

 少しお堅い気もするが返信しておこう。

海『よろしく』

 こんなもので良いだろう。俺はスマホを持ち自室に向かう。


 初めての女子との連絡がこんなに早く訪れるとは思わなかった。

 そもそも女子との関わりがなかったせいか、

中学の時に親に一度も恋愛の話を振られなかったという記憶がある。


 明日からどうすれば良いのだろう。

 そんなことを考えている内にだんだん睡魔が襲ってきたので、寝ることにした。




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「海!起きて!お客さんよ!」

 朝、いきなり下の階から母親の声がする。


 軽く返事をし、直ぐに身支度を整えて下に行くと、

「海。あんたにあんな知り合いいたの?」

「知り合い?」

 俺はいつも一人で学校に行っているので、迎えに来る人もいない。

 陽一も友達とやらと行くらしいので、一緒には行っていない。

 俺は荷物を持ち、玄関に行く。


……葉山だったりして。そんなわけ無いか。家の場所も教えていないし。

 と、少しの期待やら不安やらで頭が一杯になりながら外に出る。

「お、おはようございます!む、迎えにきちゃいました」

「は、葉山?」

……神様は俺の事が大層嫌いらしい。

 二日連続で試練を与えてきやがった。

 外にいたのは、まさかの葉山だった。

 昨日と同じで、普段男子には見せない笑顔と、頬が紅潮している。


 朝から俺は大ダメージを与えられたが、冷静になる。

「俺、葉山に家教えたっけ?」

「海君の友達に澤井くんいませんか?」

「ああ、陽一ね」

「はい。澤井さんに海君の家の場所をお聞きしたんです」

「そ、そうだったのか」

 事の発端は陽一だったらしい。

「けど、陽一に疑われなかったのか?何であいつの場所をって」

「はい。私もその可能性を危惧したのですが、『ああ、そういうことね』と言われただけでした」

「うーん。どうしてだろう?」

「どうしてでしょう?」

 二人で考えてもわからないのでこの件は放っておくことにした。


「けど、そんなリスクを負ってでも俺の家を聞く必要なんてあるのか?」

 興味本意で聞いてみると、

「……好きな人に会いたいのに、理由はいりますか?」

 葉山は、顔を真っ赤にしながらそう言ってきたので、俺は直ぐにいいえと答え、一緒に学校に行くことにした。

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