第2話 鎖されし教え
1
「
『あ――!!?』
ファナに背を向け、テレリアは夫のそばへと駆け――酒場の中へと向き直った。
「ご報告が遅れましたが……そうなんです。私、この
「ま、式は無事
「! 私達――」
ファナのつぶやきは誰にも聞こえない。
「……テレリア。いいから下がっていろ」
「あ、はい。お
「君を探していたんだが……まさか君、あんな性犯罪をこれまでずっと
「あー……はい。そういうことに……なります?」
「……まあいい。責められるべきは君じゃない」
エクターの眼光が、
ファナの時とは打って変わって、傭兵たちは一人残らず身構えた。
「
「その女は黙認してたワケじゃねーぜ、聖騎士サマよぉ。テレリアは俺らにどんなに
「嬲ッ――」
「そういうこったよ。この女はテメーが思ってるような聖女じゃねえ。とんでもねえ
「ちがうっ!」
――その声に、一番驚いたのはファナ自身だった。
多くの視線が一斉に少年を
「彼女は
「クソガキ、てめ――」
「どこまでも
「テレリアは見つかったんだな、エクター」
『!!?』
エクターに次ぎ、酒場へと入ってくる人物。
その
「き……騎士団長ヒディルまで……!?」
「ええ……テレリアを頼みます、ヒディル様。私は」
「『私は』? どうするつもりなんだ」
「………………」
「どうもまだ血の気が多いなお前は……すまなかった、
「行くぞテレリア。あの様子じゃもう仕事も済んだんだろう」
「はいっ。それじゃあ皆さん、またそのうちに!」
「――て。テレリアっ」
「はい?」
エクターに肩を抱かれたまま去ろうとしていたテレリアがファナに振り返る。
同時にエクター、ヒディルからも目線を向けられ、ファナは縮こまるようにして口を開いた。
「あ、あの……テレリアも、行くんですか。最終攻略戦に」
「――はい。今回やっと、前線の
テレリアの言葉に、応える傭兵は誰一人いない。
皆、ただありったけの敵意でエクターを、ヒディルを見つめるだけだ。
ヒディルが傭兵たちに向き直った。
「確かに、
傭兵たち一人一人の顔を記憶に刻み付けるように見渡しながら、ヒディルは続ける。
「魔物と魔族の巣窟であるギアガロク
ヒディルはそこで言葉を切り――傭兵達へ向けて一礼する。
「よろしく頼む。明日は肩を並べ、ベステアの為に力を尽くそう」
エクターとテレリアを連れ、ヒディルは酒場を出ていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます