第167話 ゲスモブ、小遣い稼ぎする
日本に戻ると、清香からメッセージが届いていた。
今夜は坂口の家で、井川と三人でお泊り会をするらしい。
俺には全く縁の無い、陽キャなイベントだ。
べ、別に寂しくなんかないからな……。
休みの夜だから、清香とメチャクチャしようと思ってたが、すっかり当てが外れてしまった。
なので、久々にアイテムボックスの能力を使った、大人な社会科見学に行くとしよう。
向かった先は、新宿駅の北にある大〇保公園だ。
言わずと知れた、立ちんぼと呼ばれる売春目的の女が集まることで有名な場所だ。
ただ、これだけメディアやSNSなどで話題になれば、警察の取り締まりとかで居なくなっているだろうと思っていたのだが……。
「うぇぇ……マジか」
公園脇の通りには、ガードレールや公園のフェンスに寄りかかってスマホをいじっている女性が何人もいた。
十メートルほどの間隔を空けて、並んでいる光景はちょっと異様だ。
これが渋谷のハチ公前とかならば、誰かと待ち合わせしているんだろうと思うのだろうが、ここは待ち合わせをするような場所には見えない。
年齢は、俺と同じぐらいに見える子から、少し上の二十代ぐらいまで。
おばさんと感じるような年代の人は見当たらない……と思っていたら、エリアが変わると年代や人種も変わってきた。
パッと見だと分からないが、近づいて観察してみると化粧で繕っているのが分かる。
明らかに日本人でない女性の姿もある。
服装は、太ももを見せつけるような短いスカートを穿いている割合が高いが、ロングスカートで足や体の線を隠しているような女も居る。
顔は……見るからに不細工な女は見当たらず、どこにでも居そうなレベルだ。
というか、場所が場所でなければ、立ちんぼをやっているなんて分からないだろう。
「ババアや外国人目当てのオッサンもどうかと思うが、やっぱ〆るなら十代目当てのオヤジだろう」
若い子が多いエリアに戻って観察をしていると、物色しているらしい男がいた。
天パー頭に縁無しメガネ、上はグレーのトレーナー、下はジーンズとスニーカー、黒いリュックを前側に抱え、スマホ片手にウロウロしている。
オタボッチの俺が言うのも何だが、世間一般に思われているオタクスタイルだ。
小太りな体型で、見た目の年齢は四十代ぐらいだが、実年齢はもう少し若いかもしれない。
手にしたスマホの画面は点いているが、視線はガードレールに寄りかかっている女の子に向けられている。
小太りのオッサンが同じ通りを二往復ぐらいしてから近付いていったのは、どう見ても俺と同じか年下に見える女の子だった。
黒いレザーのミニスカートとブーツ、上はパープルのキルトジャケットを羽織っている。
オッサンの目当ては、中に着ている白いウールを大きく盛り上げている胸だろう。
「こ、こんばんは……イ、イチゴーでどうかな?」
「無理……」
声を掛けられた女は、オッサンを一瞥することもなく素っ気なく言い放った。
「ニでは?」
ようやくスマホから視線を外した女は、オッサンを品定めするように眺めると、小さく舌打ちしてみせた。
「ホ別、ゴムありなら……」
「い、行こうか」
「ちっ……」
何と言うか、オッサンもオッサンなら、女も女だ。
舌打ちするほど嫌な相手と寝なきゃいけないほど金に困っているのだろうか。
ホテルに入った後も、二人のセコいせめぎ合いは続いた。
「はい、前金で払って」
「そ、それは駄目なんだな。お金なら、ちゃんと持ってる」
オッサンが取り出した長財布には十枚ぐらいの万札が入っていて、それを見た女の表情が変わった。
「ねぇ……ニーゴーじゃ駄目?」
「NNだったら……」
「無理、NNならサン」
「分かった……」
交渉がまとまると、二人は互いの様子を確かめるようにして服を脱ぎ、一緒に風呂場へと入って行った。
服を脱いだ女は、確かに胸は大きかったが、腹も負けないぐらいに出ている。
ルーズフィットのニットで上手く胡麻化していたのだろうが、今度はオッサンが小さく舌打ちしていた。
後で調べて分かったのだが、立ちんぼの中には金だけもらって逃げ逃げる女も居るらしい。
逆に男の中には金やホテル代を払わずに逃げる男もいるらしく、金のやり取りや風呂に入るタイミングを牽制しあうそうだ。
ちなみにNNとは、ゴム無し膣内射精の隠語だそうだ。
そりゃ梅毒が流行する訳だよな。
「さてと……どうすっかな」
オッサンが金を持ってるのは分かったが、女はそんなに困窮しているのだろうか。
「なんだよ、金持ってんじゃんか……」
女の財布の中身を確かめると、五万近い現金の他にカードが数枚入っていた。
手持ちの金はあるけれど、作った金はどこかに貢いでいて、借金があるとかだろうか。
風呂場に入った後も二人はプレイの内容について、あれこれ揉めているようだった。
女は揉めることで少しでも金を引き出そうとして、オッサンは金に物を言わせてエグいプレイをさせようとする。
「なんつーか、浅ましいねぇ……」
風呂場から戻ったオッサンは、財布から万札四枚を取り出してテーブルの上に置くと、女をベッドに押し倒して圧し掛かっていった。
「はぁ……なんか覗いていても、一ミリも興奮しねぇな。収集……」
オッサンが女の乳房にむしゃぶり付きながら、息を荒げて腰を振りまくっている間に、二人の服と財布とスマホ、靴、それにテーブルの上の万札を収集した。
「オッサン、せいぜい楽しんでおけよ。その女、十五歳みたいだからな……」
現金以外は分解魔法で素材レベルに戻して廃棄する。
「全部で十七万ちょいか……良い小遣い稼ぎじゃん。んじゃ、次行ってみっか!」
俺は次なる獲物を求めて、公園脇の通りに戻ることにした。
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