第162話 オタデブ、偵察に行く(前編)
※今回は桂木才蔵目線の話です。
とにかく、邪竜をこの目で見てみたい。
黒井に頼んで、邪竜を映像で確認することは出来た。
タブレットの中で、邪竜は手足の爪で岩を砕き、ブレスで崖を大きく抉り飛ばしていた。
黒井の奴は、邪竜が不意に動きを止めたところで爆笑していたが、僕は笑う余裕なんて無かった。
巣である滝壺付近の地形を一変させる様子は、恐竜というよりも怪獣レベルの恐ろしさだ。
先日のワイバーンもかなりの迫力だったが、邪竜と比べると三段ぐらい格下に見える。
ワイバーンを仕留めたガトリング砲を模した魔法では、邪竜の鱗に弾かれてしまう気がする。
それに、何よりも僕が、連射の魔法で仕留めたくないのだ。
黒井が言うには、邪竜よりも更に高位なドラゴンが存在しているらしいが、僕からみれば邪竜こそが至高の存在だ。
至高の存在を仕留めるには、至高の一撃を食らわせる必要がある。
それは連射などではなく、魔力を圧縮し極限までに収束させた一撃でなければならない。
僕は邪竜に対して、命を懸けた一発勝負がしたいのだ。
そのためには、やはり邪竜の実物を見ておきたい。
邪竜は、僕らが居る駐屯地から馬車で一日掛かる山脈に暮らしているらしい。
更に山を登る必要があるそうだが、初見で戦うのは避けたい。
そこで、僕は邪竜の実物を確かめるために、偵察に向かうことにした。
偵察に向かうのは、僕、宮間さん、ヤンキーの鹿島初美、それに木島の四人だ。
宮間さんは言う間でもなく僕の護衛、鹿島さんは水属性の魔法が使えるので飲み水の確保役、木島は一般人目線での意見を聞くために連れていく。
ワイザールの駐屯地に来てから初めての休日に、木島、佐久間、村上の三人は、娼館に女を買いに出掛けたそうだ。
交渉の末に、持ち金ギリギリで女を買えたらしいが、木島以外の二人は追加の料金が支払えず、強面の男たちに取り囲まれて帰ってきた。
僕が騒ぎを知るよりも早く、ヒデキが拳で話をつけたらしいが、佐久間と村上もボコられて、その後女子からはゴミでも見るような目で見られている。
一方、木島は女こそ買いにいったが、紳士的な振る舞いでトラブルを回避したため、女子からの白眼視を逃れている。
それに、初めての実戦訓練の時、宇田と金森を失ったリア充グループが崩壊せずに済んだのは、木島の働きが大きかったと聞いている。
僕ら四人に加えて、駐屯地の兵士が五人同行する。
更に、山脈の麓の村で案内役を雇う予定だ。
「じゃあ、留守は頼んだよ、ヒデキ」
「おぅ、任せておけ」
ヒデキは、駐屯地に残る連中のまとめ役として残していく。
梶原さんも、今回は居残りだ。
「サイゾー、気を付けてね……」
「……分かってる」
梶原さんは人目もはばからず、僕に唇を重ねてきた。
ワイザールの駐屯地に来て以来、僕は梶原さんと宮間さんの三人で夜を共にしている。
膣内射精は避けているが、とっくに一線は超えている。
召喚前には、妄想の中でしか実現できなかったハーレム生活だ。
夢のような生活と思うかもしれないが、二人を平等に扱わないといけないので、快楽に溺れる余裕なんてない。
しかも、二人同時というシチュエーションが競争心を炊き付けてしまい、行為がエスカレートする一方なのだ。
偵察の間の抜け駆けは禁止だと、梶原さんと宮間さんは協定を結んだので、実はかなりホッとしている。
少なくとも、偵察の間は絞り取られずに済みそうだ。
偵察メンバーに鹿島初美を加えたのは、別に新しいハーレム要員にするためではない。
鹿島さん達ヤンキーグループの女子は、実質逆ハーレム状態なのだ。
グループの性処理係というよりも、男達に体を開いてくれる姫扱いなのだ。
鹿島さんを加えたのは、邪竜の住処まで女子の脚力で行く場合、どの程度の疲労度になるのか見るためだ。
邪竜と戦うには、こちらはベストの状態でなければならない。
そのためには、疲労度の把握と対策を講じなければならない。
宮間さんも女子ではあるが、膨大な魔力を使って身体強化の魔法を発動し続けられるのだから、全く参考にならないのだ。
勿論、そんな裏事情は口には出せない。
馬鹿に向かって馬鹿と言えば怒るのと同様で、ゴリラに向かってゴリラと言ってはいけないのだ。
では何と伝えてあるかと言えば、ヤンキー達の姫である鹿島さんが、木島にどんな態度をとるか観察するためだと伝えてある。
いうなれば、カースト最下位に落ちた木島、佐久間、村上の三人の中から、頭一つ抜け出た木島がどう扱われるか興味があるのは本当だ。
別に手を差し伸べてやるつもりは毛頭無いが、人間模様を観察するのは嫌いじゃない。
目的地に向かう馬車の中の距離感には、変な緊張感が漂っていた。
宮間さんは僕に腕を絡めて、ベッタリと密着している。
鹿島さんは僕の向かい側に腰を下ろして宮間さんに冷ややかな視線を向け、木島には興味を示していない。
自慢ではないが、僕は魔法の指導などを通してヤンキー女子から絶大な信頼を得ている。
リア充グループが合流する以前、ヤンキー女子達は僕とヒデキを優先して性欲を満たしてくれていた。
その僕を梶原さんと二人で占有している宮間さんの存在は、鹿島さん達にとって面白くないのだ。
ただし、宮間さんの身体強化魔法がどれほどのものなのか、ヤンキー女子全員が理解している。
それゆえの冷たい対立関係という訳なのだが、これが偵察の間ずっと続くのかと思うと、ちょっと人選を間違えた気がしてきた。
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