第107話 ゲスモブ、つまらない物を分解する
ゲスホストから売上を巻き上げるつもりだったので、消化不良な気分を抱えてホストクラブを後にした。
時間は既に深夜零時を過ぎているが、新宿はまだ眠らない。
「あー……どうせならトー横でも見物に行ってみるか」
何かと話題になっている東宝ビル横の広場も、昼間なら通ったことがあるが、こんな深夜には行ったことはない。
そもそも、オタボッチな俺は夜に出歩く機会が少なかった。
別に真面目だからではなく、誘ってくる友達がいないから、一人で出歩いても面白くないと思っていたからだが、トラブルに巻き込まれるのを恐れていたのも確かだ。
アイテムボックスの中からなら、柄の悪い連中に絡まれる心配は要らないし、思う存分観察できる。
少女を食い物にするオッサンや、オッサンから金を巻き上げるアバズレがいたら、ちょいと痛い目に遭わせてやろうか……なんて思いながら移動していると、三人組の男女が目についた。
見た感じは大学生っぽいが、女性は泥酔しているようで、男二人に両脇から抱えられている。
女性は服装も化粧も派手ではなく、遊んでいるような感じではない。
男二人も特に派手な服装をしている訳ではないが、表情が駄目だ。
「萌ちゃん、大丈夫? もうちょっとで休めるところに着くからね……って、聞こえてねぇか」
「ばっちり盛ったから朝まで起きねぇよ。その間に、たっぷり楽しませてもらうぜ」
野郎どもの表情は、城に残ったクラスメイトを凌辱する順番待ちをしていた兵士どもとそっくりだ。
女性は、そのまま男二人に抱えられてラブホテルに連れ込まれてしまった。
部屋に入ると男二人はニタニタと嫌らしい笑みを浮かべながら、ベッドに横たえた女性の服を脱がせ始める。
「うひょぉぉぉ! たまんねぇな、この乳!」
「動画をネタに脅して、次はたっぷりパイズリさせてやろうぜ」
「いいな、挟んだままでシャブらせるか」
余程強い薬を飲まされたのか、下着まで脱がされても女性が目を覚ます様子は見られない。
男二人は、全裸にした女性の股を開かせ、スマホで写真を撮りまくっていた。
こうした写真を使って脅し、肉体関係を強要するつもりなのだろう。
「もういいだろう、さっさと始めようぜ」
「だな……」
スマホを置いた男二人は、自分達も服を脱ぎ捨てた。
「恨みっこ無しの一発勝負」
「最初はぐー! じゃんけんぽい!」
「しゃーっ! 俺が先な」
「ちっ、ちゃんとゴム付けろよ」
男二人が、いそいそと準備を始めたところで、アイテムボックスの窓を開けた。
「分解……」
「うぎゃぁぁぁぁぁ!」
ぱちゃ、ぱちゃ……っと、水を零したような音がした直後、男二人が悲鳴を上げた。
股間の汚らしい一物を竿も玉も細胞レベルに分解してやったのだ。
男二人の一物は、水っぽいミンチのようになって床に広がっている。
股間の断面からは血が噴き出し、激痛が走っているようだ。
「嘘だろう、どうなってんだよ!」
「無い、俺の……無くなっちまってる!」
「痛ぇ、血が、血がぁ……」
「どうすんだよ、やべぇよ、このままじゃ死んじまう!」
「救急車、救急車呼べ、早く!」
男二人は、部屋にあったタオルを股間に押し当て、血塗れになった手で必死にスマホを操作して119番通報した。
「救急! 早く、血が止まらないんだよ」
「場所は新宿のラブホテル、名前は……分かんねぇ!」
「早く、マジ死んじゃう、無くなっちまったんだって!」
「嘘じゃねぇよ。マジ死にたくねぇ!」
女性を精神的に殺そうとしていたくせに、ピーピー、ビャービャーやかましい。
最初は救急車が到着した時点で、一物は体から分離した状態で復元してやろうかと思っていたが、騒ぎになっても構わないから放置することにした。
綺麗に切断された状態ならば、縫合が可能かもしれないが、ミンチ状に分解してあれば元には戻せないだろう。
薬を盛って乱暴して、写真を使って脅し、更に肉体関係を迫るようなクズの遺伝子は、この世に残らない方が良い。
パニックに陥った男二人の話は要領を得ず、救急車が手配されて到着するまでに随分と時間が掛かっていた。
消防庁の方で状況が異常だと感じたのか、警察にも通報がなされたようで、救急隊よりも先に警察官が部屋に到着した。
男二人は救急隊の到着を待つ間、警察官から事情を聞かれることになったのだが、突然股間の一物が消えた……なんて説明が信じてもらえるはずもない。
加えて、ベッドの上で意識を失っている女性についても説明を求められ、男二人は酔いつぶれた女性を介抱していたと答えていたが、下着まで身に付けていない理由は上手く説明できなかった。
結局、女性も救急搬送されることとなり、男二人は強制わいせつの容疑者とみなされるようだ。
スマホも押収されたようだから、脅迫用の写真が動かぬ証拠となるだろう。
まぁ、例え被害者と示談が成立して、刑事罰を受けずに済むことになったとしても、二度と悪さはできないだろう。
お前らは、トー横から二丁目にショバ替えするんだな。
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