第104話 ゲスモブ、魔法を検証する
大きすぎる力を得たら自滅しそうだと説明したのに、皇竜がくれた分解と復元の魔法はチートにも程があるぶっ壊れ魔法だ。
そこにアイテムボックスを使い続けて増えたらしい俺の魔力が加わると、更にヤバさが増大する。
「とにかく、精密なコントロールができるようにしよう」
練習用に取り出したのは、俺が小学校低学年の頃に使っていた携帯ゲーム機だ。
今やすっかり時代遅れとなって、もう何年も使っていない。
引出しの奥に入れっぱなしにしておいたせいで、電池が液漏れして酷い状態だ。
当然、スイッチを入れたところで全く反応は無い。
「まずは分解……おぉぉ、凄ぇ!」
慎重に効果範囲を設定し、分解後のイメージを具体的に思い描きながら魔法を発動させると、ゲーム機は細かいパーツごとにバラバラになった。
本体のボディー、電池、液晶、基板、メモリー、デカール……まるで生産ラインに並べられるパーツ一式という感じだ。
「じゃあ、更に分解……」
細かくなったパーツを更に分解すると、樹脂の塊、銅線、金線、ハンダなどに分解された。
「てか、これってやる気になれば、炭素とか水素とかにまで分解できるんじゃね?」
別の機会に試してみるつもりではいるが、魔力をガツンと放り込めば、水を水素と酸素に分解したり、二酸化炭素を炭素と酸素に分解できそうな気がする。
もしかして、俺が気合いを入れたら地球温暖化も何とかなってしまうんじゃなかろうか。
まぁ、そこまでボランティアする気は無いけどな。
「それじゃあ、復元……って、あれ?」
材料レベルまで分解した基板の復元を試みたのだが、何だか上手く復元できない。
邪竜の尻尾を復元できたのだから、ゲーム機の基板ぐらいは簡単に復元できると思っていたので、これは少し誤算だった。
「どうすっかなぁ……試しにまとめて復元してみっか」
パーツを全部集めて復元の魔法を唱えると、ゲーム機は元の形を取り戻した。
更に、ゲーム機が動いていた頃の姿を頭に思い描いて復元の魔法を発動させた。
「おぉ、何か綺麗になったな。電池の液漏れも無くなってるじゃん」
試しにスイッチを入れて見ると、聞き覚えのある電子音が鳴り、ゲーム機の画面が点灯した。
「凄ぇ! 直った!」
基板単体では復元できなかったが、機能しているゲーム機をイメージすると復元できるとか、ご都合主義にも程があるんじゃなかろうか。
「まぁ、いいさ。これで盗みを働かなくても小遣い稼ぎができる目途がついたな」
この能力を使えば、リサイクルショップで仕入れたジャンク品を新品同様に再生できる。
あとは、生き物に対しての効果を検証する必要があるが、邪竜でできたのだから他の生物でも分解、復元は可能だろう。
「あれっ、ちょっと待てよ……」
ゲーム機の復元は上手くいったが、頭に引っ掛かったことがあったので、別の検証をやってみた。
用意したのは、サラダせんべいだ。
二枚一組で袋に入った状態のサラダせんべいを叩いて砕き、復元の魔法を掛けると元に戻った。
次に、袋を破いて一枚を食べる。
サクサクとした軽い歯ざわりと塩気が絶妙……などと味わっている場合ではない。
残った一枚を袋の中で四つに割り、その状態で食べる前の状態への復元を試みた。
「おぉ……マジか」
復元されたのは、袋が閉じた状態で中身が一枚しかないサラダせんべいだった。
続いて、設定を変えて再度復元を試みると、ちゃんと中身が二枚のサラダせんべいが復元された。
「つまり、魔法の効果範囲に欠損した部位が存在していないと復元されない訳だ」
一回目の復元では、魔法の効果範囲をせんべいの周辺に限定した。
その結果、俺が食った分のせんべいは復元されなかった訳だ。
材料の足りない部分は復元されないが、材料がそろっている残りの一枚と袋は開封以前の状態へと復元された。
そして、魔法の効果範囲に俺を含めると、食ったせんべいまで復元されたという訳だ。
「なんつーか、一回噛み砕いて飲み込んだものを再度食うのは複雑だな」
とりあえず、分解については制御できればチートこの上ない魔法で、復元はチートだが効果範囲や材料などに制約が掛かるようだ。
復元の魔法を使えば、歳をとった後でも十年前、二十年前の肉体に戻れるのではないかと思っていたが、どうやらそんなに上手くはいかないらしい。
垢とか老廃物として体外へと排出された成分が揃わないと、復元した途端消滅するような気がする。
それと、魔法を掛けた途端、欠損部位まで元通り……といった使い方もできなそうだ。
「でも、戦場限定ならば、俺の魔力が尽きるまで、死んだ人間も復元できそうな気がするな……頭潰して殺した奴を復元したら、元の人格とか記憶も復元できるのかな?」
色々と魔法の使い道は頭に浮かぶが、ヤバイ検証作業は日本じゃなくて異世界でやった方が良さそうだ。
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