第93話 ドMショタ、自宅に戻る
※今回は那珂川博士目線の話になります。
拘留期限が切れて、僕は処分保留で自宅へ戻されることになった。
違法薬物などで逮捕された芸能人が。マスコミの晒し者にされながら保釈されるような感じになるかと思ったのだが、未成年だからか警察署の周りには取材陣は居なかった。
迎えに来てくれた父と弁護士の話によれば、ネット上の僕への誹謗中傷に対して厳しい対応を行ったことも関係しているらしい。
そして、自宅に戻ったら母に泣かれてしまった。
僕が異世界に召喚される前、母はポッチャリを通り越した体形だったのに、別人のようにやつれていた。
僕は一人っ子だが、母は僕に固執するような人ではなかった。
特に教育熱心という訳でもなく、人様に迷惑をかけず、健康に育ってくれれば良いというスタンスだったはずなのに、性格までもが別人のようになっていた。
僕は自宅に戻ったら、羽田君の両親に謝罪に行こうと考えていたのだが、母親に猛烈に反対されてしまった。
僕の顔や腕に残った傷跡を撫でながら、博士は十分に苦しんだのだから、もうこれ以上悪意に晒されなくても良いと言い、外出さえも禁じられてしまった。
まるで僕が幼稚園児にでも戻ったかのように、今日は何を食べたいのとか、何をして遊ぶとか、一緒に風呂にまで入ろうとするのには辟易とした。
向こうの世界で凌辱されて僕らが壊れてしまったように、突然一人息子を奪われた母もまた壊れてしまったようだ。
突然の召喚も、日本に戻って来られなかったのも、僕の力ではどうしようもなかったのだが、それでも僕が居なくなったことが原因だと考えると罪悪感を覚えてしまう。
いきなり母が過干渉してくるようになって、戸惑うし、正直鬱陶しいとも感じてしまうが、突き放すという選択はできなかった。
ただ、母の言いつけ通りに羽田君の両親への謝罪を取り止め、外出せずに過ごすうちに少しずつ落ち着いたようにも感じる。
母に外出を禁じられたが、今の時代は家に引き籠っていても特に困ることは無い。
教科書も、参考書も手に入るし、インターネットも活用すれば勉強には困らない。
当初、母にはインターネットを使うことも禁じられたのだが、一生外の世界との関わりを断って生きる訳にもいかないし、外出までのリハビリだと言って納得してもらった。
現代社会では、外出をしなくても生きていけるが、インターネットを使わずに生きていくなんて僕には無理だ。
インターネットのニュースサイトやSNSで、僕に関するニュースを探してみると、父や弁護士さんの奮闘にも関わらず、悪意に満ちた書き込みが少なからず存在していた。
訴えられないように、個人名を使わずに『尻穴王子』とか『凌辱プリンス』といった言葉を使い、好き勝手なことが書かれていた。
そうした書き込みを見て、腹立たしいと感じる感覚を魔法で変換してしまえば、読めば読むほど爽やかな気分になれるのだ。
黒井君に頼まれた、日本でも魔法が使えるかどうかの検証は続けている。
結論から言えば、日本でも魔法は問題無く使えている。
腹立たしい思いを性的な快感に変換することも可能だろうが、ちょくちょく部屋の外から母が様子を窺っているようなので試していない。
知識への渇望は自宅に戻って満たされたが、性的快楽への欲求は満たされていない。
両親には異世界で性的暴行を受けたとカミングアウトしたが、酷い凌辱を受けることで強烈な性的快感に浸る喜びを覚えたことまでは話していない。
性犯罪の被害者となるのは仕方なくとも、それによって異常性癖に目覚めてしまったと知ったら母が更に壊れてしまいそうだし、そもそも知られることに僕が耐えられない。
あくまでも僕は可哀そうな被害者であって、ドMな変態であるとは知られてはならないのだ。
この性癖を世間に知られても構わないなら、羽田君を殺す必要は無かった。
警察で何度も殺害時の状況を訊ねられた時には、その煩わしさから罪悪感を覚えたが、自宅に戻ってネット上の書き込みを見た今は、本当に殺しておいて良かったと思っている。
もし、もし仮に僕の性癖が世間にバレて、後ろ指を指されるようになったら、僕は自分の命を断ってしまうだろう。
日本に戻って来る直前、倉田さんと道上さんの態度が変だったのが少し気掛かりだが、彼女らは同じように凌辱された者の足を引っ張るようなことは無いと思いたい。
それに、彼女たちも日本に戻って来ているが、世間での扱いは僕に比べて本当に小さい。
僕に対する誹謗中傷を父が弁護士を雇って徹底的に対処したのと、彼女らは殺人を犯していないからだろう。
そう考えると、やっぱり僕が羽田君を殺害したのは正解だったと思えてくる。
羽田君は、向こうの世界でも何の役にも立たなかったし、日本に戻ってきても僕らや黒井君の邪魔になるだけだっただろうし、こうして役に立っているのだから感謝してもらいたいぐらいだ。
残る問題は、いかにして性的欲求不満を解消するかだ。
異世界で凌辱されて以後、僕の性欲は以前よりも高まっている。
放置しておくと夢精してしまいそうなので、自慰行為で処理しているのだが、母が四六時中監視している状況では行為に集中できない。
夜中に両親が寝静まったのを見計らってトイレ籠り、あと少しという所でドアをノックされて具合が悪いのかと声を掛けられた時には、母に軽く殺意を抱いてしまった。
それ以後は、母が買い物に行った隙に処理しているが、本当に処理するだけで満足感は無い。
そもそも僕が満足できる行為なんて、この先の人生で味わうことが可能なのだろうか。
僕が満足するような快感を得るには、酷い苦痛を伴う凌辱行為が必要だが、そのような行為は日本では犯罪だ。
例え同意の上だとしても、あそこまで人を物扱いにした行為をしてくれる人なんて居るのだろうか。
居たとしても、どうやって知り合えば良いのか分からない。
知り合うにしても、僕の致命的な弱みを伝えても大丈夫な信頼できる人物でなければならないし、ハードルどころか絶望的に高い山脈が立ち塞がっている感じだ。
それならば、自慰行為で満足できないかと考えたが、解決すべき問題は多い。
僕が満足できるレベルの自慰行為は、自傷行為と呼ぶのがふさわしいレベルだろう。
出血を伴うような行為は、母の状態を悪化させるから出来ないし、悲鳴を上げない行為では満足できるはずもない。
今はただ、母が買い物に出掛けた隙に、尻の穴に唐辛子を塗り込んで自慰行為に耽る程度で我慢するしかなさそうだ。
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