第79話 オタデブ、葛藤する
※今回はサイゾー目線の話になります。
歯車が狂いだしている。
こちらの世界に来てからヤンキー達のグループは、日本に居たころの甘さを捨てて純粋な戦士になる訓練を重ねてきたのだが、木島たちのグループが合流して様子が変わり始めた。
これまで、ヤンキーグループ内部にも力の差はあった。
例えば、僕は魔法の威力は突出しているが、体力面では一番下だった。
同様に大石和真は、体力面ではヒデキに次ぐ存在だったが、魔法については最下位だったが、差が縮まるように全員が支え合ってきた。
その過程がグループの絆を強くしてきたし、初の実戦訓練を誰一人負傷することもなく乗り切ったことで、更に自信と信頼を深めていた。
逆に言うならば、グループとしての絆が強まりすぎたことで、異物との親和性が失われていたのかもしれない。
合流したグループと訓練を重ねるうちに、元体育会系の佐久間、田沼、それに木島の三人は、どうにか僕らのメニューに食らいついて来ようとしている。
この三人については、辛うじて仲間として認識されつつあるようだが、問題は村上清、斉木翔太の二人だ。
体力的にも魔法の威力でも大きな差が縮まらず、気持ちが切れて諦めてしまっているように見える。
その結果、引き起こされたのは村上と斉木のパシリ化だ。
こちらに来てからの訓練でヤンキー共はマッチョ化が進んでいるが、現地の兵士は体の大きな者ばかりだし、所属も違うのでオモチャにする訳にはいかない。
だが、村上と斉木は同じグループとなり体格でも魔力でも劣っているので、パシリとして使いやすい……というよりも、イジメのターゲットに持って来いなのだ。
ヒデキが目を光らせているから、明確なイジメは行わないようだが、過度なイジリみたいな感じで絡まれているのを良く目にするようになっている。
これが日本だったら何も言わないし、行動もしないのだが、ここは日本ではなく異世界だ。
イジメのターゲットとなっている村上と斉木の二人も魔法が使えるのだ。
面倒だけど暴発が起こる前に、ヒデキに釘を刺しておくことにした。
「ヒデキ、気付いてる?」
「なにが?」
「村上と斉木の扱い……」
「あの程度はジャレてるようなもんだろう」
「ヒデキ、それは強者の発想だよ」
「あぁん? どういう意味だ?」
「イジってる側は遊びのつもりでも、イジられている側はずっとストレスを溜め込んでるよ」
イジメられる側の心理を説明すると、ヒデキはハッとしたような表情を浮かべた。
「村上も斉木も魔法が使える。言ってみればナイフやピストルを持ち歩いているようなものだからね」
「キレたらヤバいってか?」
「ヤバヤバだよ。それこそ死人が出るよ」
「分かった、ちょっと釘を刺しておく」
「頼むね。日本人同士で殺し合いなんて御免だよ」
「だな……」
どうやらヒデキには危機意識が伝わったようだが、問題は他の連中がヤバさを理解するか、それと待遇が改善された時に村上と斉木が調子に乗らないかだろう。
猿山の序列争いじゃあるまいし、下らないにも程があるが、それでもまだ野郎どもはまだマシだ。
女子はヤンキーグループとリア充グループで対立の構図が出来上がってしまっている。
ヤンキーグループの女子は、厳しい訓練を重ねつつ野郎どもの性欲処理もやってきた。
女子も戦力として考えていたので、野郎どもからの強制は厳禁だったのだが、異世界という特殊な環境や邪竜と戦うという危機感、それに連帯意識などが加わり、全員が性的な奉仕を行い、逆に奉仕もされていたのだ。
それに対して、リア充グループの女子は、訓練にもついてこれないし、性的な奉仕も拒否している。
野郎どもと共に戦うヤンキー女子から見れば、寄生する気満々のリア充女子を受け入れられないのも当然だろう。
ちなみに、リア充グループから合流した野郎どもは、ヤンキー女子からお預けを食らっている。
体力的には佐久間や田沼は追い付きつつあるが、魔法の威力がヘナチョコ過ぎるのだ。
それが改善されるまでは、性的奉仕はお預けだそうだ。
そして、リア充女子に見せつけるためなのか、ヤンキー女子たちのご奉仕が過激になっている。
これまで妊娠を避けるために本番行為は禁じてきたのだが、月経期間中に自主的に性交するようになった。
これもリア充女子への当て付けなのだろうが、行為が過激化して訓練に支障をきたさないか不安になる。
僕らの年代の野郎どもに自制しろと言うのは難しいし、佐久間や田沼たちなどはヤンキーグループの性的奉仕を眺めて自分で扱いているほどだ。
眺めていて哀れに感じてしまうが、自分で処理しているうちは大丈夫だろうが、女子に強要するような事態になれば、それもまたトラブルになるだろう。
リア充グループの女子でも、治癒魔法の特訓を強制している梶原さんや男子並みの体格の藤井さん、それにカーストトップだった宮間さんは断われるだろうが、モブ女子三人は断わりきれないような気がする。
なしくずしに受け入れてしまえば、間違いなく行為はエスカレートしていくだろう。
そして、モブ女子であっても魔法が使えるのだ。
リア充グループ同士で殺し合いをするならば損害は少ないだろうが、命のやり取りになったら雰囲気は最悪になるだろう。
やはりリア充グループを受け入れたのは失敗だったのだろうか。
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