第37話 ゲスモブ、本領を発揮する
リア充グループが早々に魔法の練習を切り上げたところで、俺達も偵察を止めてサイゾー達の宿舎へと移動した。
「清夏、悪いんだけどサイゾー達の宿舎を浄化してやってくれ」
「いいよ、レベル上げには魔法を使わなきゃいけないし、バーンとクリーンしちゃうよ」
清夏は景気よくサイゾー達の宿舎だけでなく、リア充グループが使っている宿舎や水浴び場、トイレまで魔法を使って浄化した。
横で見ているだけだが、目に見えて綺麗になっているし、トイレは臭いまで消え去った。
「何だか、清夏のレベルが上がるのが早いような気がするな」
「うん、何でかは分からないけど、あたしもそう思う」
サイゾーの魔法も凄いと思ったが、清夏の浄化魔法も怖いくらいだ。
「じゃあ、俺はサイゾーと打ち合わせしてくるから、ちょっと待っててくれ」
「オッケー、桂木に引っ張られて魔王化しちゃ駄目だからね」
「分かってるよ」
だが断る。
サイゾーに来訪を知らせる合図に決めた石を並べてから、俺が向かった先は倉庫の裏ではなく水浴び場だ。
何のためかなんて、わざわざ言う必要は無いだろう。
リア充グループの女子が水浴びする様子を覗くためだ。
そもそも、アイテムボックスの能力を手に入れて、どこにでも自由に入っていけるようになったのに、これまで一度も覗きに使わなかった方がおかしいのだ。
勿論、覗きが犯罪なのは理解しているが、日本の法律に縛られない異世界で、絶対にバレない方法があるのに覗かないなど馬鹿げている。
サイゾーに一緒に行くかと尋ねたら、間違いなく二つ返事でOKするはずだ。
早速、水浴び場へと足を向けると、既にリア充グループの女子が来ていた。
全部で六人いる女子のうち、三人が脱衣所で服を脱いでいて、残りの三人は水浴び場の外で見張りをしていた。
見張りを務めている三人の厳しい表情からして、リア充グループの男子が覗きを敢行し、そして発覚したのだろう。
先に水浴びを始めたのは、宮間、梶原、藤井の三人だった。
おそらく、三人組の場合、二人組の場合で振り分けが決まっているのだろう。
宮間は運動部ではなく美術部所属なので、女性らしいふくよかな体型をしていた。
胸も大きく、尻も丸くて抱き心地が良さそうだが、肉感では清夏の方が上だ。
梶原は胸のサイズは平均的だが、さすが陸上部らしく太ももから尻に掛けては筋肉が発達している。
姫騎士が『くっ殺』するのが好きというマニアなら泣いて喜びそうだ。
藤井は完全なアスリート体型だ。
胸の膨らみも小さく、腹筋はバッキバキに割れている。
俺なんかが押し倒そうとしても、逆に押し倒されそうだ。
逆レイプ願望がある男なら喜びそうだが、まさか木島はそういう趣味なのだろうか。
三人の裸体をじっくりと堪能させてもらった後で、水浴び場では魔道具が使われているのに気付いた。
大きな水桶の上に取り付けられていて、手で触れて魔力を流すと水が出てくる仕組みのようだ。
俺は清夏に浄化の魔法を使ってもらえるし、風呂も城の大浴場とアイテムボックスを使って楽しめているが、今後屋外で活動する場合には有ると便利そうだ。
城の厨房で井戸の水を使っていたのは、もしかすると味のためかもしれないな。
宮間達が水浴びを終え、見張りを交代した三人の裸体もジックリと鑑賞した後で、サイゾーと待ち合わせている倉庫裏へと移動した。
サイゾーが来るのは、訓練を終えて水浴びした後なので急ぐ必要は無い。
倉庫の裏には、当然のようにサイゾーの姿は無かったのだが、兵士が一人しゃがみ込んで地面を調べていた。
雑草の折れ具合や、足跡を調べているようだ。
急いで宿舎の方へと引き返し、サイゾーと連絡を取り合うための合図を崩した。
俺が連絡したい時には、水浴び場から宿舎に戻る渡り廊下に、石を三つ並べて置くようにしたのだが、もしかすると気付かれたのかもしれない。
いや、合図ではなくサイゾーが倉庫の裏から戻るところを見られたのかもしれない。
いずれにしても、落ち合い方を考える必要がありそうだ。
女王の部屋からパクっておいた、ペンとインクと紙を使って伝言を書く。
倉庫裏の地面を調べていた兵士の様子、リア充グループの訓練の様子を確認した事、木島は鍛える価値がありそうな事などを日本語で書き、細く畳んで結び文にした。
渡り廊下で待っていると、ヤンキー共が疲労困憊といった様子で現れた。
こちらもビッチ三人が先に水浴びをするようだが、見張りをするのはヤンキー共だ。
サイゾーの話では、ビッチ三人は共有財産みたいな形になっているようだから、覗く必要は無いのだろう。
ビッチが水浴びを終え、ヤンキー共が水浴びを始めた頃に、ヘロヘロのサイゾーと徳田が現れた。
渡り廊下を通る途中で、サイゾーの視線が合図の石が並んでいないのをチラリと確認したのが分かった。
あとは帰り道でサイゾーが一人になるかどうかだ。
幸いな事に、水浴び場からは先に徳田が出て来て、最後にサイゾーが一人で戻ってきた。
渡り廊下の周囲に人がいないのを確認して、声を掛ける。
「サイゾー……」
「黒井か? ん?」
声を掛けた後、小さく開けた窓から結び文を投げ落とす。
結び文を拾い上げたサイゾーは、素早く周囲を確認してから文面に目を通した。
「黒井、いるなら付いて来てくれ……」
サイゾーは手紙を破いて丸め、握り込んで歩き出す。
俺もアイテムボックスに入ったまま、サイゾーと並んで歩き出した。
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