第19話 ゲスモブ、ギャルと風呂に入る
「黒井、お風呂に入りたい」
「何言ってんだ、お前は」
街から城まで戻ると、また白川がワガママを言い出した。
「えぇぇ……だって浄化の魔法だけじゃ味気ないじゃない」
「風呂なんて、一番無防備になる場所だぞ。この中に風呂桶なんて入らないし、どうやってお湯とか準備するつもりだよ」
「そこはさぁ、工夫次第だよ」
「工夫って言っても、どうするつもりだよ」
「そうね……まずは、あの厚化粧ババアが使っている広いお風呂とか無いか探さない?」
「それは別に構わないけど、あんなババアの裸を覗く趣味はねぇぞ」
「いいから、いいから、お風呂場探そう」
結局、白川に押し切られて風呂場を探すことになった。
正直に言うなら、俺だって風呂に入りたい。
白川が使う浄化の魔法は強力で、こちらの世界に来て以降一度も風呂に入っていないけど、臭ったり、痒みを感じる事は皆無だ。
一発浄化してもらうだけで、体は風呂上りみたいにサッパリするし、服もおろしたてに袖を通しているようになる。
ただし、白川が言うように味気ないのだ。
日本人のサガなのだろうが、ゆったりとお湯に浸かってリラックスしたいという欲求は日に日に高まっているのは確かだ。
白川に引っ張られる形で王族が暮らすエリアを探索すると、広い風呂場があった。
「おぅ、デカいな……ホテルの大浴場並みじゃね?」
「これって温泉じゃないよね? あっちから、ずっとお湯が出ているみたいだけど」
「裏を調べてみるか?」
アイテムボックスの中にいる状態ならば、壁抜け、床抜け、天井抜けだって自由自在だ。
お湯が流れてくる壁の裏へと入ると、魔道具らしきものを使ってお湯の温度を調節している者がいた。
誰も風呂を使っていなかったが、たぶん何時王族が風呂を利用したいと言っても良いように、ここでお湯の温度調節を続けているのだろう。
「お湯の温度を調節するだけの簡単なお仕事です……てか?」
「楽かもしれないけど、退屈で死にそう……」
白川の言う通り、お湯の調節を担当している男は、椅子に座ったまま欠伸を繰り返していた。
「風呂場はあったけど、こんな奴がいるんじゃ忍び込んで入るなんて無理だぞ」
「だから工夫するんじゃない。お風呂場に戻ろう」
白川に腕を引かれて、再び壁抜けをして風呂場に戻った。
温泉ではないが、新しいお湯が掛け流し状態の風呂は、浸かれば絶対に気持ち良いだろう。
「黒井、このまま湯船の中まで進んで」
「そんな事したら……あぁ、大丈夫か」
一瞬、ずぶ濡れになってしまうかと思ったが、アイテムボックスの中は別次元なので、湯船に入ってもお湯は流れ込んでこない。
「おぉ、水槽を沈めている……みたいな?」
「水族館みたいだね。ねぇ、黒井、分かった?」
「はぁ? 何がだよ」
「この状態から、ちょっと扉を開ければ、この中も湯船にならない?」
「あっ、そうか! お湯を入れて、閉めちまえば外から見えないし、触れないし、気付かれないのか」
アイテムボックスごと湯船に入った状態で、扉を開ければお湯が流れ込んで来る。
お湯が満たされた後で扉を閉めてしまえば、外の世界とは別次元になるので存在を気付かれる心配をせずにお湯に浸かれるという訳だ。
「そうそう、いいアイデアでしょ?」
「確かに……」
「じゃあ、早速やってみようよ」
「いや、待て……確かに外からは見られないけど、俺からは丸見えなんだぞ」
「いいよ、別に……黒井だったら見られてもいい」
「ば、馬鹿、お前なぁ……」
「それとも、あたしじゃ嫌……?」
両腕で胸の膨らみを寄せて上げて、上目使いで小首を傾げてみせるなんて……この状況では反則だろう。
「い、嫌じゃねぇけど……欲望の歯止めが利かなくなる」
「いいよ、黒井にだったら、あたしの初めてをあげてもいい……」
「馬鹿、やったら子供が出来るかもしれないんだぞ! こんな状況じゃ子供産んだり育てたりなんか出来ないだろう。そんな無責任な事を……」
「そうだよね。だから、今日はこっちで……嫌?」
白川は胸の膨らみをギュムギュムっと寄せてみせる。
それが何を意味しているかなんて、DTの俺にだって理解できる。
「わ、分かった……でも、片付けないと中に置いてある物が濡れちまう」
「じゃあ、要らない物は分割したアイテムボックスに置いていこう」
「そ、そうだな……」
「着ている物も全部脱いでいっちゃおう」
「そ、そうだな……」
「ちょっ、黒井緊張しすぎ」
「うっせぇな、経験無いんだからしょうがねぇだろう」
「あ、あたしだって初めてなんだからね……」
「お、おぅ……」
それから二人とも無言で服を脱いで、生まれたままの姿で分割したアイテムボックスで湯船に入った。
「もうちょっと天井低くても大丈夫じゃない?」
「そ、そうだな……お、お湯入れるぞ」
「うん……あぁぁ、気持ちいい……」
分割したアイテムボックスだが、天井を低くしたので足を伸ばして浸かれる広さの湯船が出来たが、並んで座っている白川とは肩が触れている。
「黒井……見てもいいよ」
「お、おぅ……」
お湯にゆらめく白川の裸身を目にして、痛いくらいに硬くなっている。
興奮を抑えきれず、無意識に胸の膨らみに手を伸ばしてしまった。
「待って……」
「ご、ごめん!」
「ううん、好きに触っていいけど、先にキスしてほしい……」
「白川……」
「名前で呼んで……」
「お、おぅ……えっと……」
咄嗟に名前が思い出せず、白川が溜息を洩らした。
「はぁぁ……き・よ・か……もう、雰囲気台無し……」
「悪い……清夏」
「よしと……」
「よ・し・ひ・と……」
「ごめん……」
「はぁぁ……緊張してたのが馬鹿みたいだ」
「そうだね。でも、こっちはまだガチガチじゃん……」
「お前なぁ……んぐっ」
不意打ちのキスで清夏に唇を塞がれた。
「もう、お喋りはいらなくない?」
「だな……」
「んふぅ……」
今度は俺から清香の唇を塞ぎ、柔らかな胸の感触を堪能させてもらった。
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