第8話 ゲスモブ、甘い生活に入る?

「ねぇ、なんか固いのが当たってるんだけど……」

「わ、わりぃ……朝の生理現象だ」


 目が覚めたら、白川を背中から抱える格好になっていた。


「抜いてあげよっか?」

「うっせぇよ、処女ビッチが……」

「なによ、黒井だってDTのくせに……」

「うっせ……そろそろ起きるぞ」

「てか、ちょっと広くなった?」

「ん? あぁ、そうだな……」


 昨晩眠りに就いた時は、マットに横たわると壁までの隙間が30センチぐらいしかなかったが、今は倍ぐらいに広がっている。


「へぇ、こうやってレベルアップしていくんだ」

「よく分からないけど、俺の場合はアイテムボックスを使いっぱなしの状態だから、レベルアップも早いのかもな」

「あたしも、もっと魔法を使わないと駄目だね。クリーン!」

「おぉ……って、もしかして、この中全体に掛けたのか?」

「そうそう、どうせなら思いっきり使った方が良いかと思って」

「なるほど、俺も使い方を考えるか」


 アイテムボックスから抜け出すようにして起き上がり、部屋のトイレに駆け込んだ。

 静まれ、静まれ俺の理性よ……。


 トイレから戻ると、白川が俺にクリーンを掛けた。

 てか、用を足しただけで、抜いた訳じゃないからな。


「このマット、どうするの?」

「いや、持って行くのは流石に邪魔だろう」

「ねぇ、アイテムボックスを分離とか出来ないの?」

「分離?」

「そう、アイテムボックスAと、アイテムボックスBみたいな感じ」

「おぅ、なるほど……やってみるか」


 昨日、アイテムボックスの中で、更にアイテムボックスを開くことにチャレンジしたが出来なかった。

 でも、分離なら出来そうな感じもする。


 マットを立てて納めるスペースを作り、その横に鞄や水の瓶、食料などを入れる棚を作った。


「よし、これを閉めて、こっちに別の……おぉ、出来たぜ。でも狭いか?」

「大丈夫大丈夫、こうすれば平気よ」

「ちょ、おまっ……」


 アイテムボックスの分割には成功したが、マットまで収納したので、こちらのスペースが大分狭くなっていた。

 二人で並んで歩くには、少々狭いかと思っていたら、白川が俺の左腕を抱え込んで身体を密着させてきた。


 発育良い胸の膨らみがギューっと押し当てられて、理性が飛びそうになる。

 せっかく、さっき鎮めてきたのに、また歩きづらくなるじゃねぇかよ。


「は、腹減ったから飯をパクりに行くぞ」

「なんなら、あたしを食べてもいいわよ」

「う、うっせぇよ、処女ビッチが」

「もう、イケずなDTだなぁ……」

「うぜぇ……」


 厨房で手に入れた朝飯を食い終えたら、衣装部屋を漁って白川の服を整える。

 揺れたり、ツンっと存在を主張したりして目のやり場に困るから、下着からガッチリ揃えさせる。


「ねぇ、どっちが似合うかなぁ」

「あのなぁ……遊びに来てる訳じゃねぇんだぞ」

「えぇぇ……どうせ日本に帰るまでには、まだ時間掛かるんでしょ? だったら楽しんだ方が良くない?」

「まぁ、それもそうだな……」


 確かに白川の言う通り、現状の俺らには日本に帰る術も、虐待されているクラスメイトを助ける術も無い。

 何か行動を起こすにしても、力を蓄えてからだ。


 だったら、それまでの時間を楽しく過ごした方が良いだろう。

 しかめっ面をして、アクセク努力するなんて性に合わない。


「んじゃ、左の青い方」

「へぇ、黒井はこういうのが好きなんだ」

「いや、ファッションとか分からねぇし、ただの勘だぞ」

「じゃあ、こっちとこっちは……?」


 白川が手にしているのは、ピンクの清楚なブラと真っ赤な際どい形のブラだ。

 詳しいことは分からないが、俺の目には日本の物に近い形をしているように見える。


「ピンク……」

「へぇ、赤のが好きかと思った。意外……」

「うっせ……てか、サイズ合うのかよ」

「んー……ちょっと合わせてみるよ」

「ちょ、おまっ……」


 白川は、俺がいるのにも関わらず、シャツを脱ぎ捨ててブラの試着を始めたので、慌てて背中を向けた。


「ふふん、見てもいいのに……」

「お前なぁ……よーし、それならジックリ見てやる」

「ウソウソ、待って、やっぱ無理。てか、本気で見るとかありえない」


 覚悟を決めて、穴が開くほど見つめてやろうかと思ったら、今度は見るな……清掃魔法に引かれて助け出したが失敗だったのか。

 この後も、下着を着け終えたからと、胸の谷間を強調しながら見せつけて来るから、近寄ってジックリ見ようとすると拒否。


 いったい何がしたいのか……揉んじまうぞ、処女ビッチめ!

 結局、貴族のお転婆娘みたいなスタイルに決まるまで、昼近くまで掛かった。


 昼飯をパクりに厨房に向かうと、なんだか調理している量が減っているように感じた。

 ちょいちょいとパクった料理で腹を満たしてから、食堂の様子を覗きに行くと、討伐組の姿も見当たらなかった。


「黒井、誰もいないよ……」

「どこかに移されたのか?」

「どうするの?」

「そもそも、どこに移されたのかも分からないし、あっちは二十人以上いるんだから何とかするだろう」

「日本に帰れるようになったら、助けに行く?」

「うーん……それは、その時になってみてだな」

「じゃあ、当分の間は二人っきりだね……」


 悪戯っぽい笑みを浮かべて、また白川が身体を密着させてくる。


「ちょ……お前なぁ……」

「なぁに? もしかして嫌なの?」

「べ、別に嫌って訳じゃねぇけど……」

「じゃあ、いいよね……」


 くっそ柔らかくて、なんか良い匂いがして、ドキドキが止まらないじゃねぇかよ。

 俺は、もっとクールにだなぁ……あぁ、無理。

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