第7話 ゲスモブ、ギャルと一夜を共にする
白川と城の厨房に潜り込んで、飲み水を確保した。
手ごろな大きさの
飲みやすいようにカップもパクって、瓶の蓋の上に置いておく。
ついでに、パンと果物、ドライフルーツとナッツなどもいただいた。
「てか、これどうやって持っていくのよ」
「これは、頭の上だな」
「はぁぁ?」
アイテムボックスの俺達が入る空間の上に棚を作り、そこに瓶などを乗せていく。
仕切りを作って、瓶の隣に鞄とかも乗せた。
「やべぇ、頭ぶつかりそうだ……」
「へぇ、意外と背が高いんだ」
「今は低い方が便利だが、じきに広くなるはずだ。これでも最初の倍ぐらいの容量に増えたんだぜ」
「えっ、そうなの? じゃあ、あたしもドンドン魔法を使った方がいいのかな?」
「たぶんな。俺の勝手なイメージだけど、白川の魔法がレベルアップすると毒とか呪いとかも浄化出来るようになるんじゃね?」
「マジで? よーし、クリーンしちゃうよ。てか、この中は綺麗なものばっかか……」
「心配すんな、この後、思いっきりクリーンしてもらうからさ」
白川と一緒に向かったのは、城にいくつもある物置なのだが、暗くて中が良く見えない。
アイテムボックスの中から外の様子は見られるが、明るさは外の環境に依存している。
つまり、外が真っ暗だとアイテムボックスの中も真っ暗なのだ。
「黒井、あの明かりパクろうよ」
人気の無い廊下の端に据え付けられている常夜灯を壁からもぎ取った。
「なんだこれ……魔道具なのか?」
「えっ、マジで? 見せて見せて」
もぎ取った明かりは、表札を縦にしたぐらいの大きさで、下に一辺が
5、6センチの四角いケースが付いている。
ケースを開けると、中には琥珀色の半透明な石が入っていた。
「あっ、消えた……」
「それが電池的なものなの?」
「あぁ、魔石じゃないかな」
ケースに石を戻すと、再び明かりが灯った。
「これで明かりは確保出来たけど……やっぱりアイテムボックスの中から外は照らせないのか」
アイテムボックスの中には、外からの光は入って来るが、内部の光は外へは洩れないので、暗い場所で明かりを灯すと壁が白く光って外の様子が良く見えなくなった。
「魔法は万能……って訳でもないみたいね」
「まぁ、そうだろうな。でも、工夫次第で対応できることもあるだろうし、レベルが上がれば制約を外せるかもしれない」
というか、そうでなければ日本に帰れなくなってしまう。
そんなことは考えたくもないし、いずれ俺は異世界と日本を往復して楽しめるようになるつもりだ。
「ねぇ、この後はどうすんの?」
「物置を物色して、布団を探そうかと思ってる」
「布団?」
「寝るのに必要だろう」
「てか、こんだけだだっ広い城なら、使ってない部屋とかあるんじゃない?」
「あると思うが、もし急に誰かが入って来て捕まったらゲームオーバーだぞ。言っておくが、俺はもう3人殺してるからな」
「そうか、じゃあ空き部屋のベッドからマットだけパクって来ようよ。この中、気温はこんな感じなんでしょ?」
「そうか、そうするか……」
白川の提案を採用して、使っていない部屋のベッドからマットをパクることにした。
「ヤバい、人がいる……って見えないのか」
「この中にいる限りな。外に出れば普通に見つかるから、気をつけろよ」
「てか、あたしは壁を開けられないから、黒井が開けてくれなきゃ出られないよ」
「そうだけど、外に出た後も、中にいるつもりで行動するとヤバいからな」
「あっそうか、クセで堂々と歩いてたらマズいわね」
アイテムボックスの中にいる状態ならば、こうしてベラベラ話をしながら見張りの前を通り抜けても全く問題ない。
それどころか、固く閉ざされた門でもドアでも自由に通り抜けられる。
「このドアを通り抜けるのは、まだ慣れないよ。ビクってなっちゃう」
「あれじゃね、幽霊とか、こんな感じなんじゃね?」
「あぁ、かもね」
白川と二人で緊張感も無く城の中を歩き回っていると、外が騒がしくなった。
窓に近付いてみると、どうやら兵士の宿舎の方向のようだ。
「死体が見つかったみたいだな」
「他の人達、大丈夫かな?」
「大丈夫じゃないだろう。でも、今の俺達じゃ助けられないぞ。それに、俺達が捕まったら、討伐組は気付いていないだろうし、助ける奴がいなくなるぞ」
「そうか……」
なんて言っておいたが、ぶっちゃけ自分の身が可愛い。
自分の安全が確保出来ている状態ならば、いくらでも手を貸すが、自分の命を危険に晒してまで助ける義理は無い。
白川の場合、清掃の魔法が必要だったこともあるが、感情的になってもいた。
もし、白川がアイテムボックスに入れなかったら、かなりヤバい状況になっていたはずだ。
「ねぇ、あたし達、これからどうなっちゃうんだろう?」
「決まってる。ここの連中にザマぁして、財宝をたんまりいただいて日本に帰るんだよ」
不安そうな上目使いで俺を見ていた白川の口許が、にんまりと弧を描く。
「だよね! あいつら絶対許さない。切り落としてやる!」
「うへぇ……おっかねぇ」
この後、空き部屋でマットレスを手に入れて、白川が清掃の魔法を掛けてから、横向きに作り替えたアイテムボックスに潜り込んで眠った。
スペースの関係で、白川と密着する状態で、とても眠るどころじゃないと思ったが、普段とは異なる状況の連続で疲れていたのだろう、あっさりと眠りに落ちた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます