週末論

尾巻屋

定食屋にて

 有名な天地創造とやらではある大それた存在がこの世界を僅か一週間で作ったらしい。

 中でも動物、とりわけヒトは週末の土曜日に加えられたそうな。それで日曜にはきちんと休みをとっているのだから抜け目がない。

 

 人混みの増える前の定食屋。少し離れた位置にある古ぼけたテレビからは、残暑が向こうひと月は続くことを予想していた。

 

 一ヶ月後。

 世界を四回創り直しても釣りが来る。

 ヒトはその期間で、何を成し遂げられるだろうか。

 先行き不透明がありふれたこの世界で、どれだけの人間が一ヶ月後の姿を想像できるだろうか。


 ただ確かなのは、少なくとも自分はその一握りにはいないことだ。

 将来やら目標やら飾ったことを言っているが実のところ一瞬、また一瞬と過ぎ去っていく有限の中で、千変万化を相手に受け身姿勢で歩き続けている。

 博打に勝てば予定通りと言い張り、負ければ準備不足と強がる。

 それを大人と形容した素敵な誰かさんはよっぽど参っていたと見える。

 神なんて大層なものに似せられているくせに、なんとも非力なものだ。


 焼けついた画面のテレビが今日のニュースを報じる頃、席を立つことにした。

 もし創造主なんて奴がいるのだとしたら、そいつはよっぽど悪趣味な奴なのだろう。創っておいてほったらかしなんてネグレクトにも程がある。

 それとも、この惨めな感情こそがかの存在の教育方針なのか。何にしたって変わり者には違いない。

 終末時計なんてご機嫌な冗談があるくらいだ。

 

 この世界だってどうせ戯れに違いない。

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週末論 尾巻屋 @ruthless_novel

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