シルバー・プシキャット、レーサー: 6

 もう、あんまり話すことはないかな。

 あのころ、世の中がどんどんキナクサくなって、おおっぴらなお祭り騒ぎは煙たがられたよね。不況のせいで閉鎖されるレース場も、撤退するチームも、目に見えて増えた。

 アタシたちは結構粘ったと思う。でもチームの若い子が伸びてきたから、アタシはお荷物になる前に引退を決めた。プシキャットなんてかわいい呼び名は、タイガーほど恐くないって意味だったのかも、なんて思いながら。

 エンゾーは残った。




 とりあえず食べなきゃと思って、運送会社に入ったよ。居住衛星ハビサットのあいだを飛び回ったんだ。

 ちんたら転がしてるやつも多かったけど、アタシは飛ばせるとこではブッ飛ばしてた。それでも、単位距離あたりの推進剤消費量は社内でいちばん少なかったね。

 あるとき、気の利いた誰かが軍のパイロット養成学校を勧めてくれた。給料がいいからって。

 調べたら、飛行距離を稼いだのが役に立って、試験がいくつか免除されることがわかった。半年勉強して、受けてみたら受かっちゃった。

 卒業するころかな、戦争が始まったのは。

 何度か出撃したころ、また別の誰かが気を利かせてくれて、アタシを新型機のテストパイロットに推薦した。

――――それで現在にいたる、ってわけ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る