シルバー・プシキャット、レーサー: 2

 ジェーイ!

 いきなりクソほどどーでもいーことだけど、アタシたちのことを「無重力圏人フリーフォーラー」って呼ぶの、おかしくない?だって、居住衛星ハビサットの内壁には1Gの人工重力がかかってるんだから。

 この話をしたらだいたいみんな、「で?」って返すけど。

 なんだかんだでアタシたちは「フリーフォーラー」って呼び名に誇り、とまではいわなくても、愛着を持ってる。

 そう思ってる、アタシはね。




 親の離婚をきっかけに、家を出たのが十五のとき。当時つきあってた男がレーサー志望で、そいつのアパートに転がり込んだってわけ。

 けど、こいつが口先ばっかりのクッソでさ。おまけにアタシは三股かけられてた。頭にきたから叩き出して、なぜか、浮気されてた子たちといっしょに暮らしたりしたよ。

 まあまあ楽しかったけど、結局そこも出ることになって、今度は新しい彼氏と住んだ。

 クラスは初心者ノーヴィスのたったいっこ上だったけど、その人は「志望」じゃない、ほんとのレーサーだった。それでアタシははじめてナマのレースを観て、エンゾーとも出会った。

 エンゾーは、彼の所属チームでエンジニアをやってたんだ。

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