道中2.体

 白い空、つまり吹雪。遠くにそびえる巨大な陽樹。この場所はどこからどう見ても異質だ。そして住民は獣の様な頭、手足、毛皮そして尻尾を持つ人間。太陽の英雄がいじくったのか、とても興味深い姿をしている。


「なあペニー。」


「どうしたのカイトくん」


「お前ってさ、人間と狐どっちに近いんだ?」


「いや、僕はニンゲンだけど。」


「あーそうじゃなくってな…どのぐらい俺達みたいな体に近いのかと思って。外の世界だとみんな俺達と同じ体の構造をとっているから。」


「えー、よくわからないなあ。」


「例えば手とか。指の数は5本で同じ。でも爪の形が違うし、肉球もついてる。」


カイトはしゃがみ、ペニーの足を見た。


「でも、足の指は4本。こういう細かい違いはあるけど、手足のつき方と首のつき方は完全に俺たちと同じ。」


「あんまりじろじろ見ないでよ。」


「なあ、馬族っているんだろ?そいつの手足はどうなってる?」


ペニーは自分の手を見ながら、馬族の見た目を思い出した。


「足は僕とは違って蹄があるけど、手はキミたちとほとんど変わらないかなあ。」


「あと、汗は全身から掻くのか?狼系は舌からしか汗を掻けないと聞いたが。」


「えー、汗?脇とか太ももとかからいっぱい出るね。」


「ねえカイト。さっきから何言ってんの?なんか気持ち悪いわよ。」


「お前は気にならないのか?獣人の体の構造。」


「別に。」


「僕はキミたちの体のこと気になってきたかも。」


今度はペニーがカイトの体を観察するように見る。


「…なんで頭だけに毛が生えてるの?」


「あー。それはな、一番大事な器官である脳を守るためだと言われてるな。人類が服を着るようになってから体を温めるための毛はほとんどなくなったらしいな。」


「ふーん。僕たちも服着てるけど、毛は無くなってないよ?」


「それはここが寒すぎるからじゃないか?それに、俺たちの毛がなくなるまでには何万年もかかったって話らしいし、お前たちは多分生まれてからそんなに時間が経ってないんじゃないか?」


「なるほど。カイトくんって物知りなんだね。」


「でも、本当にすごいわね。太陽の英雄っていうのは。多分ペニーちゃんたちの姿も彼がやったことなんでしょう?」


「そう。僕たちもこの世界も陽樹サマが作ってくれたものだね。」


ヨシノが珍しくカイトの会話に入っていった。


「まあ、獣の姿を取らせたのは謎だけどな。」


「ねえ、外の世界の人間って、僕たちみたいに色んな姿をしてないんでしょ?」


「ああ。肌の色が違うぐらいで、顔のつくりも、手足もそこまで変わりはないな。」


「じゃあさ、僕たちにいろいろな姿をしてるのって、そっちの方が楽しいからじゃない?」


「いや、もっと深い理由があるんじゃないかしら。」


カイトはペニーのあまりにも単純な答えとヨシノの冷静な返しに思わず笑ってしまった。


「ふっ、確かに面白いな。」

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