元悪役令嬢捜査官ロベリアと相棒リナリアの事件簿〜高慢令嬢から一転推理大好き捜査官になっていた悪役令嬢のロベリアの相棒に選ばれてしまった聖女でヒロインのリナリアはハーレムルートを捨てて難事件に挑む〜
CASE.42 何もできることなくて船長の威厳が無くなりつつあるんだけど、この絶体絶命の状況で船長室の椅子に踏ん反り返っていたらマジでお飾りの船長になっちまうじゃねぇか!? by.ティーチ
CASE.42 何もできることなくて船長の威厳が無くなりつつあるんだけど、この絶体絶命の状況で船長室の椅子に踏ん反り返っていたらマジでお飾りの船長になっちまうじゃねぇか!? by.ティーチ
「ジーベック号mark.Ⅱ」はアダマース王国の上空に突如出現した《
「ジーベック号mark.Ⅱ」に搭載された物理障壁と魔法障壁の二つにより、「ジーベック号mark.Ⅱ」は現在まで破損せずに済んでいる。
しかし、真っ赤に染まった
《
「赤い鮫と巨大鯨への
「……村木さん、この船の船長って俺だよな? なんで、コントロールパネルを村木さんが操作してんだ?」
「防御システムの方は海賊さん達にお任せした筈ですが?」
「……それが、船員の奴らに持っていかれて、俺の仕事がねぇんだよ! ってか、それ俺にも撃たせてくれよ! 浪漫しかねえじゃねぇか!」
「船長にはその立派な剣があるじゃないですか。その剣に火魔法纏わせて
「どう考えてもあの魔力でできた水に防がれるのがオチだろ! 俺、何もできること無いんだけど!? 船長の威厳が皆無じゃん」
「それなら、船長室の椅子に踏ん反り返っていれば良いんじゃないですか?」
「おいおい、それだと俺がまるでお飾りみたいじゃねぇか?」
「そうなんじゃないですかね?」
「否定してくれよ!?」
村木はティーチとの不毛なコントを続けながら、更にコントロールパネルを操作していく。
「宇宙エネルギーの捕獲並びにタキオン粒子への変換を確認。超重力場形成による船の固定及び、防御システム並びに反動消滅機能フル稼働。荷電粒子砲並びに太陽光収束レーザー発射準備完了」
「おい、なんか聞いたことがねぇ機能が増えてんじゃねぇか! 船長にも船員にも説明無しかよ!?」
「仲良くなったアンさんとメアリさんには説明しておきましたが、報告されませんでした?」
「聞いてねぇよ!? 船長に報告怠るってどういうことだよ!? ってか、二人とも下ろしちまったじゃねぇか!?」
「いや、楽しそうなことしとりますね」
ナチュラルに会話に入ってきた「
「アンさんとメアリさんから報告受けて手伝いに来ましてんけど、どうやら《
「ちょっと待ってください!? まさかコイツ《
「良かったですね、ティーチ船長。お仕事ですよ? このコントロールパネルの発射ボタンを押せば、先程準備した武装が発射されるので、私があの空に浮く水槽を壊したら遠慮なくぶっ放してください」
「やった、遂に船長らしい仕事だぜ!? って、あの水槽をぶっ飛ばすだと!? どうやって……」
「こうするんです」
村木は一丁の黒光した拳銃を取り出し、一方通行の障壁から手を出して水槽群の一角に向けて構えた。
「風の魔力の収束を確認。性質変化――震衝弾」
村木の拳銃から風の魔力の弾丸が放たれる。「なるほど、風の魔力を弾丸にして放つのか。それなら鉛玉は必要ないな」程度の感心しか抱いていなかったティーチは、弾丸を受けた大気にヒビが入った瞬間を目撃して目を疑った。
ヒビ割れと同時に水槽が一斉に弾け飛ぶ。押し寄せた衝撃波は
「風の魔力を収束すると性質が変化して衝撃をもたらすようです。実験して分かったことですが、今の一撃で大地に巨大な地割れを発生させ、余波で地震を引き起こすことが可能だと確認されております」
「あー、そういや少し前に大きな地震があったな……アダマース王国って地震がなかなか起こらない国なんだがと思っていたが、もしかして犯人お前?」
「さあ、存じ上げません」
「絶対そうだろ! 分かり切ったことをポーカーフェイスで否定するのやめろ!」
「そんなことより、水槽が無いうちにとっととあの《
「絶対にそんなことで片付けちゃいけねぇだろ!? 全武装発射!」
魔導収束連砲、荷電粒子砲、太陽光収束レーザー、波動砲が同時に命中し、危険を察知して三体に分身した《
◆◇◆◇◆
「さて、《
エーデンベルクの麓、ロベリアとの思い出のある山小屋にも危険が及ぶ可能性の高い地点に出現した漆黒に染まった
空中に蜘蛛の巣を張るように糸を張り巡らせてその上に立つユウリを見つけ、
「なかなかの力だね、七罪魔天。でも、そんな攻撃じゃ私は殺せないよ?」
ユウリが展開した無数の切断の概念そのものの糸が光条と嵐を切り刻み、一瞬にして四散させてしまう。
「魔力解放――闇系統環境変化魔法【夜】」
ユウリの魔力がアダマース王国側のエーデンベルク山付近の空に溶け込み、太陽を遮ることで局所的な極夜を発生させる。
闇属性魔法の
再び《
「さて……一気に仕留めさせてもらいますか。魔力解放――闇魔法性質変化魔法【極黒球】」
ユウリの手に小さな黒い球が生成される。この高密度のエネルギー体は闇の性質変化である重量操作に作られた擬似的なブラックホールである。
極小で周囲のものを強引に吸収するほどの力はないが光を寄せ付けないほどの圧倒的な吸引力を誇る。
そのマイクロブラックホールをユウリは自分の目の前に設置した。
「
そして、ユウリの手から大量の切断の糸が放たれ、《
小さなサイコロ状にまで切り刻まれた《
「魔力解放――闇魔法性質変化魔法【神羅天引】」
小さなサイコロ状になった二体の七罪魔天の身体が超強力な引力に引っ張られ、再生する間も無くマイクロブラックホールの方へと飛ばされていく。
その強大な力に抗えぬまま、二体の七罪魔天はマイクロブラックホールに吸い込まれ……その強大な重力に押し潰されてマイクロブラックホールの一部と化した。
そのマイクロブラックホールもユウリが魔法を解除すると同時に消滅し、《
「さて、月村さん達の様子を見に行こうかな? ……とその前に」
エーデンベルク付近に湧き出た全ての魔物を文字通り細切れにしたユウリは「神出鬼没で望む場所に好きな時に現れることができる」転生特典を発動してエーデンベルクから目的地に転移する。
ユウリの去ると同時にエーデンベルクの夜が明け、ロベリアとユウリの思い出の詰まった秘密の隠れ家を含む一帯に平穏な日常が戻った。
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