番外編・魔法を使いたがらない魔法使い
「あぁ、確かに少し似ているな――」
今日初めて正面からカナ様を見た私は、一人になって少し考えていた。
瞳の色が違うけれど困ったような、少し垂れた目。家族思いの優しさ。
姿形は違うけれど、纏う雰囲気というのだろうか。メリエル様の妹、マナエル様に似ている気がする。
カトル様が、鳥籠に閉じ込めたくなってしまうわけだ。
彼女がマナエル様の生まれ変わりならば、どれだけカトル様が救われるだろうか。
この世界からいなくなってしまった、カトル様の一番の想い人。
カトル様が失ってしまった、大切な半身。
メリエル様が、埋められなかった大きな大きな穴。
誰かが他の誰かの代わりになど、なれないのはわかってはいるけれど。
それに、…………カナ様は、向こうの世界に大切な人がいる。
私達の都合でこの世界に呼び出し、この世界に縛り付けようとしているのが、正しいことなのだろうか。
あんなにも、涙を流すほどなのに。
家族がバラバラになるのは、辛いことだ。そう、私達だって、たまたま不運が重なっただけで、ひびがどんどんひろがって、修復なんて出来ないくらい大きな溝になってしまったのだから。
幸せだった、父と母。だけど、私達が産まれたことで引き裂かれた二人。悪くないとわかっているけれど何かを恨まないと、自分を保てなかった父。
父の力になれなかった私――。
せめて、私の半身は絶望せずにいて欲しい。だから、魔法を極めようと頑張っている彼の前で私は魔法を使いたくないんだ。
「傲慢な、ただの自己満足だけど――」
ぽつりと呟いた後、私はカトル様に報告に向かった。
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