25話・追跡者
「あれが、リサさん」
「あぁ」
中庭に、白銀色の髪、猫耳がついた人と黒い髪の女の人がいた。
「ライト、リサさんは結界も出来るの?」
「そうだ、彼女の力はカナとは比べものにならないほどの強さだ。あれほどの力があれば、問題なく魔法は使える」
「そっか」
「それに聖女の契約は――」
ライトの声が止まった。どうやら、出発するみたい。
猫耳の人、おそらくアリストに彼女は抱えられて空へと飛んでいった。
リサさんは、彼と仲良しなんだね。きっと。
抱き抱えられても、全然嫌そうじゃなかったから。
「いいなぁ、私と違って、リサさんはこの世界で一人じゃないんだ……」
白銀の髪を風になびかせるアリスト。彼の後ろ姿を見るとホントにタツミが拾ってきた猫のアリスみたいな色だなぁって思った。
私は二人の後ろ姿が見えなくなるまでずっと空を眺めていた。
ーーー
昨日と同じ時間位に、また窓がコンコンとノックされる。
窓を開けると、帽子にマント、なんだかとても怪しげな人が空中に立っていた。
ルードみたいに風の魔法をつかっているのかな。
「それじゃあ、お願い」
そう言った声は、昨日の声だった。王子様だから、ばれたりしないように変装しているのかな?
「はい、わかりました。ライト!」
彼は結界で覆うと、すぐに飛んでいってしまった。
「少ししたらといてもらって大丈夫だから」
と言いながら。その肩に、小さな白いトカゲみたいなものをくっつけて。
ーーー
翌朝、早い時間にカトルがルードを連れて私の所にきた。
「もう一人の女性と、アリストが城から姿を消したそうだ。カナには何も影響はないかい?」
「はい、何も――」
「ということは、奪われたままか……。光の精霊に何か聞けないか?」
「あ……、少し待って下さい」
私は心の中でライトを呼んだ。精霊の声は私にしか聞こえないから、いくらでも誤魔化せる。
(ライト、私はどうすればいいかな?)
「二人はお前から奪った力で結界の外に出たと伝えればいい」
(でも、それじゃあリサさんは)
「大丈夫だろう」
本当に大丈夫なのかな?
「二人は私から奪った力で結界の外へと出たそうです」
ルードが何か言いたそうな顔をしていたが、口に出すことはなかった。
「そうか、……後を追わせよう」
カトルはそう言うと、少し考えるような仕草をしたあとルードの方を向いた。
「ルード、ラーファを使って連れ戻せ。出来るな?」
何か試すような言い方でカトルはルードに命令する。ルードは迷うことなくすぐに返事をした。
「はっ」
「カナ、結界の外に行く方法は他にあるのか?」
「聞いてみます」
私は答えがわかっているので、少しだけ間をおいてから答えた。
「私の力でも大丈夫みたいです」
「そうか、では頼む」
そして、すぐにルードは大きな鳥に乗り結界の外へと向かう準備を整えた。
先ほど言っていたラーファというのがこの大きな鳥のことみたい。
どうか、リサさん、見つからないで……と願いながら私は彼に結界をはって見送る。
「外にでるには、私の結界がいるの。ライト!」
「ありがとうございます、カナ様。行って参ります」
ルードがお辞儀をしたあと、大きな鳥は大空へと飛び立っていった。
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