24話・メリエルと猫耳

「そうですか、わかりましたわ。その方は私にとっても大事な方です。お任せくださいな」


 そう言って、メリエルは目を一度伏せてからこちらをしっかりと見た。


「お二人とも、よく似ていますわね……」


 キレイな顔で彼女はゆっくりと笑う。


「お互いに心配しあっているみたい。お話できてよかったですわ」


 二人? もしかして、とあるお方って。私はリサさんのことを思い浮かべる。

 コンコンと扉をノックする音がした。ルードだろうか?


「メリエル様」

「はい、カナ様、申し訳ございません。私はこれで失礼しますわ。またご一緒にお茶でもしましょう」


 急に他人行儀な言い方になった彼女を不思議に思いながら、扉に向かう彼女を私は見送る。

 扉が開くと、そこにはカトルが立っていた。

 彼女の横をすっと通り抜け、私の前にくるとまるで無事を確かめるように見られた。

 私に何もないことを確認したあと、カトルは彼女の控えている扉の向こうへと歩いていく。

 その表情に何か嫌な予感がして、私はカトルに声をかけた。


「メリエルさんは、私がお話をしたいと呼んだんです!」

「……そうか」


 彼は振り返ることなく向こうへと行き、扉をバタンと閉めた。


 ーーー


 静かだった。

 あの後、カトルは彼女達に何もしていないだろうか。心配で眠れない。


 コンコンコン


 窓の外から、誰かがノックしているような音がする。あれ、ここは何階だっけ……。


 ベッドから降りて窓に近付くと、カーテンの向こう側に人影が見えた。

 人影には、まるで猫耳カチューシャをつけているみたいな三角が頭についていた。


「誰……?」

「聖女、カナ。僕はこの国の第2王子アリスト」


 その名前を聞いて、思い出した。アリストは猫の耳と尻尾がついた人間、いや、獣人だとカトルが言っていたことを。


「明日、リサを外に出す。彼女は光の結界があるからカナの結界の外側にいけるけれど、僕は城の事を済ませたあとすぐ合流するつもりなんだ。君に手伝って欲しい。僕が外に行く時に、結界をお願いしたい」


 彼がメリエルにお願いした護衛なのかな? リサさんが結界をはれるなら一緒に行けばいいのに? ――でも、そうか。王子様だからきっと、カトルのように仕事がいっぱいあったり、リサさんのことを誤魔化したりしないとなのかな。


「わかりました。リサさんをお願いします」

「うん、じゃあ明日、お願いするね」


 そう言うとスッと、人影は消えた。


「結界の向こう側に行くには結界が必要かぁ……」


 私はベッドに戻って、朝がくるのを待った。明日にはもうリサさんはこの国からいなくなってしまう。

 私はまた、一人…………。

 リサさんは、いつ帰ってきてくれるのかな。

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